第637話 他国の動き??
ポーションの流通が、ヒーディア国周辺から少しずつ好調になっているとの報告。
さらに、友好国のクレイヴ王国にもその兆候は見られている。これらを無視するわけにはいかない。ヒーディアとは交友国を結んでいるのは、我が国でも同じなのに。
あの若僧が、何かしらの変化をこちらに伝えないのは……意図があってこそ。おそらく、態と遅れて知らせ、びっくりさせたいのだろう。
「……全く。エディとして遊んでいたら、承知しませんわよ?」
父母を早くに亡くし、皇帝の座を本来の世継ぎである弟がある程度成育するまでの繋ぎ。
一応は、女帝と名乗らせてもらってる私をあざ笑うことはない、交友国の若き国王を無碍な扱いにはしないが。
何かしら、トラブルがあって連携の報告が遅れているだろうと……とりあえず、納めておくことにした。
と、行き着いたのが二日前だが。
「竜の泉が?」
部下の報告によると、枯れかけていた竜族の泉が再び息を吹き返したとあったが。私が即位する百年以上前から枯れ続けていた聖地の変化。
これには、流石にヒーディアへの報告を急ぐ必要があった。いくらなんでも、タイミングが良過ぎた。向こうで何があってもおかしくないもの!!
『急ぎか?』
特別性の鏡と魔法水晶との交信方法だけれど。向こうは何か忙しいのか、少しげんなりしていたわ。
「早急に言うわ。我が国にある、枯れた大地に水が戻ったの」
『……あーあー……あーうん』
「何か知っているわね!? エディ? あなたの婚約者がそっちへ帰還してすぐなのよ?? こちらがパーティーに向かう前に、洗いざらい話してちょうだい!!」
『いやあ……まあ、簡単に言えるけど』
「何よ、それ?」
言い難いというか思い出したくない感じ……こいつ、何か当事者としての情報を開示してないだけかしら?
『ざっくり言えば……俺んとこの城外に竜が封印されてたから、故郷に戻ったとしか』
「は? んじゃ、そっちのせい!? うちの国の癒しの水が枯渇してたの!!?」
『ちげーよ!? 大昔の盗賊連中のせいしか、俺も情報知らんし!! 詳しく聞け……れる奴、はちょっと』
「国事でも一大事なのよ!? 誰、そいつ!?」
『……俺のマブダチんとこに、いるけど。情報集めっから、水の管理どーにかしとけ!!』
「あ、ちょっと!?」
勝手に向こうの水晶へ布をかけたのか、交信を途絶えさせた。それが合図になるために、鏡にはもう声も姿も通すことはなくなった。
怒りで叩き割ろうとしたが、一応国宝でも最上級のものなので……絨毯を足蹴するだけで我慢したけど!?
「……姫様。仮にも、『元』婚約者殿に」
「いーのよ。あいつとは気が合っただけで、私が王妃になるのは無理だもの」
側近の爺やが心配する必要はない。盟友にはなれても、奥さんだと痴話喧嘩が絶えない関係は日常でも宜しくない。嫌いではなかったが、あの若僧を旦那かどうかで見る目にはなれなかったんだもの。
それより、本気で泉の調査を進めなくてはいけない。竜族の帰還だと言うのなら、我が国の宝が戻ったのと同じだから。
「姉上。竜が帰還とは本当に?」
爺やに連れて来られた『本来の皇帝』は日に日に凛々しく成長しているが、実の弟だから夫婦にはなれないし……こう言う真面目ぽく見えて包容力の高い漢が好みなのよね?
だから、今は旅に出ているレイザーと約束したんだもの。整えれば、彼中々に凄いから!
「ええ。クレイヴ王国にも、早急に知らせましょう。回復薬の流通についても、何か存じていらっしゃるはずだわ」
「僕も書簡への捺印、頑張ります」
「お互いにね?」
雑務については弟に任せ、私は私で飛竜で問題とされた泉へと向かったわ。




