第298話 ケントへの可能性
お待たせ致しましたー
ケントって、鍛えればめちゃくちゃ強いんじゃ?
魔導具のボールを、マーベラスさんに作ってもらったのは聞いていたとは言え。
一度見た、ケント自身の実力。
それが実戦でここまで役に立つとは思わなかった。
今回は魔導具だけれど、魔力を込めていないボールでもあの威力だった。
ヴィンクスさんの推測だと……ケントを転生させたって『神』からのご加護だって言ってたけど。
(……凄すぎない?)
生産ギルド登録の職人だけじゃ、もったいない気がするわ!
Bランクだけど、冒険者としては数年生活出来ているあたしなら……ケントを、冒険者と同等に鍛えられるかもしれない。
だけど。
「うーん。狼のお肉って美味しそうじゃないイメージあるからなあ?」
今、討伐したワーウルフの死骸を焼いているんだけど。
臭いが凄いから、ケントでも鼻を押さえていた。なのに、根っからのパン職人の観点から何か再利用出来ないかって思っているのよね?
「ワーウルフの肉は食べれたもんじゃないわ。臭いがきついし、筋張っているそうよ」
「もったいないけど、それじゃしょうがないね?」
とりあえず、焼却が終わってからはさらに後始末。あたしが土魔法で灰を埋め、ケントはそれを見ながら『おお』と声を上げてくれた。
毎日、ラティストの魔法は見慣れているでしょうに……いちいち反応が可愛いわよね、この人。
「よし、片付いた。場所変える?」
「うーん。湖全体がこうじゃないよね?」
「そうね。歩いて確認しましょうか」
あたしに索敵とかのスキルがあればいいんだけど、あいにくと持っていないのよね?
クナイは一応持ったまま移動したけれど……敵となる魔物は特に遭遇することはなかったわ。油断は禁物だが、今度の休息ポイントでは魔物の姿とかも特になかった。
なので、あたしが大丈夫だと言えば……ケントは自分の収納魔法から、どんどん荷物を出しては綺麗に広げていったわ。
まるで、料理屋のように。
テキパキと準備していく様に、あたしが手伝う隙もなかったわ。
「はい、エリーちゃん座って座って!」
ぽんぽんって、隣に座るよう敷布を叩くんだけど。付き合ってそこそこ経ってても……あたしはまだケントと恋愛に関しては先に進んでいない。
キスもハグも……まだ。
だから、ちょっと友達の延長線上だとは思ってもいたが。
『僕の恋人です』
って、マーベラスさんの前では堂々と言ってくれたのよね?
あれは……素直に嬉しかった。
「そうね。ありがとう」
一難あったけど、今日は『デート』だもの。
ケントがせっかく誘ってくれたんなら……楽しまなくちゃ。
次回はまた明日〜




