第296話 スライムの気掛かり
お待たせ致しましたー
のどかでやんすねぇ?
「茶が美味いでやんすねぇ、ラティスト兄さん」
「……そうだな」
今日は、ケン兄さんがエリーはんと『デート』でやんすからねぇ?
あっしとラティスト兄さんは、休みでやんす。ポーションパン作りに必要な『酵母』の管理はしなくてはいけないでやんすが。
オープンキッチンに入れてあるんで、基本的には放置で大丈夫でやんす。
けんど、何かあっては明日からの営業に関わってくるので、待機は念のためでやんす。
なので、ラティスト兄さんと家側のリビングでのんびりしてるでやんすよ。
「クッキー、どうでやんすか?」
「今日も美味い」
ラティスト兄さんは、創始の大精霊様でやんす。
本来なら、あっしのような低ランクのスライムが話しかけるなどしてはいけないでやんすが。
ケン兄さんが、あっしらを『家族』と言ってくれたでやんす。ラティスト兄さんもそれについては否定してなかったんで。
だから、あっしも兄さんらを家族と思うでやんすよ。
ラティスト兄さんと二人だけになるのは、滅多にないでやんすが。
「今度は、ケン兄さんが言ってた『オカラ』で作ってみたいでやんす」
ケン兄さんは、異世界からの転生者。
たくさん……たっくさん、こっちの世界にはない料理を知っているでやんすよ。
あっしが得意となったクッキー作りも、ほとんどケン兄さんのご指導のおかげでやんす。
とーふの出汁殻っちゅー、『オカラ』でクッキーを作るとほろほろ崩れてコクがあって美味しいんだとか。
絶対、作ってみたいでやんす。
ポーションパンとは別に、あっしが作ったクッキーも店で販売してるでやんすから!
「……カウルのクッキーなら、売れるものが出来るだろうな」
「ありがとうでやんす」
ラティスト兄さんのお墨付きもいただけたんなら、頑張るでやんすよ!
兄さんは兄さんで、言い寄ってくる女らを追い払うのに苦労してたでやんすが。
エディはんからいただいた、紋章の効果のおかげか。
軽犯罪とおんなじくらい……そう言うのも減ったらしいでやんす。あっしはドウコンとかで基本待機なんで、実際店頭での様子は見てないでやんすけど。
けど……今日は店は休み。
ケン兄さんはデート。
マーベラスはんに作ってもらった、あの指輪を渡すそうでやんすけど。
(……兄さん、エリーはんと結婚するでやんすかねぇ?)
恋人同士でやんすし、お似合いでやんす。
けんど、兄さんは変なところで奥手でやんすから。
単純に誕生日へのプレゼントだけで、渡しそうでやんす。
ちょいと、心配でやんすぅ!
次回はまた明日〜




