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スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜  作者: 櫛田こころ


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第31話 ゴロツキは意外と人情家

お待たせ致しましたー


「あ、あっしらになんの用が!?」



 カウルは僕の腕の中でプルプルしているが。獣魔として僕を守ろうとしているのか、懸命に立ち向かっていた。



「……ある」



 ゴロツキさんの中でも、顔つきが傷痕のせいでめちゃくちゃ怖い人が……他のゴロツキさん達の間を縫うようにやってきて、僕らの前に立った。


 めっちゃ怖いけど、泣くのはなんとか我慢した。いい年して泣くのはカッコ悪いだけでなく、この人達に良いようにしか見えないかもしれないから。



『手を出したら……殺すぞ』



 お怒りモードのラティストは、下手に霊体化を解除すると悪目立ちするだけで済まないから……ギリギリまで我慢してもらっている。エリーちゃんは、今僕の見える範囲には居ないから……ひょっとしたら、捕まっているかも。


 それなら早く助けてあげたいけど、今はこの状況をどうにかしないと!!



「……僕らに、なんの御用が?」


「…………お前、パン作れんだろ?」


「? はい?」



 いきなり、パンのことを聞かれた。


 でも、僕は少し不思議に思った。少し前にポーションパン作りはしたけど……まだ公表もしていないのに、何でわかったんだろう? この人も、まさか鑑定持ち?


 とりあえず頷くと、いきなりお兄さんが僕の両肩を強く掴んだ!!



「頼む!! 金はいくらでも払うから!! 一部でもいい、あのパンを譲ってくれ!!」


「え……えぇ?」


「や、やんす?」



 奪い取られるかと思いきや、まさかの交渉だった。


 思わずびっくりして、カウルを落としそうになったけど。



「あのポーションのパンのおかげで……ちょっと……ちょっとでも、大きな傷痕が消えたんだ!! いくらがいい!? きちんと払うから!!」



 焦って、ざっくりとした説明でしかわからないけど……つまり、このお兄さんの役に立ったんだ。あのオープンサンドのポーションパンが。


 それは良かったし、僕も嬉しいけど……なんで、『僕』が作ったことがわかったんだろう?



「あの。どこで僕が作ったと?」


「…………不躾だが、パン屋だったあそこの建物から良い匂いがして」


「……覗いたと?」


「……悪かった」



 覗くのは仕方がないにしても、きちんと話がしたいならこんなシチュエーションにしなくてもいいのに。



「うーん。交渉したいところですが、今僕の収納魔法の中にないですし。あれ全部、生産ギルドのマスターさんに管理してもらっているんです」


「…………そう、か」



 正直に言うと、お兄さんは思いっきりショックな顔になっちゃった……。よっぽど、僕らが作ったポーションパンが自分の傷などを癒したことに……希望を持てたのだろう。


 ちょっとだけ、かわいそうになっちゃった。



「……兄貴。それなら生産ギルドに行きやしょう」


「……そうだな」


「あ、で、でも!」


「「「「「「ん?」」」」」」


「すぐではないですけど! お店出す予定なんです!! その時は、ちゃんとお客さんとして来てください!!」


「……坊主!」



 すると、お兄さんが僕をカウルごと抱き上げて……他のお兄さん達と一緒になって『わっしょい!』と胴上げしたんだよね?



「坊ちゃん、頼んだ!!」


「店出来たら、マジで頼む!!」


「兄貴以外にも、傷で悩んでいる連中はめちゃくちゃいるんだ!!」


「用件は終わった。俺はギルアっつーんだ。なにかあれば、冒険者ギルドに問い合わせてくれ」



 と言うことで、ギルアさん御一行が胴上げから下ろしてくれた後に。


 カンカンに怒ったエリーちゃんが僕らを見つけて、ギルアさん達と一緒にお説教を受けてから……リオーネ観光に戻ったのであーる。


次回はまた明日〜

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