第83話 王も認めた
お待たせ致しましたー
「……ほぅ。これが、例の」
「はい、陛下」
とある日。
俺は、伯爵のひとり……ディルックが持ってきた『ポーションパン』の並びを見て、感嘆の息を漏らした。
噂では聞いていたが、想像以上に美味そうなパン達だ。
テーブルパンか、よくてひと口のサンドイッチ程度しか口にしたことがない……国王の俺には、想像していなかったものばかり。
見ただけでは、ただのパンだが……これがすべて、ポーション……回復薬だとはとても思えなかった。
「……どれもこれも、余が知らないものだらけだな」
「それが、陛下。あの者が製造しているこれらのポーションパンは……前任のパン屋でも他でも購入したものはないとされているものばかりだそうで」
「ほぉ?」
それは……めちゃくちゃ興味深い!
つか、俺自身が自分で買いに行きたいくらいだ!!
こんな……こんなにも美味そうなパン達。
回復薬の流通を広める手段として……王としても、ディルック以上に後ろ盾になりたいが。
俺自身が……製造主に、興味を持った。
田舎者とだけ、情報はあるが……そんな田舎者がこんなにも美味そうなパンをホイホイと作れるわけがない。
何か、他にも情報がありそうだ。
食べるのを少し我慢して、俺はディルックが店主から預かってきたらしい、ポーションパンの一覧と効能のメモを見ることにした。
(どれも……複数、だと?)
俺が顧客となっている……その店主の師匠といつの間にかなっていた、ヴィンクス=エヴァンスのA級ポーションでも、よくて二個程度なのに。
このパンについては……最低三個ときた。
しかし……薬品ではないため、亜空間収納などに入れておかねば……数日で効果は切れるらしい。やはり、基本は食べ物だと言うことか。
「先に味見をしましたが……宮廷料理人達にも負けない逸品でした。陛下のお口にもきっと合うでしょう」
「…………どれも気になるな」
美しいサンドイッチから、素朴な見た目のパンまで。
本当に、様々な種類のパンがあったが……俺は、効能もだが『カレーパン』と言うのが気になって、手にとってみた。
不思議な粒々としたものがあるが……持った感触は、少し重い。
油と香辛料の香りがするのに……見た目は、素朴なパンだ。
どんな味か気になって、かじってみた。すぐに上質な油で揚げた、サクッと食感の良いパン生地の甘い味わいが広がる!!
だが、さらに驚いたのは……その後に、中からどろっとした香辛料の液体に、肉?
肉は柔らかく下処理がされていて、歯で簡単に噛むことが出来た!?
さらにその後……ポーションとしての現象としては普通の、身体が光るのもきちんとあった。王族がゆえに、回復薬は日常として扱うのでよく知ってはいたが。
(……効果が、高い!?)
エヴァンスのポーションと同じ……いや、それ以上かもしれない!?
体力、精神力の回復……さらに、身体が風呂などで磨かれた時のような爽快感!!
効能のメモにもあったが……たしか、浄化の部分か?
ここまで素晴らしいものとは思わなかった!!
「……いかがでしょう、陛下?」
「……これは。阿呆どもも欲しがるわけだ」
ここまで効能もだが、味も逸品ときたポーションのパンとなれば……腐った性根を持つあいつらも、日夜狙っているに違いない。
とくれば、ディルックがもうひとつ持ち帰った『ラティスト』の情報も聞いた上で、俺は決めた。
国王としてもだが、ひとりの人間として……リオーネのスバルのパン屋に行ってみることにした!!
次回は17時過ぎ〜




