本当にあった怖い話
今回のテーマは、『本当にあった怖い話』です。あいにく私には霊感などというものはありません。怪談話などできませんので、小学生時代に遭遇した怖い話を披露させて頂きたいと思います。
あれは私が小学四年生くらいの頃。ある夏の夜に起こった出来事です……
今はもう取り壊されてしまいましたが、私の生家の裏手は軽い高台になっていて、鬱蒼とした雑木林が広がっていました。その影響もあってか、家の中はまるでジャングルのような有様。それこそ、毎日が川口探検隊の一員になった気分です。
ゴキブリなんて当たり前。屋根裏や押し入れにはネズミが潜み、夜中にガサゴソ動き出す。部屋の角には掌サイズの蜘蛛が張り付き、頭上からは極太サイズのムカデが降ってくる。それらに気を取られていると、親指サイズの蜂がベランダから突如として侵入。数え上げたらキリがありません。
そういえば、お勝手の引き戸を勝手に開けて、図々しく上がり込んでくる猫もいましたね。何度か魚を盗まれました。ヤツのせいで夕食の魚が足りなくなり、一尾を二等分する羽目になったんです。蛇のアオダイショウに侵入されたこともありましたね。飼っていたインコを一飲みにされました。
そんな危険極まりない家で育ちましたが、今思うと有り得ない設定ですね。親戚から月一万で借りていたそうですが、3〜4LDKに相当する間取り。そこに、父方の祖父母と父の弟がひとり。両親に兄と妹。合計八人で生活していました。待てよ。これが既に怖い話なんじゃないだろうか。
本題はここです。ある夏の夜、玄関に面した六畳ほどの畳間で、私は大きなガラス戸を全開にして何かをしていたんです。とその時、外から影が飛来してきたわけですよ。それが六つ。飛行機が編隊を組むように次々と着地しました。えぇ。その黒いものはアレです。ゴキでした。間違いなくゴキの編隊でした。
余りの恐怖で声にならない声を上げた途端、側にいた祖母がすっと立ち上がったんです。「なんだ、ゴキブリか」。いつもと変わらぬ様相で敵へ近付き、奴等を手掴みで捕えては外へ放る。放る。放る。その時私は、産まれて初めて英雄という存在を目にしたのです。
<恐怖>
失敗を恐れて動けない。
誰にでも
そんな経験があるだろう。
動かなければ始まらない。
頭ではわかっているんだ。
いっそ、かかとの後ろへ線を引き
これ以上は下がれないのだと
思い知らせて欲しい。
誰かに背中を押して欲しい。
やればできると、
あなたならできると、
その一言が欲しいんだ




