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スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜  作者: 櫛田こころ


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第55話 大精霊の心境

お待たせ致しましたー

 俺の主となった……ケント。


 異界からの……転生者らしい。その事実を知った時は、あの阿呆な神を問い合わせしたくなったりもしたが。


 ケントからは、きちんと転生したのと先に獣魔となったスライムのカウルと出会って……己の夢であった『パン屋』を開く兆しが見えた事を大変喜んでいたが。


 その『パン』が……俺を救助してくれた、『ポーションのパン』だと言うのは、あの神からの加護などで可能にしてしまったのだ。


 回復薬の流通が、貪欲な輩のせいで乏しくなっているらしい……この世界での希望の光。


 だが、薬ではなく……『食べ物』のせいで、あまり日持ちがしないのが欠点だ。


 おまけに、効力などもケントが言うには『賞味期限』と言うもので薄まることも。


 創始の大精霊とまで呼ばれた……俺の加護を与えれば、もっと可能だと思うのは告げたが。ケントは『今のままで』と俺の提案を断った。


 大精霊を使役しているのに、ケントは俺を従者扱いしたことがない。


 転生させられたことで……得たもの、つまり、カウルや俺を『家族』として認識しているのだ。そんな人間とは初めて出会うが……レイスに取り込まれた俺を救ってくれるくらいだ。


 人が良過ぎるのだ、ケントは。



(……カウルとも決めてはいるが、全身全霊で俺が守護せねば)



 エリザベス……エリーと、あの魔眼持ちの男がいるらしい宿屋に向かった時は、店の預かりを承ったが……これは仕様がない。


 俺は、下手に創始の大精霊とバレたら色々面倒な立場だ。あの魔眼ではおそらく見透かされているので……すぐ戻るから、とケントの言葉には頷いた。


 物凄く……腹は減ったが。


 何故か、ケントと主従の契約を交わしたことで……大精霊のはずなのに、腹が減るのだ。


 初めて……ケントとカウルのパンを口にしたからだろうが、ポーションのパンは美味すぎた。


 魔素とかが必要程度の俺であったのに……まるで、人間のようになってしまったのだ。大精霊としての状態維持などは依然として続いているのに、だ。



「はーい。ポテチ出来たよ〜?」



 ケントとエリーが戻り、きちんと夕食である『ライスバーガー』と言う美味なるパン(?)を食べても、皆足りなかったため。


 ケントが、異界の菓子らしい……芋の薄切りだけを揚げた『ポテチ』とやらを振る舞ってくれた。


 熱々もいいが、少し冷めてからが食べやすいと……味付けは、塩。だが、岩から取れる塩を使い……まるで、土の汚れにも見えるそれを、ケントはためらわずに口にした。



「ん〜〜!? 美味しい!!」


「ケント! 食べていいの!?」


「あっしも!!」


「……俺も」


「もちろん!!」



 独り占めせず、分け与えの心を持つ……俺の契約者。


 だからこそ、俺はレイスから救ってくれた時に……自分以外の対価がないからと告げたのだ。その結果、ケントの手伝いをしながらだが……守護する精霊としても、ケントの役に立てていると思う。



(次は……やはり、俺も行こう)



 エリーを信用していない訳ではないが、やはり、ケントを囲おうと狙う輩は多い。


 今日、あの穢らわしい輩が来た後にも……偵察の者が何度ケントを調べあげようとしたか。そいつらは、適当な魔法で遠方に送り届けてやったが。


 無益な殺生などは、何と無くケントが嫌がりそうだったからな?


 とにかく……回復薬となるポーションパンの流通は、あの阿呆な神の望みと同時にケントの願いだからな?



「美味しい!?」


「パリパリ、サクサクでやんす!!」


「……美味い!」



 今いるこの空間も心地よい。


 ここを護るためならば……弟を説得した甲斐がある輩に己がならねば、と強く自分に誓った。

次回は17時過ぎ〜

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