第643話 鈍感な恋愛観
お兄さんが、婚約者さんとデート中。
僕も一回だけお会いしたことがある女性だけど……あんまり歳が変わらないのに、弟君のために仮の女帝の地位についている。
最初はヒーディアのエディと婚約していたらしいけど、利害一致以外は気の合う仲間くらいに持てない。女帝から降嫁されるにしても……そこは夢見る乙女さんなりの思いがあって。
で、お試しでうちのお兄さんとお見合いしたら……惚れてしまったと。お兄さんも、なんだかんだで乗り気だったからよかったみたい。
は、さておきだけど……。
「……僕だけ、除け者?」
『ほほーん? マスター、羨ましなったん?』
「……なの、かなあ?」
アジト代わりにしている、宿屋で僕は相棒のフランツとのんびりしていた。今日はお兄さんの用事とかで、ソロで活動するのもなんだから……お休みしてます。
ジェフさんはシェリーとデート。エリーはもともとソロだったけど、手続き関係で少し冒険者ギルドに呼ばれている。
んで、僕はフランツとだけで依頼を受けるのも……と、ジェフさんに休養日にさせられた。お兄さんについて行くと、色々盛り上がるって理由でお留守番。
一応成人はしたし、子どもじゃないけど。
まだ冒険者として生活して数年だからか……心配されているのかな?
『なんや、マスターも恋人欲しいん?』
「……欲しい、とは違うけど」
フランツに話しても……じゃない。僕の恩人であり、相棒。
友だちよりは親側。だから、ついつい頼っちゃうけど……本当に生きているみたいに相槌してくれるから。僕の一番の親友かもしれない。
でも、生涯を共に過ごす……大事な女性って、僕だと誰が出来るんだろう? レイアさんみたいな人はいいなって思ったのは本当だけど。
多分、『労わる心が優しい』人がタイプかもしれない。エリーやシェリーはもう相手がいるし、元気いっぱいな女の子だから見ていて安心はしている。
お兄さんも婚約者さんがいるし……ああ、また戻った。どうやら、僕の悪い癖が出ちゃったみたい。延々と悪い方向へと考えちゃう癖。
『まだマスターは成人したてやで? 恋人も今まで居なかったんや。結婚は安易に考えたらあかん。相手が居てもや』
「……やけに生々しいね」
『シェリーらの見とき? あんな甘ったるい雰囲気に、マスターは自分の子と出来るか?』
「……難しい、かなあ」
たしかに、そう言う子が出来たら……触ってみたいとは思うけど。一度もちゃんと恋愛したことないから、多分ぬいぐるみを可愛がるような愛で方しか出来ないかも。
それはそれで、相手に非常に申し訳ないから……やめておくしかないな。




