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85/439

85.魔法で道路作り

 アメリアに化けた俺の幻影をこっそり送り出した。


 アナザーワールドの中から、幻影はテレポートで別の場所に飛んだ。

 その別の場所から、アイジーを徒歩で目指す事になる。


 一方で、残った俺はアリバイ作りのため、アナザーワールドから出て、街の中に降り立った。

 今回の件――水がブルーノの手に渡るまで、俺はここで、人前で目立つ行動をしなきゃいけない。


 何をしようか、と思いながら歩いた。


「りあむさま、りあむさま」

「いまひま? ひまならあそぼ?」


 そこに、みょんみょん飛び跳ねる、二体のスライムが現われた。

 スラルンと、スラポン。


 若干舌足らずな喋り方をする二体は、可愛らしい子犬のように俺の側にまとわりついてきた。


 それは、いいんだが。


「お前ら……からだが汚れてるな」

「からだが」

「よごれてる?」


 スラルンとスラポンは飛び跳ねるのをやめて、地面に降り立った状態で互いを見た。

 スライムのぷるんぷるんとした体が、泥で汚れていた。


「ほんとうだ、よごれてる」

「いまきれいにする」


 そう言った直後、スラルンとスラポンの体が「反転」した。


 体の内部が広がって、表面を飲み込んだ。

 まるでねんどの様に、表面についた泥を飲み込んで、体の中でその泥を溶かした。


 あっという間に、綺麗なスライムの体にもどる。


「りあむさま、りあむさま」

「きれいきれい?」

「ああ、綺麗になった」


 スラルンとスラポンを撫でてやると、二体は「ファミリア」で契約した後に出来た顔でものすごく嬉しそうな表情をしながら、体を文字通り「ぷるんぷるん」と震わせた。


 一方で、俺はまわりを見回した。

 ちょっと雨が降ったんだろうか、街中の道は至る所に水たまりが出来ていて、ぬかるんでいる。


 こんな状態で飛び跳ねていたら、そりゃ泥だらけにもなるな。


「……」

「りあむさま、りあむさま」

「かんがえごと?」

「うん? ああ……道がこのままぬかるんでいたら良くないなと思ってな」


 今はそうじゃないが、容易に想像がつく。


 ぬかるんだ地面で、馬車とかだと、車輪がぬかるみにはまってやっかいな事になるのが、容易に想像がついた。


『道でも舗装するか?』

「道の舗装ってどうやってするんだ?」

『簡単なのは敷石舗装だな』


 ラードーンは俺の質問に答えた。


「敷石舗装」

『大雑把に言って、道を溝状に掘って、そこに砕いた石を敷き詰めて、ならしていったものだ』

「なるほど」

『ちなみに、舗装は厚ければ厚いほどいい』

「他には?」

『ふむ。レンガを敷き詰めたり』

「レンガか」

『特殊な土を熱して溶かしたのを、流し込んで固めるとかかな』

「特殊な土?」

『人間どもは「燃える土」と呼んでいたな』

「へえ……」


 ラードーンから色々聞いて、俺は頭の中で、道路の作り方をまとめ上げていく。


     ☆


 俺の命令を受けたギガース達が、一人また一人と、岩を運んできた。


 どれもこれも、2メートルくらいの大男よりも更に一回りでっかい岩だ。


 俺が行けば簡単に調達できるんだけど、今回はいなくなるのは出来ないから、テレポートは使えない。

 だから代わりに、ギガース達に集めてきてもらった。


 ギガース達は岩を担いだまま、ガイが俺に聞いてきた。


「これでよいでござるか主殿」

「ああ、バッチリだ。それをみんなで砕いて一カ所にまとめておいてくれ、大きさはその辺の砂利くらいだ」

「心得たでござる。よしみんな、もう一働きでござる」


 ガイの号令で、ギガースは一斉に岩を砕き始めた。


 一方で、俺は道路を掘るために、ノームを複数体召喚した。


 そのノームに命令して、あらかじめ通行禁止にしておいた道路を掘らせる。


 土の精霊ノームにとって、土の地面を綺麗に掘り起こすなんてお手の物だ。


 あっという間に、道路にする予定のそこに、道路の幅で、一メートルくらい深い溝が掘り出された。


「よし」

『ふふ……』

「ん? どうした」

『こう掘ったと言うことは、一メートルの厚さで舗装すると言うことだな』

「ああ、そうだけど?」


 それがどうしたんだろう。


『一メートル級の厚さなど、ジャミールの都の凱旋通りくらいのものだろう』

「凱旋通り?」

『文字通り、戦争に勝った軍が凱旋し、王都で王宮まで行進するための大通りだ』

「ああ……ああいう……」


 実際の凱旋通りはしらないが、軍が勝ってパレードをする大通りは知ってる。

 うん、ああいうのは、かなりちゃんと舗装されてる道だ。


『それをさらりと作ろうとする事が面白かったのだ。見ろ、お前を監視してる役人の顔を』


 ラードーンに言われて、彼女の「意識」が示した方角を見た。


 そこに俺を監視するために来ていたジャミールの役人の姿があった。

 役人は驚き、「まさか」って顔をしている。


「主殿、これでよいでござるか」


 ガイが俺を呼んだ。

 ギガース達が砕いて、積み上げた砂利の山を見た。


「うん、良い感じだ。これを俺が掘ったそこに詰めてくれ。ちょっと盛り上がるくらい、多めにな」

「分かったでござる」


 ギガース達は命令通り、溝に砂利を敷き詰めていく。

 力自慢のギガース達によって、あっという間に砂利が敷き詰められている。


 こんもり、盛り上がった砂利。


「サラマンダー」


 俺は火の精霊を呼び出した。

 ギガース達が敷き詰めた砂利を、火の精霊で溶かしていく。


 こんもり盛り上がった砂利は、溶かされて溶岩になり――隙間を埋めて平らになった。


 溶かされた溶岩がやがて冷えて――そこに石の道ができあがった。


「「「おおおおお!!」」」


 ギガース達は感嘆の声を上げた。


『なるほど、こう来たか』


 ラードーンも称賛のニュアンスを含んだ声色でいった。


 砂利舗装と、「燃える土」。

 ラードーンから聞いた二つを組み合わせた、オリジナルの舗装は――上手く行きそうだ。


 振り向けば、役人はぽかーんと、あごが外れそうなくらい驚いていた。

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2025年1月6日アニメ放送開始しました!

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― 新着の感想 ―
[一言] リアムの発想の柔らかさ いつも読んでいてほっこりします! 続きも楽しみにしておりますね(*´꒳`*)
[良い点] おもしろい! [気になる点] 続き! [一言] 毎秒投稿しろ!!!!!!! ・・・失礼しました。 面白くてもっと読みたい衝動がつい溢れてしまいました。 ということで、お体に差しさわりがない…
[一言] その道、水はけが悪そうな印象!
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