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3 治療魔法

叔父さんは親切に私の所まで来て優しい言葉をかけてくれた。


「何か食べたい物があったら、遠慮なく言ってくれ」


私はその優しい言葉に頷いた。


サーシャのお父さんは、私の左手を見て言った。


「淡いピンク色は珍しいな! 」


話に夢中になりすぎていたのか、叔父さんがナイフをまな板から落としてしまい、運悪く足に刺さってしまった。


「うっ!

いってぇーー!!」


足から血が!


私の左手が怪我をした足に触れた途端、淡いピンク色に光り、一瞬で傷が消え痛みもなくなっていた。


何が起こったの?


オロオロしていると、食堂の方から切羽詰まった様な声が聞こえて来た。


叔父さんと一緒に食堂を見に行くと!!


食堂内は血の匂いで充満していた。


流血!


双剣を所持していた男性は脇腹と右太ももからの出血が酷い。


大剣を机に立てかけてい大柄のお兄さんは左肩から出血、杖を持っていた魔女の女性は右腕が折れたのか皮膚から骨が出て出血している。


太刀?


長剣を持っている女性と初老の男性は切り傷はあるが軽傷だ。


大変、お医者さんは?


なぜみんな見てるだけなの?


処置は?


早くしないと出血多量で死んでしまうじゃないの!


「お医者さんは?

早く処置をしないと出血多量で死んでしまうわ!

なんで見てるだけなの?」


サーシャは泣きながら教えてくれた。


「救いたくても無理なのよ。

傷を治せる人なんてこの世界になんて……。

『フルーラン』には居ないのよ」


「えっ……いない?」


居ないってどういう事?


でもさっきキッチンでは……。


『この手』もしかしたら!


「そこ、退いて!

私が今からする事は他言無用って誓って!

ううん、誓いなさい!!」


みんな、私の剣幕に驚いていたが「誓うよ!」 一人一人誓ってくれたので、私の淡いピンク色の左手で脇腹と右太ももに触った途端、淡いピンク色に光り傷が消えていた。


それを見たみんなは、声を揃えて「おおーー!!」 と驚いている。


「あの、左肩に触れても良いですか?」


大柄な男性が頷き「頼む!」 と言ってくれたので、左肩に触れると淡いピンク色の光に包まれ「暖かい光なんだな、ありがとう」 傷も痛みも消えていた。


次に女性を見ると、頷いてくれたので右腕に触れると、淡いピンク色の光がキラキラと輝き「優しい暖かさなのね、ありがとう」 一瞬で傷も痛みも消えていた。


軽傷の女性と男性にも触れて治癒をし。


「可愛いお嬢さん、ありがとうございます」


「私だけでなく仲間を救っていただき、本当にありがとう!」


みんなからお礼を言ってもらった。


「ありがとう」の言葉を初めて言ってもらったのなんて10年ぶりだったのもあり。


凄く嬉しくて泣いてしまった。


「どうしたんだ?」


「 何処か痛いのか?」


みんなは私に優しく言ってくれた。


「大丈夫です」と一言返事をし、この力を秘密にしていようと思っていたら。


アイツにだけは絶対に知れないようにしないと、などの声が聞こえて来るんだけど、私は知らない世界にいてよく分からない。


「ココネは、この街が初めてらしいから『アイツ』とか分からないと思うよ」


サーシャがフォローしてくれた。


「サーシャ、ありがとう。

私ね、両親が10年前に亡くなって、今まで親類の家を転々としていたの。

でも、転々としていた親類の家ではいろんな虐待を受けて来て奴隷の様な扱いで『ありがとう』って感謝の言葉が凄く嬉しかったの」


涙はポロポロと頬を伝り、何度も床へと落ちていく。


魔法使いの女性が私を優しく抱いてくれ。


「貴女の心は綺麗ね。

 もう大丈夫よ」


私も抱き返して、涙が枯れるまで泣いた。


優しく抱きしめられたのは10年ぶりだった。


抱きしめられると暖かいって初めて感じた。


ううん、昔は知っていたけど虐待をされすぎて忘れたのね。


サーシャも抱きしめてくれていた。


「父を助けてくれて、ありがとう。

ドジな父でしょ?

母は今、病で伏せっているの」


みんなはもう長くないだろうって。


この手でもしかしたらサーシャのおかを救えるかも……。


「サーシャのお母さんの所に案内して!

お願い!!」


もし、この力が本物なら左手で触れるか治癒魔法すれば治るはず!


異世界の本では、傷は『ヒール』で病的なものが『キュア』だったはずよ!


コンコンコンッ!


「お母さん、入るね」


病人特有の臭いが酷い!


「サーシャ、空気の入れ替えしないと病気がもっと酷くなるわ!」


サーシャは、空気の入れ替えって何?


みたいな顔してるから、時間を決めて窓を開ける事を教えた。


サーシャは早速行動してくれた。


「少し失礼します」


私は左手を使わず、言葉で『キュア!』と 唱えると、サーシャの母親が淡いピンク色の光に包まれた。


「…………あらっ?

苦しさが無いわ。

まあ、サーシャ泣いてどうしたの?」


「……お母さん、もう苦しく無いの?

痛い所は?

ココネがね……助けてくれたんだよ。

うわぁぁぁん!!」


サーシャは、お母さんに抱きついて号泣していた。


その声に驚いて走って来たのは、サーシャのお父さんだ!


「どうした!

とうとう駄目だったのか?」


「あんた、今何を言おうとしたんだい?」


サーシャ、お母さんが元気になって良かったね。


私は、そっと部屋へ戻りベッドへ入ると、いつの間にか寝てしまっていた。


なかなか起きない私を心配したサーシャが、部屋へ来てくれたけど寝息をたてて寝ている私を見て、疲れてるんだなと気を使ってくれて、静かに部屋を出て行ったらしい。


「ココネ、ありがとう」


サーシャの声が聞こえた気がした、でも眠くてまぶたを開ける事が出来なかった。


私は3日間も寝ていたらしく、揺さぶっても起きなかったからみんなは心配したんだとか。


「サーシャ、ゴメンね。

私あんなに気持ちが良いベッドで寝た事が無かったから、寝すぎちゃったみたい」


私に何もなくて良かったと言ってもらえ。


サーシャと一緒に食堂へ行くと皆が振り向き、笑顔で挨拶してくれた。


「おはよう!」


こんなにいっぱいの人に挨拶されたのは10年ぶり、学校では友達と先生だけは挨拶してくれてた。


「お腹空いてるでしょ?」


優しく声をかけてくれた女性?


少しサーシャに似てる?


私は誰だろうって思ってたら。


「妻を助けてくれて、本当にありがとう!」


えっ!


って事は、サーシャのお母さん?


私の淡いピンク色の左手を優しく握ってくれて。


「ありがとうございます。

もしかするとココネさんはエルクレイ様の伴侶になれる、相応しいお方なのかもしれませんね」


エルクレイ様って……誰?


エルクレイ様?


って誰?

「面白かった!」


「続きが気になる!」


「早く読みたい!」


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