第644話『お芋のポンデケージョ』
そろそろ秋。
僕がヒーディアを含める異世界に転生してから一年くらい。元の年齢にすぐ転生させられたから、赤ちゃんからのスタートじゃないけど。
いろんな人たちに支えられているから、問題ナッシング!! 毎日がとっても楽しい。
今日は今日で、ロイズさんからのお願いがありましたぁ。
「……特定の食材でポーションパンを?」
「おう。ポーションパン、とくればそれはそれで売れるが。近隣のパン屋も真似したがるだろ?」
前は迷惑をかけちゃった普通のパン屋さんたち。
今では、自分たちなりに『オリジナルのパン』が作れるかどうかを試行錯誤してるみたい。それは、噂が流れて街の外の方にも。現状、僕とリトくん以外でポーションパンは作ることはできないけど。
それでも、パン屋の街おこしから賑わっているから。商業ギルド的には問題ないらしい。
「今回は何ですか?」
「芋だ。ジャガイモとカンショが豊作でよ」
カンショはさつまいもの古い言い方。異世界ではそれが定着してるみたい。
「うーん。真似しやすい惣菜パンや、菓子パンはいくらでもできますけど」
「依頼してぇのは、『どっちでも同じパン』が作れることだな。陛下は今回関与してない」
「となると……」
ジャガイモのでんぷんから出来る『片栗粉』は、ジャガイモのクズ芋から大量のできるって聞いたことがあるし……この世界でも調味料としてちゃんとある。
なら、と! リトくんを呼んで、まずは『子どもでも出来るパン』を作ってみようと決めた!!
「ししょー? ぼく、なに作れば?」
「久しぶりの挑戦だよ! ポンデケージョ、ってパンを作るんだ」
「ぽ?」
「……言いにくいが、なんだそりゃ? 芋入りで作れんのか?」
「んー。ちょっと、ドーナツに近いです」
潰した芋に、粉類と牛乳。あと、しょっぱい系の試作にはチーズを少々!! それにはロイズさんもびっくりしてたけどね?
僕とリトくんで生地を丸めたら、それぞれの相棒のオーブンで焼く。
ちょっと白っぽいのがジャガイモで、黄色がさつまいもだ。
「……見た目は、なんかポーションの『薬玉』にも見えるな?」
「中身は違いますけどね?」
お師匠さんに教わったけど、漢方とかのタブレットとかみたい。漢方ぽいから苦いんだって……。
【《さつまいもポンデケージョ》
・腹痛完治
・軽度腰痛完治
《ジャガイモポンデケージョ》
・擦り傷完治
・下剤効能
以上の効能となります】
今回は簡単過ぎたからか、効能はまあまあだけど……冷めてからが美味しいだけじゃないのがポンデケージョ。少し、冷やす魔法をかけたあとに食べてもらえば!!
「は? 変な感触だが」
「ぷにぷに、チーズおいしいです!!」
まだ白玉とか作ったことないもんね? もち米もあるらしいから、餅入り菓子パンとかピザパンとか作ろうかなって。
ただ、不思議感触過ぎて、ロイズさんは混乱してた。片栗粉とか、ベーキングパウダーの使い方次第でここまで混乱すると思わず。
飲み込んでから説明すれば、他の材料でも出来るか問い詰められちゃった……。前も作ったんだけどね?




