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4 手袋と宿屋

窓から入る朝日の光に起こされ、ベッドの上で「んん~~ッ」と背伸びをした。


着替えを済ませて、窓から外を見ると良い天気で今日ものんびりとした日になりそう。


水色の空に白い雲、こんなにまったりでのんびりな日々は私にとって天国だった。


今までの事を思ったら天と地の差がありすぎて、逆に怖いかも。


怖いと思ってるのは、あの奴隷の様な毎日に戻ったらどうしようって事だと思う。


私は愛情が足りないのと、誰でも良いからずっと私の側にいて支えて欲しい。


ううん、お互いを支え合いながら、楽しく笑顔でいられる日々を過ごしたいのかもしれない。


断言は難しい、だって私にはこの10年間、愛情をくれた事も無ければ、優しい言葉さえ無かったのだから。


そろそろ一階に下りて顔を洗ってから、食堂へ行かないと。


一階では毎日賑やかで、自然と笑顔になる。


「おはよう」 サーシャに挨拶をされて、私も「おはよう」 と挨拶を返し、顔を洗ってから食堂へと戻った。



今日の朝ご飯も凄く美味しかった。


特にこのコーンのようなスープとナッツ? や果実入りのパンが絶品なの。


こんなに美味しい御飯が食べれるなら、一生ここに住みたい!


でも、これが現実ではなくて夢だったら?


そんな事を考えてたら泣きそうになる。


数日前までは死にたいって思ってたのにね。



私の左手と腕、普通なら気持ち悪いし、目立つよね?


サーシャに手袋を売ってるお店を教えてもらって、左手を隠した方が良い気がする。


何故かは分からないけど、なんていうか私の中の何かが、そう言ってるように聞こえるの。



今日は買い物に行きたいって思ってたけど、何だろう?


行かない方が良いって伝えられてるような気がする。


窓から外をボーーっと、眺めてるのも好きだな。


いろんな格好の人がいて見てるだけで楽しいよ。



あの人、お相撲さんのような大きな男性で、派手な服を着ている。


それに、いろんな女性をチラチラ見てる?


この世界でも変態? 変質者? 顔も言ったり考えたりしては駄目な事だけれど『イボガエル』みたいな顔なんです。


そのイボガエルさんが、さっきから女性ばかりを。


サーシャに伝えて、女性は気をつけて! って言わなきゃ!



私は一階の食堂に行き、サーシャと女性の方々にイボガエルさんのことを伝えた。


「ココネは絶対に外に出ちゃ駄目だよ!」


「うん、分かった。また部屋から様子を見てるね」


私は部屋へ戻って、イボガエルさんの観察をする事にした。


あっ、女性に声をかけてナンパしてるのかな?


どこの世界でもナンパってあるのね。



ここは平和だね。


私も一緒に天国へ行けてたら良かったのに。


お父さんとお母さんに会いたい。


もう枯れたと思ってたのに、涙ってまだ出るんだ。


視界がぼやけて涙が頬を伝って落ちた。



私はベッドに寝転んで、暇だし少し寝るくらい良いよね?


この10年間ずっと、虐げられて来たんだし家政婦やメイド以上に酷く、奴隷状態だったもの。


背中はタバコの傷とハンガーや布団叩き、ホウキでで殴られたり、蹴られたりの痣だらけ。


こんなの誰にも見せられないよ。


それに何故かは分からないが、この傷は魔法で治らなかった。


サーシャが昼食が出来たと呼びに来てくれたのだが、私はまた寝ていたみたい。



サーシャが桶にお湯とタオルを持って来てくれたんだけど、私は自分で出来るって言ったのにサーシャは頑固で、私の背中を見たサーシャは「酷い」と呟き、背中をソッと丁寧に拭いてくれた。


私の背中に服をかけながら、サーシャは泣いてくれている。


サーシャって本当に優しい女の子なの。


泣いてしまうって分かってたから、この痣と傷を見せたくなかった。


「サーシャ、私の為に泣いてくれてありがとう。

この傷は魔法で治せなかったんだ、嫌なもの見せてゴメンね」


サーシャは背後から抱きしめてくれた。


サーシャは夕食の準備をして来ると言って、食堂に戻った。


夕食の時間になったので食堂に行くと、サーシャの両親が背中の話を無理に聞いたと言って、私に謝って来た。


サーシャは食堂に戻ると元気がないし、時々泣いていたので、気になって聞いたらしいです。


「大丈夫です。逆に醜い物を見せてしまって申し訳ないです」


と言うと、おじさんもおばさんもサーシャと同じで泣いてくれた。



おじさんとおばさんに、手袋のことを伝えると。


「買って来てあげるよ。色の指定はあるかい?」


「目立たない色なら何でも良いです」


白が無難だな! と言って、おじさんが5枚も買って来てくれた。


白のシンプルな薄い手袋だけど、所々に目立たない花の模様があり、私のお気に入りになった。


「おじさん、ありがとう。こんな素敵な手袋は初めてだわ!

手触りも良いし何の違和感も無い手袋だわ!」


私は、おじさんに何度もお礼を言い金貨を1枚渡した。


「金貨は駄目だ、ココネには何度助けて貰ったか、本当なら俺達が逆に払うのが普通だ。

その手袋は御礼って事にしてくれないか?」


おじさんは安物で申し訳ない! って言うけど、私からしたら豪華なプレゼントだよ!


私は頷き。


「はい、何かを貰うのなんて10年間無かったから凄く嬉しいです」


私はプレゼントが嬉しくて涙をポロポロ流した。


泣いている私を見たサーシャは大きな声で叫んだ。


「ああーーっ!

お父さん、何でココネを泣かせてんのよ!」


その言葉に、おばさんまで乱入して来た。


「アンタ、私の命の恩人に何してんの?」


サーシャとおばさんに、おじさんからの贈り物が嬉しくて泣いただけ、だからおじさんを責めないでほしいと言ったんだけど……叔父さん、ごめんね。


逆に手袋の事、私達に言えば良かったのにと言われちゃった。


おばさんとサーシャも贈り物がしたいと言われたけど、いつもお世話になってるから、それだけで本当に嬉しいよ。


サーシャは私に「ココネは欲が無いよね」 普通の女性なら欲を丸出しにして買わせるのだとか。


この宿屋を拠点としてる冒険者さん達も欲が無くて、料理と酒あとは寝る所があれば良いって人達で、サーシャ家族も欲が無いので、銅貨1枚だって受け取ってくれない。


夕食を食べていると、言い争いが聞こえて来た。


「てめえ、俺の彼女に手を出したな! 聞いたんだからな!!」


1人の騎士は剣を抜き、相手に向かって構えた。


相手も剣を抜いた。


「お前の女から誘って来たんだからな!

お前との夜に不満があったんじゃねーのか?」


鼻をフンッ!


って鳴らすと、相手が先手なのか戦いの幕が上がった。


爆発音や金属同士がぶつかる音がしたと思った時だった。


えっ?


何々?


何が起こってるの?

「面白かった!」


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「早く読みたい!」


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