第612話 いざ、ダブルデート!①
「ダブルデートって……まあ、いいけど」
「……ごめん」
ダブルデート決行日の少し前に、エリーにはちゃんと説明したんだけど。エディからのお願いだから、しょうがないかーってされました。
エリーは僕と単独でデートに行きたかったのだろう。僕も、言われてみればちゃんとデートしても、なんらかのアクシデントに巻き込まれておじゃん……が多かった。
あと、もっと最低なのが……セはともかく、キス未満ってとこ!!
どのタイミングでもしてない気がする!! これをさっき来たエディに告げれば、番組仕込みみたいなひっくり返りさせられちゃった……。
「そ言えば、俺も?」
「え!?」
エディとリリアさんならとっくに、と思っていたのに?? 聞いてみると、僕の方とほとんど変わらない感じらしい……なんてことだ。
「とは言え、キスのタイミングは相応に素晴らしく……とされているが」
「ロマンチック、だよね? 僕無理そう」
「俺も柄じゃねぇ……」
「そこは王様なんだし頑張ろうよ」
「面倒だが、それはなあ……」
でも、僕は僕でエリーにもそう言うシチュエーションとやらを組まなきゃいけない。まずは、例の湖前まで四人で移動して。段取りを決めたら、チーズパンを作る準備をば。リリアさんも、野営に手慣れているのかめちゃくちゃ手際がいい。
活動的な女の子ってのは聞いていたけど、ほわほわ系の可愛い感じなのに侮れないねぇ?
「じゃ! エディが持ってきてくれたチーズを使っての、特別チーズパン作るよー!」
「待ってた!!」
「シェリーには聞いてたけど、そんな美味しいの?」
「まあ。あのシェリー嬢とお知り合いで?」
「ええ。今では友だち」
リリアさんとエリーはちょっとずつ砕けた話し方になっているみたい。僕とエディがマブダチだから、その彼女ってことで身分差はあっても彼氏が既に……かも。と言うか、この二人は武闘して互いの力量をわかっているからそれでかも?
「はい、エリー。パンのお皿持ってて」
「え? まさか……わぉ!」
「トロトロのお出ましー」
魔法はエディがやってくれてたけど、予想以上に溶けるのが早くて。すぐに火が通ったら、とろんとパンの上に落ちていく。その出来上がりを見て、リリアさんが唾を飲んだのを僕とエディは見逃さなかった。
「ほい、リリア」
「……まあ」
すかさず、エディは浮遊する魔法を使って、ほいほいと作ってあげていた。そのナイスな気遣いに、リリアさんの目が輝かないわけがない! 好きな人に作ってもらえたら、そりゃ嬉しいよね!
「いただきます!」
「……いただきますわ」
そして食べてもらえた時の顔を見て、彼氏の僕らが喜ばない訳がない! とってもいい笑顔だもん!!
「ほい、ケント」
「はい、エディも」
僕らはマブダチとしてそれぞれ作り……がぶりつくのはお約束!!
それぞれ、シチュエーションも仕上がりも最高の中で、チーズパンを頬張りましたとも。




