1、文章作法 【自由間接話法】その3
簡単に定義付けすれば、『三人称小説の地の文でありながら、作中人物の内面を描出した文章』、とでもなりましょうか。
「そんなことしていいの?」と思う方もいるかもしれませんが、三人称小説は神の視点(作者の視点も)も含まれる書き方ですので、キャラ心理に踏み込むことも可能です。
ただし、視点がおかしくなってしまう最大要因の為、あまり文章を書きなれていないのであればやめた方がいいでしょう、ということで三人称小説の講座項目ではあえて触れませんでした。
実際にどう書くのか。
わかりやすいように一人称小説、三人称小説、自由間接話法という順で、一筆ふるってみましょう。
【一人称】
暑い季節になった。
汗で張り付くシャツの感触が気持ち悪くて、俺はシャツを引っ張った。
【三人称】
暑い季節になった。
汗がじっとりとシャツを濡らしているのを感じたのか、一郎は張り付くシャツをうんざりとした表情で引っ張った。
【自由間接話法】
暑い季節になった。
汗で張り付くシャツを不快に思いながら、一郎はシャツをうんざりとした表情で引っ張った。
それぞれ書き分けてみました。
一人称では、「誰が」はありませんが主観によって心理描写が為されています。
三人称では、『シャツを濡らす汗』や『張り付くシャツを引っ張る仕草』や『うんざりした様子』から心理描写をしています。
そして、自由間接話法では、瞬間的に一郎の不快な思いを一人称的に地の文に描出した上で、一郎の表情、行動で三人称的に心理を描いています。
わずか2行の文章ですので、それぞれのメリットを描き出すことは出来ていませんが、意識した部分があります。
一人称では「気持ち悪い」という感覚を直接的に表現しています。
三人称では、客観的に見て気持ち悪そうな様子を捉える表現です。(その分、状況、態度、様子を多めに描き、心理を滲み出しています)
自由間接話法では、一郎の心理ではあるが「不快」という少し距離を置いた表現で描きました。
意識した部分は、『距離感』です。
一人称小説と三人称小説でやってはいけないこととした、視点のブレ。
それを防ぎながら、三人称小説の地の文に一人称を混ぜるのが自由間接話法であり、その為に意識しないといけないのが距離感です。
一人称小説は役者側の物語、と言い換えました。
主人公自身が自分にカメラを向けた状態です。
三人称小説の製作側の物語、と言い換えました。
視点人物(主に主人公)にカメラを向けた状態です。
そして、自由間接話法はというと、視点人物の内面にカメラをズームアップすることが出来る状態だと思ってください。
この距離感をしっかり意識出来るのであれば、視点がブレるようなことはありませんが、「理解出来たから書いてみる!」といって、すぐに書けるほど簡単な技法でもないので、小説をよく読み、真似ることから始めてみてください。
そして、一人称に寄りすぎてしまう、三人称に寄りすぎてしまう、というのであれば、自由間接話法など使わずにそれぞれの人称で書いた方がメリットを生かした書き方を出来るはずです。
まずは知識として、こんな書き方もあるのだという所から入るのが一番いいかと思います。




