第37話 新規のお客の中に
お待たせ致しましたー
「いらっしゃい、エリーちゃん。後ろの……人達は?」
「あ、そうそう。紹介したいのよ。レイザー! こっちこっち!!」
エリーちゃんが手招きすれば、かっこいい眼帯をしているお兄さんがこっちにやってきた。
「よぉ。お前が、エリーの言ってたポーションのパンを作る店主か?」
背は、ラティストくらいあるんじゃないかな? 威圧感はあるけど、そこまで嫌な感じじゃない。片目しかなくても、親しみのある笑顔にはこっちまで笑顔になっちゃう。
「はい。ポーションパン屋・スバルの店長、ケントと言います」
「俺はレイザー=ラヴァンだ。エリーとはちょいと古馴染みなんでな? 久しぶりにリオーネに寄ったら、面白いことになってるそうじゃねぇか?」
「面白い……ですか? 変わったパンは売ってますが」
「そうそれ! うちのメンバーでも料理上手がいるんだよ。そいつが気になっててな? おーい、トラディス!!」
レイザーさんが振り返って、後ろにいる人を手招きすると……エリーちゃんよりは、銅色って感じの赤毛の男の子がやってきた。
「はじめまして、トラディス=クレイグと言います」
丁寧な口調の、綺麗な男の子。
ちょっとびっくりしたけど……彼の背にあるものに、僕は目が釘付けになった!?
(え? 剣……剣、だよね?? 柄は普通だけど、パン……フランスパンのバケット!?)
ちらっと見えた部分が、どう見てもフランスパンにしか見えないんだけど!?
僕がキョロキョロしていると、レイザーさんもだけどトラディスさんも首を傾げてしまった。
「お兄さん……?」
「ケント……と言ったか。お前、まさか」
「どうしたのよ、ケント?」
皆に質問されるけど……もう僕は我慢出来ない! とトラディスさんの持ってるフランスパンに指を向けると。
『なんや、他にも見える御人がおったんや? いきなりやけど、おもろいなあ??』
何でか、いきなり関西弁が聞こえてきた!?
「……おい」
「フランツ……」
エリーちゃんは僕と一緒に、口をポカーンと開けたけど……トラディスさん達はまったく気にしていなかった。すると、トラディスさんが『フランツ』と呼んだ例の剣を僕に見やすい位置に下ろしてくれた。
「ケントにも、見えてんのか?」
「あ、は、はい?」
レイザーさんに言われても……改めて見ても、トラディスさんが持っているのは、ギャグ要素にしか見えないフランスパンが刀身の剣だった。普通なら爆笑モノだけど……ここは異世界だから、何でもありかもしれない。
あのイケメン神様が管理する世界でもあるからね?
「……この剣は、魔剣なんですけど。いきなり見えたのは……多分、お兄さん。ケントさんが初めてです」
「そうなんですか……?」
僕が聞き返すと、トラディスさんは強く頷いた。
「……そうね。あたしには、魔剣にしか見えないわ」
「……俺にも、だが」
エリーちゃん達には、剣にしか見えないらしい。
イケメン神様? 僕の知らないところで変なチート特典とかつけたりしたのかな?
次回は17時過ぎ〜




