第615話 水の使い手は子どもドラゴン?
エディと一緒に渦の中にいるらしいドラコンのところに行ったんだけど。
水の底には、確かにさっきまで連れ込まれていた……暗い空間の中にいたのと同じドラゴンがいた!! たしかにエディが言っていたように鎖でぐるぐる巻きにされている!!
「あの子大丈夫!?」
「わからん! しかし、マジでケントを主って言ってたのか!?」
「言ってたけど。ここの水、たしかに最初だけパン作りに使った以降は何もしてないよ?」
「結構経っているしな。……とりあえず、声はかけてくれ」
「わかった。ドラゴンくーん! おーい!」
エディに言われるままに声をかけたけど、聞こえたのかドラゴンくんは顔を上げてくれた。動きにくそうだけど、一応笑顔っぽい。幽霊になってた時に見たようにちょっとだけ幼く見えた気がする。
『ご主人様ー!』
「ちょっと待って? 僕はなんでご主人様なの? 水はたしかに勝手に使っちゃったけど」
『ボクの、涙! ご主人様から感じるの!』
「え、涙??」
『ここの水、ボクの涙なの!』
「……だそうだけど?」
「そんな逸話、聞いたことねぇが?」
『嘘じゃないもん!』
「と言っても、勝手に使ってごめん……」
『そうじゃないの』
「「うん??」」
怒っているわけじゃないならなんだろう。それと僕をご主人様呼びにするのは何故なのか。
エディと首を捻っていても何も解決しないから、鎖は外していいのかやってみようと決めた。なんだかんだで鎖でぐるぐるになっているのは可哀想だもん!
「ご主人様はともかく! こんな可哀想なのはダメだね!」
「水は引いているし、降りるぞ!」
「待て」
エディの魔法で移動しようとしたら、何故かラティストのご登場? しかも、彼ひとりだけじゃなくてジェイドまで?
「ラティスト?」
「ここは俺たちに任せろ。遠方の竜の里の依頼がここにあったとはな」
「この小竜は、数百年前の嵐で行方不明だった卵だったんだよ」
話を聞くと。最近復活したラティストには里のお父さんから言い渡されてたことがあったらしく。かなり遠くの竜の里から、大昔の抗争で行方不明になっている長のお孫さんの卵を探してくれないかの依頼を受けていたけど。お父さんがラティストが僕と契約していても幾つか依頼は熟せとのお達しが。
それがなぜここに来たかは……僕とエリーの幽霊状態にびっくりして駆けつけてきてくれたそうで。
「小竜よ。その鎖はどうした」
ラティストはささっとドラゴンくんの前に降りてたけど、ドラゴンくんはしょんぼりしてた。
『わかんない。卵出たらこうなってたの』
「いにしえの誰かがとどめておくのに繋いだか。そして地形変動でここは窪んで……お前の悲しみの涙と雨などで水が溜まったか」
『うん! ご主人様に使ってもらえて嬉しいの!』
「彼奴を主に認めても……里ではお前の帰りを待っているぞ? 父も母も居る」
『……ご主人様とはダメなの?』
「……あいにくだが。俺は彼奴の契約精霊だ。わかってくれるか?」
『……はーい』
ドラゴンくんがさらにしょんぼりすると、ラティストは魔法を使い出す。鎖に繋がれてたドラゴンくんの体が瞬間的に小さな光になって、どこかに運んだのか消えていった。
すぐに浮かんできたラティストだったけど、水の穴はすぐに消えずに窪んだまま。
「まだこのまま?」
「僕が水の作り変えとかするから、あの鎖は使うんだ」
ジェイドがそう答えたあと、鎖のとこまで飛んでいく。水は閉じたけど、ジェイドは精霊だから溺れたりしないもんね?
エディと岸に戻ったら、全然濡れてないジェイドも戻ってきたし。
「お疲れ様」
「ま、ね? けど……竜の涙を取り込んでたか? 兄さん気づいてた?」
「気づいて……たが、抜くと肉体に影響が出かねん」
「うまく馴染んでいるもんね? 僕も出来ないや」
「はい? どういうこと?」
意味がわからないでいると、ジェイドがなぜかスインを召喚しちゃった?
「スインの意識体とか、これを実現出来たの。あの小竜の涙をパンで取り込んでいたからなんだよ」
「俺は精霊だから悪影響はないが。ケントの異能だけではないんだ」
「えぇえ!?」
ダブルデートは一旦終わりになったけど、代わりにエディから専門のお医者さんに健康診断を受けるように担ぎ込まれてしまいましたぁ!
エリーも同じパンを食べたから、当然リリアさん付き添いで……。




