第639話 アイスパンのアレンジ
「ししょー! これ作ってみたんですけど」
今日の閉店時間あたりで、リトくんが持ってきてくれたのは……クロワッサン生地の棒にも見えるけど。受け取ったら、中はきちんと空洞になっていたんだ。
「コロネの練習?」
「はい。……これ、使えます?」
「うーん。売り物には細いけど、とりあえず」
休憩も兼ねて、残ったアイスも使ってのティータイム。表側の掃除はルカリアちゃんとラティストが積極的にしてくれるから、僕とかカウルは裏に専念出来る。
スゥはスライムじゃないけど、床磨きがあの竜くんの魔法で可能なので早めにお願いしてるんだ。皆には声がけしてから、ティータイムの仕上げを始めちゃう!!
こういう時は、使い捨てよりも……詰め物用に使う道具を駆使していけばいい!! やり方をリトくんに教えてあげれば……ゆるんだアイスがスルスル入っていく!
「キレイ!」
「だねぇ?」
チョコチップでもチーズケーキ風でも。きっちり焼いたクロワッサン生地に映えるなあ……。けど、クロワッサンで甘いものを増やすか悩んでいたのでちょうどいい。
全員分出来上がったら、先に来たルカリアちゃんがとても喜んでくれていた。
「まあ! こちらはポーションパンですの?」
「……そう言えば」
鑑定スキルで軽く見たけど……手荒れやかすり傷完治、くらいの軽い効能だった。こっちのパン生地が練習用にと余りの生地使用が多いせいかな?
それでも、リトくんにある異能のせいでちゃんとポーションパンになっているんだよね??
「慣れれば、これくらいは菓子程度の扱いでいいだろう」
言動と顔が一致してないぞ、ラティストさんや? 顔がキラッキラのエフェクトかかるくらい輝いているよ!? この食いしん坊の大精霊さんは!!
「兄さん、あっしもでやんす」
「ボクも食べたい〜!」
と、マスコットたちも騒ぐからご飯前のお茶会にすることにしたけど。
ハムスの簡易オーブンで焼いても、生地がしっかりしてるからサクサクで!! それがゆるく入れたアイスの味わいがマッチして……これは商品化したいと思うくらいに美味しい!!
(だけど、リトくんの修行にはあんまりならない……)
量産はこれからいくらでも出来るけど。まずは手順とかの練習からだからね。鮭フレーク側の副産物にはなったが、今回は商品化はキャンセル。代わりに、僕らのおやつなんかにそんなのを作ってもらうことにした。
子どもの創作意欲を完全に遮断するつもりは全然ないからね!!
「おみやげありがとうございます!!」
だから、代わりにリトくんのご両親へのお土産としてプレゼントはするよ。もうすぐ、赤ちゃん産まれるらしいからね? 家の炊事の練習ご褒美にと最後に食べるんだって。お母さんの養育、凄いなあ……。




