第84話『甘いチーズ蒸しパン』①
お待たせ致しましたー
「蒸しパン〜、蒸しパン〜!!」
今日の営業で、いちごの蒸しパンは特に女性客に大人気だったため。
新たな、僕も大好きな『チーズの蒸しパン』を作ろうと思うのです!!
「ケン兄さん、チーズの蒸しパンって塩っぱいでやんすか?」
蒸しパン作りの途中までの工程に、カウルのドウコンは必要ないので……一緒に作ることにしている。もちろん、ラティストも一緒だ。
「うーん。普通のチーズじゃないから、ちょっとだけかな?」
「「普通じゃない?」」
「今回のはね?」
もちろん、削ったチーズとかで出来るチーズの蒸しパンもあるけど。
エリーちゃんにも食べてもらいたいから、基本的には甘いのにしたい。エリーちゃんが甘いパンを食べてくれる時の表情、すっごく可愛いから。
「……となれば。サンド系に使ってるアレか?」
「そうそう、あれあれ」
あれとはもちろん。
この世界には需要がほとんどなかった……『クリームチーズ』!
味付け次第で、甘くも塩っぱくも出来る万能食材なんだよね!! 作り方も、ヨーグルトがあるから水切りするだけの方法にしてるけど……これがすごく美味しいんだ。
「あのチーズでやんすか! ハチミツだけかけても美味いでやんすしねぇ!!」
スライムだけど、日夜たくさんのポーションパンを食べるようになったカウルは……人間に負けないくらい、舌が肥えちゃったんだよね?
見た目は全然普通のスライムだから、太ったとかはないけど。それ以上に大喰らいのラティストも太ることはないし。
僕も転生した身体は普通のまま。
ありがとう、イケメン神様!!
糖質と脂質気にしないで生活出来るだなんて、なんてチート特典なんだ!!
「あのチーズを使ってね? 粉も『米粉』使って、しっとりふんわりした蒸しパンを作ろうと思うんだー」
「……わざわざ米の粉を?」
「色々食感が違ってくるんだ」
「是非作ろう!」
ラティストにやる気が出たことで。
この蒸しパンにはひとつだけ、お菓子のような工程があるんだ。卵を使うのはもちろんだけど……メレンゲを作ること!
これがあるないで全然違うんだよね?
専門学校で、ちょっと自由研究ぽい課題をクラスメイトと協力して作った時に調べまくったんだー!!
試作だから、ミキサーじゃなくてラティストが普通の泡立て器で混ぜてくれる。重労働だけど、やる気に満ち溢れているから集中させるのにちょうどいい。
カウルは僕と一緒に他の材料をボウルで混ぜ混ぜ。
全部混ざって、蒸し器じゃなくて湯煎焼きにするから……最後にカウルに電気オーブンになってもらい。
焼き上がるのはすぐだから、いつもの『チーン』がオープンキッチン内に響き渡る。
すぐに取り出そうとしたら、ラティストが窓の外を睨んでいた。
「……なんだ、あれは」
僕もそっちを見てみると……紫の髪が見えた。
下を見ていけば……多分、普段はかっこいいだろうけど、締まりのない表情をしているひとりの男性が窓に張り付いていたのでした。
次回はまた明日〜




