表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

44/439

44.超速マスター

 一回目(、、、)のテレポートで屋敷の林に飛んで戻ってきた。


 まわりをみる。

 間違いなく、いつも籠っているあの林だ。


 三日かかる道のりを一瞬で戻ってこれる、テレポート。

 上級魔法のすごさを改めて思い知った。


 残った十五回(、、、、、、)のテレポートも次々と発動させた。

 やっぱり行ったことの無い場所はいけないから、意味もなく、林の中のいくつかの場所を次々と瞬間移動した。


 詠唱込みでの最大数、ラードーンジュニアの三回を引いた十五回を使いきった後、改めてテレポートを使う。

 まだマスターしていないから、右手のドラゴンの紋章経由で使う。


「……おお」


 思わず、感動の声が洩れた。

 最近は魔力の流れがより分かるようになった。

 一回でも使ったことのある魔法なら、使おうとした瞬間どれくらい時間が掛かるのか、魔力の流れで分かる。


 テレポートは、一日まで縮まっていた。



 魔法の練習での、マスターに届く条件。

 それは厳密には日数ではなく、発動させた回数であると俺は気づいた。


 普通の、同時発動が出来ない魔法使いはほぼ日数と比例する。

 なぜなら同時に一つしか発動――練習出来ないからだ。


 だが、俺には師匠から教わった魔法の同時発動がある。


 いまや詠唱込みで、素数の第八段階の十九まで同時発動数が伸びている。


 それで十五回まとめてテレポートを三日間かけて発動し、一斉に使った。


 本当なら四十五日――ざっと一ヶ月半分の経験値を、三日に圧縮した。

 そして今ならさらに十五回を一日で発動出来る。


 四日で、本来の三ヶ月分の経験値が得られる。


 このペースで行けば、一ヶ月――いや、更に加速するだろうから、一週間もあればテレポートを完全にマスター出来る。


 いや、今の十五回をまず魔力アップに回して、もう一段階上の二十三発同時にしたほうが結局早いのか?

 急がばまわれって言うし……むむむ。

 難しいところだな。


『ふふふ』


 ふと、頭の中にラードーンの笑い声がこだましてきた。

 楽しそうな雰囲気だが、何があったんだろうか。


「どうしたんだ?」

『面白い人間だ。と、とおもったのだ』

「面白い?」

『力をもった人間が、それを得意げに振るうのは山ほどいる。だが力を更なる力を得るために使う人間は珍しい』

「はあ……」

『面白い人間だ』


 同じ言葉を繰り返すラードーン。

 褒められてる……のか。


 よく分からないまま、俺はとりあえず、詠唱して、十五回のテレポートを仕込んでおくことにした。


     ☆


 急がば回れ。


 その言葉を思い出した俺は、まずテレポートの完全マスターを目指した。


 すぐに問題にぶち当たった。


 上級神聖魔法、テレポート。

 上級魔法だけあって、かなりの魔力を消耗する。


 今のままだと、次の十五回分が最後まで発動出来ない。


 十五回分発動したら、次は更に発動時間が短くなるのは確実だ。

 そうなるとすぐにまた次の十五回を仕込みたくなる。


 魔力の自然回復の待ち時間がもったいなかった。


 だから俺は、更に「急がば回れ」をした。


 十五回のテレポートを全部キャンセルした。

 そのかわり、ノームとサラマンダーを大量に召喚した。


 林の中からレククロ草を集めて、ノームとサラマンダーでそれをレククロの結晶に加工した。


 レククロの結晶。

 それは使うと、消費した魔力を瞬時に回復するもの。


 回復の量は加工にかかった魔力の量よりも多い。

 だから、まずはそれを大量に作った。


 テレポート百回分はまかなえるであろうレククロの結晶が出来た後、それをつかって魔力を回復して、改めてテレポートを十五回仕込んだ。


 そのまま待つ。


 丸一日待って、朝日がのぼってきた辺りで、テレポートを発動させた。


 朝日の中、林の中で十五回、意味なく飛び回った。


 そして、確認。

 魔力の流れで、テレポートの発動に必要な時間を大雑把に計る。


「おお」


 思わず感嘆の声が洩れるほど、それは縮まっていた。

 一日必要だったのが、十五回の発動で一気に二時間まで縮まっていた。


 作ったレククロの結晶で魔力を回復して、更に十五回仕込む。


 そして二時間待つ。


 さっきとまったく同じように、意味なくテレポートして林の中を飛び回った。


 そして、確認。


 二時間かかったのが、十五分まで縮まっていた。


 十五分かけてのテレポート。


 大分縮まったが、まだまだ足りない。


 移動するためだけに使うのならこれでも十分だが、例えば戦闘中に、とっさに逃げたいとか、誰かを逃がしたいとか。

 そういう時に十五分は長すぎる。

 致命的とすら言える。


 またまたレククロの結晶で魔力を回復して、さらに十五回仕込む。


 十五分待った。

 十五分待って、十五回林の中を飛び回る。


 そして、更にチェック。


 一分まで縮んでいた!


 一分なら、戦闘中でもギリギリ使える。

 だが、一分では――


「食い止めてる間に早く!」


 というような、やはりピンチの場面が生まれてしまう。


 だから俺は、レククロの結晶で回復して、おそらくは「最後の」十五回を仕込んだ。


 一分はあっという間にすぎた。

 林の中を十五回飛んだ。


「……よし!」


 ここで、テレポートを完全にマスターした。


 十五回仕込むまでもなく、使った瞬間に飛べる状態になっていた。


 急がば回れで、二回分遠回りしたのに。


 普通なら半年は確実にかかるであろうテレポートを。

 わずか、一日でマスターしたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2025年1月6日アニメ放送開始しました!

3ws9j9191gydcg9j2wjy2kopa181_np9_jb_rg_81p7.jpg
― 新着の感想 ―
[気になる点] エルフたちの元に食料を置いてきた描写が省略されてたので、放置感というか違和感が少しありました。
[気になる点] >林の中からレククロ草を集めて、ノームとサラマンダーでそれをレククロの結晶に加工した。 草を集めてとありますが、必要なのは草ではなくその草周辺の変質した土だったはずですが? >普通…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ