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38.全ての中級精霊

 目の前の闇の中級精霊は、形が大きくなっていた。


 さっきまで蛍の光程度の大きさだったのが、両手でギリギリ抱きかかえるほどの大きさになった。


 「闇色」のボールみたいなボディに、はっきりとした目が一対ついている。

 その目は知性と理性を併せ持った、落ち着いた光の目だった。

 ものすごい変化。

 まさに「進化」だ。


「アスナ達みたいに『変わる』って予想していたけど、中級精霊に進化するなんて予想外だった」

『これも主のおかげでございます。ご恩に報いるべく誠心誠意働きますので、いつでも呼び出して下さい』

「あー……」


 精霊の言葉は真摯なものだった。

 が……呼び出す、か。


「それは、お前を呼び出すって事だよな。中級精霊であるお前を」

『その通りでございます』

「そっか……それは……うん」


 俺は眉をひそめて、苦笑いをしてしまう。

 それを見たアスナが不思議そうな顔で聞いてきた。


「どうしたのリアム、難しい顔をして。なんかまずいことでもあるの?」

「まずいというか……俺は中級精霊の召喚魔法を覚えてないんだ」

「えっ、そうなの? どうして?」

「魔導書が手に入らなくてね」

「リアムんち貴族じゃん? それでも魔導書手に入らなかったの?」

「ああ」

「中級精霊の召喚ともなると、その魔導書は貴族の家宝クラスで貴重なものだもの」


 しかたないわ、って言い方をするジョディ。

 やっぱり、かなり貴重なものだったんだな、中級精霊の召喚魔法の魔導書は。

 そりゃ……手に入らないわけだ。


 というか……中級精霊で貴族の家宝なら。

 上級精霊なんて、下手すると国宝クラスとかになっちゃわないか?


 いずれは上級精霊も呼べるようになりたいと思っているから、そんなに貴重なものだと……ちょっと、いや大分困るな。


 そんな風に俺が困っていると、精霊が落ち着いた口調のまま尋ねてきた。


『失礼ですが……主がつけていらっしゃるその指輪は、古代の記憶(、、、、、)だとお見受けしますが』


 精霊に聞かれた俺は、自分の目の前に持ち上げて、それを見た。

 何の気なしにつけたままにしている、師匠からもらった指輪。


 マジックペディアだ。


「古代の記憶? これはそういう名前の物じゃないぞ」

『物体の名称ではありません。古代の記憶とは、ハイ・ミスリル銀を媒体に、複数の魔法の知識を貯蔵する古の秘法でございます』

「ああ、技術のことか。うん、確かに複数の魔法が入ってる」


 師匠からもらったマジックペディアという指輪。

 どうやら「古代の記憶」という技術が使われているみたいだ。


「100はある。けどこれがどうしたんだ?」

『古代の記憶が用いられている物体であれば、そこに中級精霊の召喚魔法を宿すことができます』

「そんな事ができるのか?」

『宿す事自体造作もないこと』


 精霊はきっぱりと言い切った。


『ただ、魔法の知識を宿すだけで。主には一からの鍛錬が必要となりますが……』

「それは当たり前の話だな」


 師匠からもらったマジックペディアも、ラードーンが宿っているこの紋章も。

 全てが魔導書と同じように一から鍛錬する必要があったもの。


 中級精霊もそうだったからと言って、失望するような話じゃない。


「やってくれ」

『承知いたしました』


 応じた直後に、精霊の体が光を帯びた。

 魔法陣が広がり、見た事もないような光る文字がまるで帯になって精霊のまわりをぐるぐる回ってから、俺がつけているマジックペディアに吸い込まれていった。


「あっ……」

「どうしたのリアム」

「今、この指輪の中に闇の中級精霊召喚魔法がはいった。魔導書と同じになった」

「すっごーい。ジョディさん確か、貴族の家宝くらい貴重なものって言ったよね」

「ええ。それがこんな簡単に……」


 大喜びするアスナ、驚愕するジョディ。

 二人はめいめいの反応を見せてくれた。


 一方で、俺はマジックペディアをじっと見つめたあと――


「……ファミリア」


 明かりをともすために呼び出して、そのままにしていたサラマンダーに向かって、ファミリアを唱えた。


 契約の光に包まれたサラマンダーも、今までの者達同様、姿を変化させていく。


 しばらくすると、そこに炎のマッチョマンが現われた。

 上半身はものすごく筋肉ムキムキなのだが、下半身はなくて、上半身だけで宙に浮いている。


 顔もあるので、精霊は口を開いて人間のように喋った。


『おう! 進化させてくれてありがとうな!』


 炎のマッチョマンは、荒々しいながらも、親しみのこもった口調で話しかけてきた。


「ってことは、お前も中級精霊になったのか」

『その通り! イフリートと呼んでくれい!』

「ならイフリート、今のみてただろ? さっきのと同じようにこの指輪に中級精霊の召喚魔法を詰めてくれ」

『お安いご用さ!』


 見た目通りの豪快な口調ながら、闇の精霊と同じことをしたイフリート。

 魔法陣を広げて、見た事の無い文字をぐるぐるさせてから、指輪に吸い込ませる。


「……うん」

「イフリート、っていうのも覚えた?」

「指輪にはいった」


 覚えてはない、これから時間をかけて鍛錬していかなきゃいけない。

 それでも、マジックペディアに入ったのは大きかった。


 俺は間髪入れずに、水、土、風、光と、今呼べる全ての下級精霊を呼び出した。

 そして片っ端からファミリアで契約して進化させて、中級精霊の召喚魔法をマジックペディアに入れてもらった。


 炎、水、土、風、光、闇。


 俺は一気に、全ての中級精霊の召喚魔法、その魔導書を手に入れたのだった。

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2025年1月6日アニメ放送開始しました!

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― 新着の感想 ―
中級精霊マスターしたらそれにファミリアかけて上級精霊にしてさらに指環に記憶させるとか出来そう
[気になる点] 氷の精霊もいましたよね
[気になる点] 召喚魔法はその辺の精霊を召喚するから毎回違う精霊が出てくるのではありませんでした? 使い魔なのに召喚魔法が必要なわけと、召喚魔法で特定の精霊を呼び出せるロジックの説明がほしいです。
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