第43話『ふわふわフルーツサンド』
お待たせ致しましたー
出来るだけ……お金はたくさん用意してきたのに。
ケントさんと言う……ポーションのパン屋を経営している男の人は、『そんなに要らない』と否定したのだ。
薬ではなく、食べ物。
亜空間収納は……誰でも扱えるわけではないし、魔法鞄も誰もが持っているわけじゃない。
「このパン達も、効果の維持が保って三日程度。こちらのフルーツサンドも……出来れば、冷たいところで保存していただきたいので。すぐに食べないとあまり日持ちしません」
「……そうなんですね」
一応魔法鞄は持っているけれど……そのままだとそんなにも日持ちしない?
それにしても……銀貨どころか銅貨で購入出来るのがまだ信じられない。
とりあえず、効果を実感するためにお金を払って……ここで食べさせていただくことにした。
実は、ここに来る前に敢えて魔物討伐で魔力の大半を使い切ったので……回復に時間をかけても、本当かどうか確かめたかったんだよね?
店長のケントさんが……すっごく綺麗でかっこいい、ラティストさんと言う店員さんと手分けして、会計していただいた後に『どうぞ』とフルーツサンドの包みを渡してくれた。
魔導具の中で冷やされていたお陰か、気持ちの良い冷たさ。
切った断面に色とりどりのフルーツがぎっしりと挟んであって……白いクリームもたっぷりとあった。
デザートは大好きだけど……こんなにも贅沢にクリームが使われているパンは、初めてだ。
食べて……いいんだよね? と、お腹も空いていたことがあって、人前だと言うのに、すぐにそのサンドイッチにかじりついた!
(ふぁ!?)
甘い柔らかい!
食堂とか屋台で買う、サンドイッチとは全然違う!!
ふわっと、歯に当たるパンの食感が心地良くて……間に挟まっている、甘い、甘酸っぱい、柔らかいフルーツ達が……クリームに包まれていて、パンとすっごく相性が良い!
夢中になって食べ進めていくと……奥に、今まで食べていたクリームとは別のクリームがあった。少し口を離すと……黄色いクリームが挟まれていたのだ。
「それがカスタードクリームと言います。卵をベースに使っているので、濃厚でしょう?」
店長さんの説明に、口の中にサンドイッチがあったので頷くことしか出来なかった。
でも、とても美味しかったので……あとひと口、とゆっくり食べ進めていくと。
体の中に、何か力が湧くような感覚を得た!?
「ふぇ!?」
足元から、ゆっくりゆっくりと上へ。
お腹から胸にまで込み上がってくると……頭の中に、声が響いてきたのだ。
【魔力、大回復。
こちらのポーションパンを定期的に摂取すれば……先天性の症状も落ち着くでしょう】
短い、アナウンスだったけど。
間違いない、『神』からのアナウンスだった!!
「て、店長さん! 今……今、神からのアナウンスが!!」
「え? なんて言われたんですか?」
「こ、ここのパンを……定期的に食べれば! 私の魔力不足が治るって!?」
「本当ですか? お役に立てて何よりです」
そう言って、笑った店長さんの笑顔は。
昔……一緒に遊びながら、笑っていたジェフに似ていた。
(あ、ジェフ!)
この街に来ているの情報を得たのに!!
このお店に来た理由のひとつ……危うく忘れそうになったわ!!
「……その。店長さん、パンはまた買うんですけど」
「はい? 何か?」
「ジェフ……『シリウスの風』は、ここで何しに来たのか。教えてもらってもいいですか?」
「えーっと……言いふらしたりしないのであれば」
「もちろんです!」
不躾な質問をしても、恩人の迷惑になることはしたくない! 何度も強く頷いて、言いふらさないことを誓った。
そして、理由を聞くと……この街でも、豚貴族の異名があるあの貴族を追っ払ったことや……メンバーのひとりの魔眼問題を解決出来ないか、依頼されかけたそうで。
それはたしかに……言いにくい内容だわ。
私なんかが……役に立てるのだろうか?
けど……ずっと、追いかけていた背中が近くにあるのなら……私だって何かしたい!!
次回は17時過ぎ〜




