第48話 密かな決意
お待たせ致しましたー
ああ……ああ!
なんて……なんてお美しいのだろう!!
こっそり……出来るだけだこっそりと、リオーネに最近出来たと言う……ポーションとなるパン屋へと赴いたのだけれど。
店主らしき、男も少しばかり可愛らしい顔立ちではあるが。
わたくしが……お近づきになりたいと思った、あの御方。
お名前は、創始の大精霊として史実では語られていらっしゃる……『ラティスト様』と同じお名前の御方。
けれど……畏れ多いとは思うが、とてもお似合いだったわ。
絹糸のように、艶やかな長い黒髪。
ルビーも負けてしまうほどの、輝く真紅の瞳。
お肌は貴族に負けないくらい、シミひとつない白磁の物。
背もすらっとしていて、脚も長かった。
どこの出自の御方だろうか?
貴族どころか……王族にいらしてもおかしくはない御方。
なのに……何故、城下町とは言え市井のような場所で、あのような事を。
わたくしもパンは購入したけれど……卑しい想いを抱いている女冒険者達からのアピールはとても迷惑そうだった。
わたくしなら……そのような悪事(?)からお助け出来るのに!!
(……ですが。それは、いけませんわ)
ほとんどの貴族が、横行を企んでいた……あのポーションパン屋の独占。
我が家……お父様やお母様は、どちらかと言うと市井の考え寄りであるため……そのような愚かな考えはわたくしを含めて抱いていない。
せっかく……回復薬の流通が変わる兆しですもの。
ラティスト様方から、その生活を奪うのはよろしくありません。
(ですが……ああ)
ラティスト様と……少しでもお近づきになりたい気持ちは本当。
わたくしは貴族の娘であるが故に……少しばかり、縛りはあるのだけれど。
一度、お忍びで赴いた……『スバルのパン屋』でお姿を拝見してから、わたくしの心にトキメキが起こり、消えない。
これは……恋なのだろうか?
あと数年で、婚期を逃してしまう年頃になるわたくしが……恋?
ああ、そうすると……納得出来てしまう!
わたくしは……ラティスト様に恋をしているのだわ!!
「…………けれど……ダルティア卿の阿呆め!」
ラティスト様や店主に多大なご迷惑をおかけしようとしていた粗忽者!!
冒険者パーティーの『シリウスの風』がいなければ……ラティスト様にどのようなご迷惑をかけていたことか!!
幸い……被害がほとんどないけれど。奴のせいで、貴族のイメージがますます悪くなっていく。
我が家は異質とされていても……同じように思われているかもしれない。
そのようなことは、辛いですわ!!
「……お父様に、一度お話せねば」
変わることを諦めていた、大半の貴族どもの横行を。
我が家から変えることが出来るとしたら……早くしないと!!
待っていてください、ラティスト様。
わたくし……頑張ります!!
次回はまた明日〜




