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宮廷鍛冶師の幸せな日常 ~ブラックな職場を追放されたが、隣国で公爵令嬢に溺愛されながらホワイトな生活送ります~  作者: 木嶋隆太
第三章

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第36話


 不意打ち気味の一撃に、俺は顔を覆う。

 視線を向けると、アリシアが笑顔とともにこちらを向いていた。


「……やったな!」


 アリシアを追いかけながら、俺も同じように水をかけていく。

 お互いに水をかけあってから、アリシアがより深いほうへと向かい、泳ぎ始める。

 それに追いつくように俺も海へと向かった。

 久しぶりに泳ぎはしたが、体が覚えているようで特に問題はないな。

 アリシアの隣に並ぶように泳ぐと、アリシアが下を指さした。


「海の中、とても綺麗だよ」

「……確かに、そうだな。でも、確か海水って目に入ると痛いよな?」

「うん。だから、このゴーグルを使うといい」


 アリシアはそう言って、ゴーグルを取り出した。

 どこに隠し持っていたのだろうか。

 水を払うようにしてこちらへと渡してきてくれて、俺はありがたくそれを受け取った。


 それを顔に装着してから中へと潜ると、アリシアも同じように潜ってきた。

 ……もう一つ持っていたようで、彼女もゴーグルを装着している。

 二人で海中へと視線を向ける。


 まず、真っ先に思ったのはかなり深いところまで来ているということだった。

 すでに足がつくような場所ではない。もしも、足でもつってしまえば、その時点でおぼれてしまうだろう。


 かなり深いところには岩礁が見える。そこにはいくつも海草が生えていて、それを餌にしているのか魚が何匹か見えた。

 決して多くないのは人が泳ぐ場所だからだろう。

 まるでこちらに気づいたかのように、魚たちは逃げていく。


 海自体がとても綺麗なためか、海中の景色は思わず時間を忘れて見とれてしまうほどだった。

 しかし、俺たち人間には海中で呼吸をする能力はないため、途中で苦しくなって海上へと戻る。


「ぷはっ。凄い、綺麗なんだな海って」

「うん。特にここはゴミとか捨てないようにって気を遣ってるから」

「なるほどな。」

「そうだ、フェイク。あそこまでどっちが先に到着できるか勝負しない?」

「ああ、分かった」


 アリシアの挑戦を俺は受けて立った。




 それから夕方まで、俺たちは何もかもを忘れるように遊んでいった。

 さすがに、はしゃぎすぎてしまった俺たちは……


「体……重いかも……」


 アリシアが唸るように声を上げ、


「……俺もだ」


 似たように、低い声を返す。

 ……本当に体が重たく、ベッドがあれば横になりたいくらいだった。

 二人並んで屋敷を目指して歩いていると、アリシアがぽつりと呟く。


「でも、よかった。フェイクも楽しんでくれて」

「もちろんだ。また今度来たいくらいだ。明日にでも行くか?」

「それもいいけど……明日は街に服でも見に行かない?」

「服?」

「うん。たまにはフェイクの服も買ったほうがいいかなって思って。フェイクはいつも使用人たちに選んでもらってるものだから。たまにはフェイクも自分で選びたいかと思って」

「特に気にしたことないし、別にいいんだけどなぁ」

「……それなら、私が選ぶ」

「……アリシア?」

「だって、いつも使用人たちがフェイクの服を楽しそうに選んでるんだもん。……まるで、自分の彼氏の服を選ぶみたいに」


 むすーっとアリシアが頬を膨らませている。

 ……もしかしたら、嫉妬しているのかもしれない。

 ここで断ると、アリシアがさらに膨れてしまうかもしれないので、俺は頷いた。


「それなら、アリシアに選んでもらってもいいか?」

「うん、任せて。フェイクに似合う最高の服を選ぶ」


 ばしっとアリシアが胸を叩く。

 嬉しそうな彼女の顔に、俺もつられて微笑んだ。




 次の日。

 俺はアリシアとともに街へと来ていた。

 昨日話していた通り、俺の服を見るためだ。

 俺たちは並んで歩いていたのだが、アリシアはいつもよりも上機嫌のように見える。


 そんなに一緒に服を見に行きたかったのだろうか?

 俺はあまりおしゃれに興味がないので、正直服は社会的に問題ないものなら何でも良いという感覚ではあったが、アリシアの中ではきっと俺とは違った認識なんだろう。


 アリシアの足取りに迷いはなく、その調子でしばらく歩いていく。

 やがて、アリシアは一つの店の前で足を止める。


「このお店。いつも利用している場所なんだ」

「アリシアが使っている店か?」

「バーナスト家が、って感じかな。もちろん、男性物も取り扱ってるから安心して」


 言いながらアリシアは店内へと入っていき、俺もそのあとを

ついていく。

 大きな店内には、服が飾らされたスペースもあったが、どちらかといえば生地のほうが多い。

 オーダーメイドが主な店なのだろう。さすが貴族御用達という感じだ。

 アリシアが歩いていくと店員がこちらに気づいて近づいてくる。

 その表情には好奇の色をはらんでおり、探るようなどこかからかうような瞳とともに俺とアリシアを見比べている。


「あれ、アリシア様? と……そちらの人はもしかして婚約者様でしょうか?」


 良く利用するだけあって店員もこちらを知っているようだ。


「うん。今日はこちら――フェイクっていうんだけど、彼の服を探しに来たんだ」

 

 アリシアがそう言うと、店員は目をキラキラと輝かせる。

 

「結婚式に向けた衣装でしょうか!? 分かりました! 今すぐに作業に取り掛かりましょう!」

「ま、まだ違うよ……っ。今日は、フェイクの普段着を探しに来ただけだから。別にオーダーメイドってわけでもなくて、あるものから探そうと思ってたんだけど」


 ちらとアリシアは出来上がった服が並んでいるほうへと視線を向ける。

 店員は残念そうに肩をおろしてから、ちらと俺を見てきた。


「そうなんですか? では、ちょっと採寸させてもらってもいいですか? 目安になる服のほうへ案内しますから」

「……別にそこまでしなくても、実際に合わせてみるから大丈夫だよ?」

「いえいえ。わが家は代々バーナスト家のウエディング用のコートを作ってきたではありませんか! 今から何度も試作しなければ、アリシア様とフェイク様の晴れ舞台にふさわしいものが作れません!」

「だ、だから気が早いから…………ふぇ、フェイク測っておこっか」

「わ、分かった」


 アリシアにそう誘われてしまい、俺もまんざらでもない気持ちで採寸してもらうことにした。

 測り終えたところで、店員が満足そうに歩いていく。


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