第292話 Sランク鍛治師の仕事
お待たせ致しましたー
指揮棒を持ったマーベラスさんから、ラティストの時のように自分から少し距離を置くように言い。
手にしたままの授与石へ、指揮棒を軽くつつくとふわっと浮いた!?
【……集まれ】
マーベラスさんが、いつもの関西弁でも最初にラティストへ使った敬語でもない話し方と声。
さっきのラティストの口から出た……神秘的な響きに近い。
思わず、背筋がピーンとなってしまうくらい!!
そして……ロイズさんの執務机に置かれていた、ゴツゴツした金色の塊が浮いて……授与石の隣にまで飛んできた!
【……奏でよ、奏でよ】
マーベラスさんは、口が弧を描くように緩め……指揮棒を振った。
授与石と金の塊が、それぞれ白く光って……片手でなんとか視界を遮ろうとした。でも、目を閉じても光がまぶた越しに突き刺さるようだ。
この儀式のようなものが……鍛治仕事?
信じられないけど、実際に目の前では行われている。
【……謳え、唄え!】
また、マーベラスさんの強い言葉が聞こえてきて……もっともっと、光が強くなってきたので! 両手で目を覆ってもやっぱり意味がない!!
よくマーベラスさんは平気だなあ、と思っていると……足首をツンツンされた。多分カウルだけど。
「ケン兄さん、終わったでやんすよ?」
と言われたので、手を外してみれば……光りはとっくに消えててマーベラスさんは指揮棒を亜空間収納にしまうところだった。
「出来たで、ケント」
来い来いと手招きしてきたので……そちらに行けば、彼の手の中には……綺麗な指輪が!!
前世のテレビで見たような……宝石店で売られているのにも負けないくらい、綺麗な細工!!
これを……今の魔法? だけで、マーベラスさんが作った?
凄い!!
「あ、ありがとうございます」
受け取るように差し出してきたから、慌てて指輪を手に取った。授与石だけの冷たさじゃないけど、アクセサリーらしい冷たさは感じた。リングの部分は細長く、石は綺麗に加工されてたが、原石ほど大きくはない。
余分な部分はどうしたんだろう?
今のお仕事で、削れた部分は自然消滅したのかな?
「あとは、箱やなあ?」
で、指輪のボックスはマーベラスさんの亜空間収納にあったので……きちんと入れてもらい。
これで、誕生日プレゼントが出来た! と言うことで。
もちろん、僕はお支払いをしようとしたんだけど。
何故か、マーベラスさんは『いらへん』と言ったのです!?
「え!? お仕事していただいたのに、タダはダメですよ!?」
「もらえるか!? 授与石で仕事させてもろたんやで!? それだけでも、栄誉なことや! かまへんかまへん!!」
「……そんなにも?」
「国宝以上やで、ほんまやったら畏れ多いんやけど。今回は特別やわ。頼むから、駄賃とか言わんといて」
「……はぁ」
ルゥさんの提案だったとは言え……マーベラスさんにはある意味ご褒美以上のお仕事をさせてしまったみたい。
ルゥさんを見れば、めちゃくちゃニコニコしてたけど。
「とりあえずぅ? あとは、ケントちゃんがエリーちゃんをデートに誘ったらぁ?」
「……そうします」
この世界では、エディのような王様とかでは誕生祭とかがあるらしいけれど。
一般人とかの、誕生日パーティーとかは基本的に催す習慣がないそうなので。
ラウルさんへの、宝石の調達とかの取り消しも言わなくちゃだから……僕はカウルとラティストを連れて、バートレインのお家に行くことにした。
次回はまた明日〜




