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スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜  作者: 櫛田こころ


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第624話 意外な相手からの相談

 あたしは今、ちょっと意外な人に相談を持ちかけられていたの。



「依頼を、お願い……したくて」

「あ、はい……」



 初対面じゃないわけじゃないけど。しょっちゅうは会うことのない女性。花屋のひとり娘で、ヴィンクスさんの婚約者になったレイアさん。その人に、ちょっとギルドへ呼ばれて面会室で依頼内容を聞くことになったの。


 ギルマスも最近忙しいか、気を遣ってかこっちに来てないけれど。それはともかく、年上でも知人の女性からの依頼って何かしら? 基本的にはソロだけど、ここんとこ『シリウスの風』との共闘が多いから依頼がぐんと減ってはいたのに?


 ラティストの配下の配下?らしい精霊の寵愛とやらで、ほとんど生まれつきから目を患っていたレイアさんだけど……改めて見ると美人。ヴィンクスさんには勿体無いくらいだけど、そこはさておき。



「あの! どーしても作りたいお料理に、必要な材料をお願いしたいんです」

「……材料?」



 必死こいてあたしなんかに頼み込むなんて、ヴィンクスさん愛されてる……ちょっと羨ましい。じゃないない。依頼は受けつもりだけど、ちゃんと話聞かなくちゃ。


 レイアさんもあたしの態度で、なんとなくわかってくれたのか深呼吸から始めたもの。



「……春手前の、雪解けの時期としか。茎は水に浸して食前水。花は砂糖漬けにして食後に。根は刻んでスープや煮込み料理に使うなど。その花を数株最終してきて欲しいんです!」

「珍しい依頼ですけど。あたし、聞いたことないですね」

「古い御伽話だったんですけど。花屋の家であれば、一応図鑑には載っているんです。恋仲が出来て、春の訪れをともに祝う時にこそ……と」

「へぇ……」



 花屋は薬草を管理している商店もあったりするから、それかしら? たしかに、レイアさんみたいなタイプだとヴィンクスさんには尽くしたいタイプだし。


 あたしも、せっかくだからシェリーと協力してそれぞれの彼氏に作ってあげようかしら? 受けることはもちろん承諾して、すぐ後にシェリーに相談したんだけど……。



「それって、アレのこと!?」



 いつもの宿屋で、シェリーに報告したらめっちゃびっくりされちゃったわ。顔面真っ赤も久々で可愛いと思ってたら、腕を引っ張られて部屋でコソコソと話すことになったけど。



「……どったの?」

「……チャンス、ではあるけど。非常に複雑ね」

「は? 具体的に言ってよ?」

「エリー? 根も茎も食べられる花とかって……田舎じゃ『精力剤』扱いが多いのよ」

「え」



 まさか、恥ずかしくて依頼したのはそのため。しかも、男じゃなくて、女のあたしに。もしそうだとしても、とても勇気がいっただろう。


 それとあたしは、改めてシェリーに依頼書を見せたあとに『アレ』だと判明したけれど。やっぱり、ケントとはいっしょにいる時間作りたいからと決意したわ! こんな機会ないもん!!



「まあ、私もジェフと最近全然だから……いっしょに採取行くよ」

「ん」



 それはそれで嬉しいと頷けば、なんでか苦笑いされたのよね??

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