第2話
そういえば、サブタイトルのみ変更します!
もしも前のサブタイトルが良かったという方は申し訳ありません!
宮廷鍛冶師の幸せな日常 ~どうやら俺は宮廷一の鍛冶師だったようだ。俺を追放したブラックな職場は今さら困り果てているが、もう遅い。俺は隣国で公爵令嬢に溺愛されながらのんびり生きます~
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宮廷鍛冶師の幸せな日常 ~ブラックな職場を追放されたが、隣国で公爵令嬢に溺愛されながらホワイトな生活送ります~
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驚いたように声を上げた彼女に苦笑する。
「アリシアだって顔真っ赤じゃないか」
「ま、真っ赤じゃ……ない!」
「真っ赤だよ、真っ赤」
俺が指摘しながら頬をつつくと、アリシアは俺の言葉通りに真っ赤になっていく
それにしても、アリシアの頬は柔らかい。ふにふにとしていていつまでも触っていられそうだ。
一ヵ月くらい前は、まさかこんな生活が送れるようになるなんて思ってもいなかった。
アリシアと自分の今の関係に、思わず笑みがこぼれてしまいそうになるが、そんなだらしない表情を見せるわけにはいかない。
今はこの朝から一緒にいられるという時間を大切にしよう。
そのためにも……これ以上アリシアをからかっている時間はないよな。
この幸せな時間をもう少し楽しみたかったけど、そもそもアリシアがここにいる理由はゴーラル様に会うためだ。
「……アリシア。それじゃあ寝癖直すのお願いしてもいいか?」
俺は手をアリシアから放すと、彼女はこちらをじぃーっと見てきた。
「どの顔でそんなこと言うの?」といったアリシアの視線に、俺は苦笑するしかない。
「……別にいいけど。あとで、お返しするから」
鏡の中にいるアリシアは頬を膨らませたまま、こちらを見ていた。
お返し……。あとで何をされるのか、少し不安だった。
アリシアは桶に入ったお湯に片手を入れてから、俺の髪に触れていく。
そして、櫛で優しく髪を整え始めてくれた。
寝癖を直すように頭皮をマッサージするように触れてくるのが、少しくすぐったいけども心地良い。
このまま目を閉じれば、眠れてしまいそうだった。
人に髪を触れられたのはいつぶりだろうか? 宮廷で仕事をしてからは、忙しくて髪を切るにしても全部自分でこなしていた。
「大丈夫?」
「あ、ああ。でも、なんかちょっと慣れない感覚だな。誰かにこうやって寝癖直してもらったこととかないしさ」
「そうなんだ? 私はよく使用人にメイクとかしてもらってたからこういうのはもう慣れちゃった」
まあ、そうだよな。貴族の中には使用人に着替えなどをしてもらうと聞いたことがあるそうだし。
話ながらもアリシアは俺の寝癖を直していく。
もうほとんど普段と同じような髪型になったところで、アリシアは俺の髪を撫でてきた。
「フェイクの髪、柔らかくて触り心地いいかも」
「……そうか?」
他の人と自分の髪を比べたことがないのでその感覚が良いものなのかどうか分からない。
「うん。私は好き」
「……好き、か。それなら……良かった」
アリシアの「好き」という言葉にドキリとさせられる。
好き、と言われるのには慣れてきたと思ったけど、やはりまだ慣れていない部分もあった。
彼女の好きという言葉が俺に対してではなく、髪に対してだというのはわかっていたのだが。
羞恥による緊張で体がこわばったのを悟られないようにしていると、アリシアがひょこりと顔を覗き込んできた。
「あれ、フェイク……なんだかちょっと緊張してる?」
ばれてしまったようだ。
それも、そうか。直接触れているアリシアなら、先程俺がびくんと跳ねたのが分かっているだろう。
ドキリとしたことをバレないように、俺は笑顔で誤魔化した。
「そ、そうかな? あんまり髪をいじられるのが慣れていないっていうか……」
笑顔が引きつっているなぁ、というのは自分でも分かった。しかし、アリシアはこくこくと頷いてくれた。
「そうなんだ。ふふ」
納得……してくれたわけじゃないようだ。アリシアは意味ありげに微笑んでいる。
一体、何を企んでいるんだ? そう思ったときだった。
アリシアが耳元で囁いてきた。
「フェイク、好き。大好きだよ」
「……っ」
今度は。
さすがに我慢することはできなかった。
体の奥底から熱がこみ上げ、彼女の方を見る。
アリシアは、いたずらが成功した子どものような顔で笑って見せた。
「さっき、好きって言ったから緊張したのかと思っていたけど、間違ってなかった?」
「……まあ、な。いきなり言われるのは」
「ふふ、フェイク可愛い。耳まで真っ赤」
そういって、ツンツンとアリシアが耳に触れてきた。




