第655話 ハムスの一日?
僕、ハムス。
今でも『神獣』だけど、その秘密を知っている人は少ない。
ご主人様のリトも、まだあんまりよくわかってないんだよね? 可愛いぬいぐるみ扱いなところはあるけど……。
(まあ、まだ子どもだから無理ないか……な?)
きちんと獣魔契約はしたし、ケントの獣魔であるカウルと同じ異能はきちんと僕に付与されている。まだまだ、主人のリトに合わせて『ままごとサイズ』って言うのになっているらしいけど。
今日は仕事の日だから、リトを起こさなきゃいけない。
「リト〜? リト、起きてぇ」
擬態化だと手がぬいぐるみのようにぽふぽふしちゃうけど。リトは気に入っているのか、へにゃって顔を緩めるんだ。かわいよねぇ……?
何回か叩いてあげれば、仕事を思い出したのかゆっくり起き上がった。今日は、たしか。リトだけでご飯を作らなきゃいけない日だ。
と言っても、練習とかで自分で作ったポーションパンを炙るのと、作り置きのスープをあっためるだけ。子どもだからこれくらいでお腹いっぱいになるらしい。
僕は結構食べるから、残ったパンはこの時に食べ切っちゃう。ポーションでもパンだから日持ちしにくいのは欠点。でも、そう言うものだからねぇ?
「ハムス、行こう!」
「うん、行こう!」
まだ父親も母親も寝ているから、二人で片付けてから家を出る。パン屋の朝はすっごく早いけど、市場はもう動き出している。リトの年齢にあわせて、スバルに行く時間も少し遅めなんだよね? 開店時間くらいには行かなきゃだけど。
「二人ともおはよう」
「おはよー!」
「おはようございます、ししょー!」
店に到着したら、ケントがもう開店前準備の掃除とかしてた。リトだと時間かかるから、ここは大人の仕事だって。
裏口から入って、僕はカウルに挨拶してから定位置の椅子に座る。
カウルほど、まだまだパン作りの助手には慣れてないから……発酵とオーブン以外は見学するの。
役割がない以外、一日はそんな感じかな? あとは、リトといっしょにご飯食べて、家に帰る。帰る時には、練習したパンをたくさん持って帰るんだ!




