第638話 弟への心配
少し、考えるようになってきた。
メンバー同士の結婚からの脱退なんざ、よくあることだが。
いい加減、俺もそろそろ国への帰還を考えねぇと……待たせてる女がいるんだよな? 他国の姫さんだが。
「んー……、お兄さんもいい年齢だしね?」
面子だけでも男だけで酒を飲む。この光景が普通だったが、シェリーとエリーのおかげで変わりつつある。当然、いずれ道なりに入ることでの解散は前提だったからな? 俺は一応隠しているがクレイヴ王国の王太子でもあるしよ。
「俺とシェリーが抜けても、エリーのことだってある。だが、トラディスはどーする? 第二王子のそこんとこの仕組みは国ごとで違うんだろ?」
「まあ、領地持たせて……邸で過ごす手段もあるが」
「奥さんになる人が見つかるまでは、ソロでもいいかな。ジェフさんたちに鍛えてもらったし、僕とフランツだけでも大丈夫だよ」
「「……お前なあ」」
自分が非モテだと認識しているのもだが、俺はともかく『モテ代表』のジェフんとこに居たらこーなっちまうのか? 自分も魔剣使いとして知名度あるのに、まだただのBランク程度だと思っていやがるし。
「……ピンとくる嬢ちゃん、居ないのか?」
「? 特には」
「好みくらい教えろ!? 親父たちが必死で縁談止めてんだぞ!!」
「え、えぇえ……まあ、気になった子はいたけど」
「「けど!!?」」
「……もう、くっついてたし」
誰だとさらにジェフと問い詰めたら、レイアみたいなふんわり系が好みだったらしい。ヴィンクスには世話になっているから……たしかに、出来ないな。
「つまり、薄幸美人系が好みか。とはいえ、意志が強い」
「お、お兄さん……無理に探さなくていいから! 自分で見つけたいし!!」
「そりゃ……な。が、縁談持ちかけてくる親父らの言い訳には使わせてくれ」
「あ、うん。はい」
『なはは! マスターの好みは、ちょい大人しめのお嬢さんやったん? 出会った頃と比較すると変わったなあ?』
弟を保護してくれた魔剣の意見も参考にせんとな。実質的な兄代わりはこいつだしよ……。
「フランツ。活発的な子も嫌いじゃないけど……なんか、帰り場所を守ってくれる方もいいかなって思っただけだよ。断定はしないで」
『ほーいほい。てか、それやったら貴族諸侯やと盛りだくさんちゃうん?』
「基準値にはなるが……なんとも言えん」
『そーなん?』
俺の婚約者も、見た目裏切るくらい活発的な女だしな! 国の長に今代打でなってるが……元気してるよりも、行き遅れとか言われそうだ。あと一年くらいは様子見させて欲しいのは、こっちの都合だから仕方がない。
とにかく、弟のトラディスへの心配とかも……一旦中断で終わった。




