第621話 スインと向き合うも
ケントに預かった、ボール型魔導具『スイン』。
製造者は、あのマーベラス。稀代の魔導具技師としても有名だが、気分屋で特に気に入った輩しかまともな注文を受けないとされている。俺も、今は国王だが王太子としての地位にいたときでさえ……気に入られるのは結構大変だった。
そこはまあいいとして。
ケントを気に入るくらいのあいつが、わざわざ作成した魔導具のボール。それに『特殊な意識』が入り込んでいたのがこれでわかった。それと、特殊な付与でポーションパンが下手に進化してたのも。
太古の昔、郊外の湖の奥底が出来る前。
竜の里から持ち出された『長の孫』の卵の意識の一部が。ケントが最初の最初にそこの水でパンを作成したことで『ケントの体内』に潜んでいた。
同じ水を含んだカウルではなく、全く無関係の魔導具を入れ物にしたらしい。と、爺も同席でスインに質疑応答しまくって今に至る訳だ……。
拙い連携の意識だったから、めっちゃ時間かかった!!
「……スイン。氷系の魔法が使えるのも、竜側のおかげか?」
『た……ぶん。氷は得意』
「それを、無闇にケントを守る時とかに使うなよ? 店が壊れたら、皆困る」
『ん……大事』
「意識が共有してんのは、自分で話すか?」
『……うん。話す』
とりあえず、マーベラスには事情を話すのに召喚はしたが。スインの周りで祭り騒ぎだとはしゃぐんで、一発殴った!
「相変わらず、荒いですなあ!?」
「とにかく! お前の功績にしとくから、表向きは話し合わせとけ!」
「わーかっとりますわ。しっかし、水が涙……なのに、意識が溶け込んだのは事実上スインだけですかぁ?」
「よっぽど、ケントを気に入ったんだろ?」
なんてたって、俺のマブダチだからな!! マーベラスがさっき買ってきって、『使い回し』の生地で作ったってポーションパンもなかなかの出来だった。
また買いに行きたいけど……そろそろ、マジでのリリアとの『婚約式』の準備で忙しくなるからなあ? 簡単に会えんと思ったが、一個思いついた!!
(スイン、返しに行く時に……招待状とパーティー用のパン依頼しよ!!)
ケントのおかげでリリアと婚約出来っからな!! 招待客としても、もちろん招待するぞ!!
そっからの俺の行動は早く、スインは俺の近くで転がってもらい。ある程度の招待状が出来上がったら、ケントとルカリアの分を持ってスインを返しに行くことにした!!
「ケント! スインの調査終わったぞ!!」
「いらっしゃい、エディ。スイン、おかえりー」
一応封印はした、あの特殊付与もおそらくだが。竜の意識を、湖側で呼び起こすきっかけだっただろうと思うしかない。
そこをどうするかも、ケントと相談だ!




