第41話 また新たな依頼か?
お待たせ致しましたー
女の子は、何か必死の表情で……出てきた僕に声をかけてきた。
パン屋に用がありそうなのはわかるけど……こんなにも必死なのは、どうしたんだろう?
とりあえずは、いつもの接客スマイルで対応するしかない。
「いらっしゃいませ。スバルのパン屋へようこそ。ポーションのパンをお探しで?」
「あ、はい! そ……それも、なんですけど」
女の子は、持っていた魔法使いさんとかが扱うような、杖かステッキのようなものをぎゅっと握りながら……ちょっともじもじし出した。
可愛いけど……パン以外に何の用事があるんだろう?
「……とりあえず、中に入りませんか? お話くらいなら聞けますよ?」
「い、いいんですか?」
「ええ。午後の営業前ですし、他のお客さんもまだ来ていないですから」
女の子を店内に入れてあげると……ほとんど出来立てのパンの香りに、彼女は『わぁ』と声を上げた。
「……見たことがない、パンばっかりです」
「色々アレンジ加えていますからね?」
「……いらっしゃい」
レジ前では、ラティストが立っていたので……声を掛けて上げれば、女の子はぽかんと口を開けちゃった。
「き……綺麗」
「従業員のラティストって言うんです。ラティスト、こっちのお嬢さんのお話聞こうと思って連れてきたんだ」
「……そうか」
ラティストの結界内で、悪いものと感知されていないなら……お昼前のあのぶちゃいく貴族のおじさんとは全然違うだろう。むしろ、トラディスさんと同じ感じかな?
「……あの。本題の、前に……ひとつだけ店長さんに伺いたいことがあるんです」
「はい?」
女の子がステッキをぎゅっと握ると、僕にくるんと振り返ってきた。
「きょ、今日! ジェフ=リジェクターがこちらに来ませんでしたか!?」
「え、ジェフさん?」
「来たんですね!?」
「え、ええ。お仲間さんとご一緒に」
勢いがすごくて、正直に答えると……女の子はヘナヘナと言う具合に、床に座り込んでしまった。
「「!?」」
いきなりのことだったので、僕もだけどラティストもすっごく驚いちゃった!!
「だ、大丈夫ですか!?」
「は……はい」
女の子に手を貸してあげれば、何故か彼女は目元を潤ませた。
「え、泣いて!?」
「ち、違うんで……す。ジェフ……と、会えるかもって……嬉しくて」
「……あの金の髪の男と、知り合いか?」
「お……幼馴染み、なんです」
けど……それ以上に喜んでいると言うことは。
多分だけど……この子、ジェフさんのことが好きなのかもしれない。
僕なんか、前世で夢一直線で恋なんてほとんどしてないから、憶測でしかないけどね!?
「けど……どこで、その情報を?」
僕とかは店以外出ていないし……レイザーさんとかが、吹聴するような人達だと思えない。あ、それかあのぶちゃいく貴族おじさんの件で何かあったのかな?
「えっと……この街に、『シリウスの風』が来ている情報は先に知っていました。その中にジェフがいることも……」
「そうですか。けど、ここは?」
「……彼は、珍しいものが好きなので……ひょっとして、と思って」
「……なるほど」
知っている相手だからこそ、行動していた範囲とかがわかったわけかな?
「あと……私個人としても、このお店にお願いがありまして」
「そう言ってましたね?」
とりあえずは、先にそっちを解決しなくちゃかな?
次回はまた明日〜




