第44話
次の休日。
いつものように市へと来て、いつもと同じ場所に店を構える。
武器を並べていると、イヴァスとウェザーがこちらへとやってきた。
「お久しぶりです!」
「ああ、久しぶりだ。二人の剣作っておいたよ」
俺がそう言うと彼らは顔を見合わせて目を輝かせる。
アリシアにイヴァスの剣を持ってもらい、俺はウェザーの剣を持った。
それをそれぞれに手渡す。イヴァスは剣を鞘から抜いた。
「……この剣、とても軽いですね。……でも、なんだか凄い力が感じられます」
「イヴァスの戦い方。正面から受けるのにはあまり向かないが、ある程度の耐久性もつけたつもりだ。ただ、こっちのウェザーのような力のある相手には使うと負担がかかるから、そういう時は無理をしないようにな」
「……分かりました! 僕の理想とする戦い方をすれば、問題なさそうですね」
ああ、それでいい。とはいえ、まだ二人しかいないため多少は重量をあげ、耐久性も上げている。
やはりパーティーメンバーが少ないと無茶な戦い方をする必要も出てくるからな。
俺は次にウェザーの方を見た。彼も剣を鞘から抜いている。
……さすがだな。獣人としての力なんだろう。彼は軽々と片手で長剣を操っていた。
「次はウェザーの剣だな。どうだ、重量は?」
「……ああ。良い重量だ。このくらいなら、問題なく使えるな」
「そうか。良かった。長さも気になっていたんだが、どうだ? 問題はなさそうか?」
「……オレが驚くくらい、ぴったりだ。まさにオレが考えていた通りだ。ここまで手に馴染む剣は、初めてだ」
……ウェザーも喜んでくれているようだ。あまり表情が変わる子ではないが、雰囲気から伝わってくる。
「ウェザーは一撃を重視した剣にしてある。二人の戦いを見ていた結果、イヴァスが引き付けてウェザーが敵を仕留めるのが基本みたいだったからな」
「ああ、そうだな……この剣、大事にする」
ウェザーがすっと頭を下げてきた。
二人から料金を受け取る。合計十万ゴールドだ。それと引き換えに、彼らがこれまで使っていた剣を受け取った。
二人の剣の状態を確かめる。ほとんど問題ないな。魔力情報を修復すれば、すぐにまた使えそうだな。
「良かったです! これから、昇格試験を受ける予定だったんですよ」
「そうなのか? 一応、挑む前にきちんと使って慣れておくんだぞ?」
「はい。試験は午後からなので、午前で慣らしておきます。……でも、これならたぶん、問題なさそうなんですよね」
「……ああ、そうだな。まるで長年使っているかのように馴染む」
二人が嬉しそうな様子でそう言っていた。
「そうか。とにかくだ。油断しないでくれよ? 怪我をされたらこっちも困るからな」
俺の作った武器を使ったら試験に落ちた、なんていわれたら鍛冶師としての腕も問われてしまうからな。
「はい! ありがとうございます! この剣に恥じない剣士になりますね!」
「オレもだ。頑張る」
イヴァスとウェザーがそう言って、一礼とともに立ち去っていく。
二人の無邪気な後姿に、こちらも頬が緩んだ。
「二人とも喜んでた。良かったね」
「ああ。あとは二人の試験が無事に終わってくれればいいな」
「うん、でも、二人ならきっと大丈夫。それに、フェイクの武器もあるんだし」
「……そうだな」
アリシアの言葉に、俺は笑みを浮かべる。
イヴァスとウェザーの剣を風魔法で刃を研ぎなおし、どちらの剣もエンチャントを施した。
こちらも商品として並べ、俺たちの市が始まった。
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