第17話
「……できればもうちょっとオレへの援助をしてくれるととても喜ぶと、言っておいてくれ」
「無理のない範囲で、お伝えします」
「ああ、頼む」
リガードさんは苦笑を浮かべながら、満足げにうなずいた。
リガードさんの話は終わり、それからリガードさんはちらとオルレーラさんを見た。
「母さんは何かアリシアとフェイクに言う事はあるか?」
「うーん、だいたい二人が言ってくれたからね……。まず、アリシアちゃん」
「……なに、母さん?」
アリシアが小首を傾けると、オルレーラさんは笑顔を浮かべた。
「結婚式、楽しみにしているわ。最高に楽しんでね」
「……うん、分かってる」
アリシアは頬を緩めて、頷いた。
……結婚式を楽しむ、か。オルレーラさんらしい言葉だ。
オルレーラさんの視線がこちらを向く。
「フェイクちゃんも、立派な姿、楽しみにしているわね」
オルレーラさんはその言葉に様々な意味を込めてくれたと、思う。
俺が色々相談して情けない姿を見せてしまった。
だからこそ、オルレーラさんにもそんな姿を見せるわけにはいかない。
「はい。オルレーラさんも楽しみにしていてください」
俺の言葉に、オルレーラさんは笑顔を返してきた。
話に区切りがついたときだった。
馬車のほうから見計らったかのようにレフィがやってきた。
俺たちの前で一礼をしたあと、レフィが口を開いた。
「アリシア様、フェイク様。馬車の準備が整いましたので、出発のご準備が整いましたらお声がけください」
「そうか。アリシア、もういいか?」
「うん、私は大丈夫。フェイクも?」
「そうだな。それじゃあ、帰ろうか」
アリシアに頷いてから、リガードさんたちへと改めて体を向ける。
俺はすっと頭を下げる。
「それでは、リガードさん、シーフィさん、オルレーラさん。一度俺たちはバーナストの街へ戻ります」
「ああ、分かった。次に会うのは……たぶん結婚式の前の日くらいか。何かあれば、いつでもここに戻ってきていいからな。なんなら、行って帰ってきてもいいからな? いつでも、大歓迎だ!」
リガードさんの言葉に、頷く。
恐らく、俺が個人的な理由で戻ることはないとは思うが。
「アリシアも、もしフェイクに意地悪されたら相談しなさいよー」
「それは、たぶん大丈夫。それより、兄さんのことお願いね」
「ええ、こっちは心配しなくて大丈夫よ」
冗談めかした調子で笑って胸を張るシーフィさんに、リガードさんの頬がわずかにひくついたように見えたが、気にしないでおこう。
「それじゃあ、いってらっしゃいねー」
オルレーラさんが呑気な様子で手を振り、俺たちは頷いてからレフィとともに馬車へと向かう。
ぺこりと頭を下げてきたシーフィさんに苦笑を返した。
俺たちは馬車へと乗り込み、だんだんと小さくなっていく屋敷を眺めていた。
まだリガードさんたちはこちらを見送ってくれていて、それぞれがそれぞれらしい様子で手を振ってきている。
年齢が近いこともあり、気楽に接することができた皆と離れるのは僅かに寂しさはあったが……それは仕方ない。
今はやるべきことに集中しないとな。
「フェイク」
「どうしたんだ?」
名前を呼ばれ、そちらを見ると嬉しそうに微笑むアリシアがいた。
「また今度。遊びに来ようね」
「ああ、そうだな」
次は、俺とアリシアが結婚したあとになるはずだ。
アリシアと笑顔でリームナルに来るためにも、まずは結婚式を終えなければならないな。
俺は固めた決意を胸に抱きながら、視線を後ろから前へと向ける。ちょうど街の門を潜り抜け、大地を駆けていった。
バーナストの街へとついた俺たちは、それからすぐにゴーラル様の書斎へと向かった。
屋敷内を歩いていると、落ち着けるような気持ちがあふれていた。
自宅に帰ってきた、というような気分だ。これは、決して悪いことではないだろう。
久しぶりの屋敷ではあるが、一か月程で大きく変わっているということはない。
それを観察していると、ゴーラル様の書斎にたどりついた。
扉の前についたところで俺たちは足を止め、アリシアが扉をノックをする。
すぐにゴーラル様から入室の許可を表す声が返ってきて、俺たちは扉を開いた。
ゴーラル様は席についていて、手元の紙に目を通していた。扉の開閉に合わせ、ちらとこちらを見る。
久しぶりのゴーラル様だが……そのプレッシャーのある目つきは相変わらずだ。
ただ、目つきは鋭いが、こちらを非難するようなものではない。親しみのようなものも感じられるのは、俺の気のせいではないだろう。
じっとした視線がしばらく俺たちを射抜くと、ゴーラル様がゆっくりと口を開いた。
「久しぶりだ。フェイク、それにアリシア」
「お久しぶりです」
俺がすっと頭を下げた後、アリシアが口を開いた。




