第33話 冒険者ギルドマスター
お待たせ致しましたー
すっごい美女が……エリーちゃんが扉を開けようとした時に、向こうから出てきて彼女に抱き着いた。
僕とカウルはびっくりしたけど、ぶつかりそうだったので慌てて避けた。僕がカウルを抱っこしてるから、エリーちゃんを受け止めきれないのもある。
美女さんの方も、エリーちゃんを倒れさせようとはせずにぎゅーっと抱きしめていた。背が高い人だから、エリーちゃんの頭の位置に……とても大きなお胸がクッション以上に押し付けられていたのは大変そうだった。エリーちゃんが窒息しそうなくらい。
「……ス、ギル……マス」
「んもぉ! さっさと連れてきてちょうだいな〜? アタシ待ちくたびれたわよぉん!」
「ぐ……ぐる……し」
「あの〜……お姉さん、エリーちゃんが」
「ん? あら……」
そーっと声をかければ、耳に届いたのか美女さんはエリーちゃんの様子に気づいてくれたので、サッと離れてくださいました。
「……ひ、久々……に死ぬかと」
その様子に、これが初めてじゃないんだ〜と思うしか出来なかった。男には羨ましい光景かもしれないが、仮に僕だったら、鼻血吹くで済まないことになるだろうし。
「ふふふ。ごめんなさぁい? 期待の生産ギルドでの新人ちゃんが来るって言うもの? あと、あの事故物件解決してくれたしー?」
と言うと、くるって音が出るくらい、僕の方に振り返ってきた。全体像が見えたんだけど……美女さんの格好が凄かった!?
(し、下ぎ……い、いや、水着??)
って思うくらい……服装がグラマラス過ぎた。隠してる部分はぎりぎり隠しているけど、ほとんどが下着に近い水着しか着ていない!? 今季節的に寒くないから問題なくても……なんて、目に毒な格好をしているんだ!!
絶対顔が真っ赤になった自信あるけど……とりあえず、目を逸らしちゃいけないからと、金の瞳とか綺麗な黒髪に視線を向けることにした。
だって、エリーちゃんの呟きが嘘じゃなきゃ……この人が、この冒険者ギルドのギルドマスターさんだから。
「はじめまして〜。アタシがここのギルドマスターのラーシャ=ルゥ=ルゥ。エルフなのよ〜。ロイズからはだいたいの経緯聞いているけど、執務室でもうちょっと詳しく話してくれなぁい?」
「……け、ケントです。こっちは相棒のカウルです」
「よ……よろしく……でやんす」
ちらっと、ステータスを確認すると……たしかに、エルフって種族だった。年齢が……見た目以上にあるのはお約束なのか、結構いってた。口に出すと大変失礼だから言わないでおくけど。
とりあえず、少し回復したエリーちゃんも一緒にギルマスさんの執務室に招かれると……ギルマスさんは、また綺麗に『うふふ』と笑い出した。
「ここでなら〜、創始の大精霊も実体化していいわよん? アタシには丸見えだけど」
「え?」
「…………なら、遠慮なく」
ずっと後ろにいたのか、ラティストも実体化しちゃった。けど、ギルアさん達に向けてた怖い声音じゃない。ちょっと安心した感じ?
「全開した創始の大精霊よ。よくぞ、ご無事で」
ギルマスさんの雰囲気が、一気に変わった。
服装が気にならないくらい……威厳があるというか、凛々しさを感じたんだ。思わず、僕の背筋が伸びちゃうくらい。
「……耳長の者よ。下手に敬意を示さなくて良い。俺は主であるケントへ契約した精霊に過ぎん」
「しかし……レイスに取り込まれたなど、由々しき事態だったのでは?」
「魔力不足だったため、正直あまり覚えておらん。だが、我が弟を介して、こちらにいる事を決めた。であれば、俺はケントの従者だ。普通の精霊と同じで良い」
「……左様か」
ラティストが……大精霊らしい口調になっててカッコイイ!
それはギルマスさんもだけど……エリーちゃんと口を挟めずに見守っていると、ギルマスさんはにっこりと微笑んだ。
「……ギルマスさん?」
「ンフフ〜? イレギュラー中のイレギュラーだーけーどぉ。ケントちゃんの契約精霊になったのは本当ねぇ? それなら、格式ばった扱いはせずに、いつも通りのアタシでいるわ〜」
言いながら僕の前に来ると、ヨシヨシと頭を撫でてくれた。目の前にお胸があったけど……これは白パン! あんぱん! と意味不明な印象で誤魔化すことにした。
「……なら、ギルマス。あたしがロイズさんに言われたことについては?」
「聞いているわ〜? けど、エリーちゃんも期待のランクB冒険者。他の依頼を放っておいて、ケントちゃんの警護に付くのは納得されないわ〜。そこは、創始……ええっと、ラティスト=ルーア=ガージェン様にでも」
「ラティストでいい」
「んじゃ、ラティストちゃんもいることだし……実体化はもうして大丈夫だから、少しは任せたら?」
「……さっき、ギルア達に囲まれてたのに」
「ロイズから霊体化を下手に解くなと言われていただろう……」
「と、とりあえず! 僕ら……あそこで、パン屋を営業していいんですよね?」
「もちろんよ〜」
こちらのギルマスさんにも認めていただけたので……ルゥさんと呼んでいいと言われた彼女の勧めもあり、ラティストもきちんと加えた状態でリオーネ観光を再開したのだった。
次回はまた明日〜




