第50話
俺の立場などを気にせず、アリシアとの仲を認めてくれた人だ。
俺に出来ることならば何でもしたいと、本気で思っていた。
そんな俺の願いが功をなしたのか、ゴーラル様は語りだした。
「実は、オレの息子のことで相談なんだがな。前にも少し話したが、息子にはオレが持つ領地の一画の管理を任せているんだ」
「そうなんですね」
「その近くで魔物が発生したらしくてな。ダンジョンも見つかっていて、今腕の良い鍛冶師を手配してほしいと言われていてな。出来れば数名の鍛冶師を援助してほしいという話があって、その一人としてフェイクをと思ってな」
魔物、という言葉にホーンドラゴン戦を思いだす。
出来る限り、被害が出ていないことを祈るばかりだった。
ゴーラル様の頼みだ。もちろんすぐにも行きたいが気がかりがある。
お店だ。
ベルティの件もあって依頼がたくさん来ていたところだ。
その依頼とは、オーダーメイドだ。Sランクの剣を作ったという実績のおかげか、開店当時以上に注目を集めていた。
まだ引き受けていなかったので良かったので、一時的にお断りの連絡をするのは簡単だ。
ただ、せっかく興味を持ってくれたお客様たちだ。
今後も末永くお客様でいてもらうためにも、断る理由についてきちんと説明しておきたかった。
「分かりました。ただ、今すぐにとなると店もあります。オーダーメイドの話も色々とあったので、お客さんにきちんと説明をして、断る時間をいただくことは可能ですか?」
そうでなければ、信用問題に関わり、結果的に店の評判にも関わってきてしまうだろう。
ゴーラル様の頼みを部分的に断る言い方であり、少し失礼かもしれない。
けれど、ゴーラル様は嫌な顔一つせず、頷いてくれた。
「分かっている。それら諸々含めて一週間ほどあれば大丈夫か?」
「はい。大丈夫です」
オーダーメイドに関して、最初に受けた何件かを達成し、まだ引き受けていないものを断り、断る理由を説明する。
レフィたちに手伝ってもらえば、一週間で十分だろう。
「それなら、来週出発するという事で連絡をしておく」
「分かりました」
「済まないな。オレの用事に付き合わせてしまって」
「そんなことありません。むしろ相談してくれて嬉しかったです」
ゴーラル様との距離が縮まった気もしたし。
それに、アリシアに婿入りするということは、俺だってこの家の関係者だ。
家の発展のために尽力することは当然だろう。
「すべて終わったら、しばらくゆっくりしてくるといい。そこは海も近くにあるし、海水浴でも楽しんでくるといいさ」
「海ですか」
「ああ。魚なども新鮮でな。アリシアも同行させる予定だし一緒に行くといい」
「アリシアもですか?」
予想していなかった名前に驚く。
鍛冶に関して言えば、アリシアは別にいなくても出来る。少しの間離れてしまうかもと寂しい気持ちになっていたが、そんな気持ちが少し晴れる。
「案内やその他諸々でな。一緒に行った方がいいだろうと思ってな。それに、お前と離れ離れにしたらアリシアに愚痴をこぼされるかもしれないしな」
ゴーラル様は僅かに冗談めかした口調でそう言ってから、席を立った。
「オレもこれから少し用事があって外に出る。話はこれで終わりだ。朝から呼びつけてすまなかったな」
「いえ、大丈夫です。それでは、失礼します」
俺は頭を下げてからゴーラル様の部屋を後にした。
俺はアリシアとともに店へと向かっていた。
「そういえば、アリシア。お義兄さんの領地で魔物が出たみたいだけど知っているか?」
「うん。フェイクと一緒に解決のために行ってこいってお父さんから」
「そうなんだな。悪いな、アリシアにも付き合ってもらっちゃって」
「そんなことない。それに、全部終わったら遊んできてもいいって言われてるし。楽しみだよ」
嬉しそうにアリシアが微笑んでいる。
魔物やダンジョンという名前を聞き、不安もあったけどアリシアの言葉にそれらは薄らいでいく。
そうなると、自然と気になってきたのはアリシアの兄についてだった。
「お義兄さんってどんな人なんだ?」
そう訊ねると、アリシアはむすっと頬を膨らませる。
「私を子ども扱いしてくる」
アリシアの言い方に、苦笑を返す。
嫌っている様子はなさそうだから、きっと悪い人ではないのだろうと思う。
ゴーラル様と似たような顔立ちなんだろうか? それともどちらかといえば爽やかなものなのだろうか?
そんなことを考えながら、俺は店へと向かった。




