第79話 優しい貴族のおじさん
お待たせ致しましたー
あわあわしそうになったけど、お師匠さんから頭をぽんぽんとされちゃった。
「落ち着け、ケント。この方は普通の貴族ではない」
「へ?」
「はは。仕方がないさ? 私を含めるごく一部の貴族以外の……印象が悪いようにしてしまったのは。あれらのせいだけとは言えない」
と言うことは、このお貴族さん……ディルック様? はいい人なのだろうか?
「え、えーっと……ディルック、様?」
「うん、なんだい?」
「今日は……どう言うご用件で?」
「もちろん、君のパンを買いに。ああ、あの腐れ外道のようにすべて買い占めようとはしないよ? 適切な量を買いに来たんだ。実は、こっそり我が家の者が買ってきてくれてね? とても美味しかった……私も来たいと思ったんだ」
「え?」
このお貴族さんの……関係者が来た?
全く、気づかなかったけど……ラティストも特に言わなかったし?
「……あなたらしい行動だが。営業時間外に来たと言うことは、混乱を避けるためですか?」
「その方がいいと思ってね? けど……ケントくん? 今お店にパンはあるかな?」
「えっと……全部作り終えていませんが」
お師匠さんが、こんなにも信用(?)しているのなら……大丈夫な相手なのかな?
とりあえず、表の看板はそのままにしておいて……ディルック様を招き入れることにした。チラッと見えたけど、綺麗な馬車が店のそばに止まっていたのだった。
「……おお。素晴らしい!」
日本風のパン屋だからか、異世界だと珍しく映るらしく……ディルック様はあちこちを興味深く見つめてくれたのだ。
「……これら、すべて。ケントと彼の相棒らが作ったポーションパンです」
「ふむ。エヴァンスが師とは聞いているが」
「助言をしたまでです」
と言う設定にしとかないとややこしくなるので、そこはロイズさんとかと相談済みです。
僕も首を縦に振りました。
「……しかし、前にも食べたが見たことがないパンばかりだ。テーブルパンともどれも違う」
手を触れず、棚の効能メモなどを興味深く見つめる目は……やっぱり、この世界で言う普通の貴族さんじゃなく、常識のある人でホッと出来た。
「テーブルパンももちろんご用意出来ますよ? その……ポーションとしての効能は低いですが」
「いやいや、このような美しいパンも興味深い! これは……たしかに、たいていの愚かな貴族どもはこぞって手に入りたがるだろう」
「……いくつか、護りはあります」
「そのようだね?」
それは、『創始の大精霊』であるラティストがいるからとは……さすがに言えないけどね?
お師匠さんの言葉に、僕はまた首を縦に振った。
ディルック様は購入方法を僕から教わり、ジェイドほどじゃないけど……僕らの手を借りてたくさんのパンを購入してくださり、ご自身で亜空間収納の中に入れたのでした。
「……ディルック様。今日は購入だけのために来たわけではないでしょう?」
お師匠さんも、軽い梱包作業を手伝ってくれた後に……ディルック様にそんな言葉を投げかけた。
すると、ディルック様は苦笑いされたんだよね?
「……君にはお見通しだね? いくら……ここが生産ギルドや冒険者ギルドの庇護下にあるとて。後ろ盾は多いに越したことはない。我がイシュラリア家も……君達が否定してくれなければ、受け入れて欲しいのだが」
「……やはり、ですか」
「え、え?」
「ケント。王族に近い、こちらの方からの後方支援を得ることが出来るかもしれない……と言うことだ」
「このような、庶民の味方でもあるパンを……阿呆な連中の毒牙にかかってはいけないからね?」
ってことは、色んな面でのチート特典ってなるわけ??
次回は17時過ぎ〜




