第291話 授与石精製
お待たせ致しましたー
「……ほぉ?」
生産ギルドに戻れば、マーベラスさんはもう到着していて……ロイズさんが用意していたらしい、金とか銀の鉱石を眺めていらっしゃった。
僕らが来れば、すぐに意識をこっちに向けてくれたんだが。
「授与石触れるってほんまか!?」
相変わらず、珍しいものへの好奇心はすんごい。
けど、先日物々交換したあの鉄板は……本当に凄いものだった。何回パンを焼いても、焦げ跡とかは特になく……軽くお湯で洗ったら新品同様に戻っちゃう逸品。
だから、鍛治師と言うか、職人さんとしては凄い人なんだなって……僕でもよくわかったんだ。
「えっと……はい。ラティストも承諾してくれました」
「……エリーへのために使うのであれば、良い」
「……であれば。俺も最高の仕事したるわ!」
「ありがとうございます」
で、ちょっとだけラティストから離れて。
ラティストに部屋の中央に立ってもらい、彼は手で丸を作るようにしていた。
【……与えよ】
凛とした。
そんな雰囲気が似合う、素敵な低音が室内に響いていく。
ラティストからは、黒、紫、赤と帯状の光が出てきては彼を包み込み。
最初の言葉以外は、呪文のようでよく聞き取れなかったけど。
だんだんと、光が手の方に集まり……ちっちゃくなって。
完全に光が消えたら、ラティストに僕が来るように目配せしてきた。
「……出来たの?」
と、聞けば。
包んでいた手を外して……手の中に、立派な『宝石』があるのが見えた!
紫がメインだけど、赤とかグラデーションになった箇所とかがあってとっても綺麗!
持ってみると、とっても冷たい。冷凍させたパン生地くらい冷たいや!
「……じ、人生で初めて……授与石出来るとこ見れたわ!!」
大人組……特に、マーベラスさんが一番感動していた。大精霊の儀式って、やっぱり凄いんだ?
「えっと……ラティスト。これで、指輪作っちゃっていいんだよね?」
改めて、ラティストに聞くと首を縦に振ってくれた。
「目的がそれだからな? 伴侶となり得る存在への譲渡なら構わない」
「は、伴侶!?」
「ん? 恋仲への贈り物なのだろう?」
「……まだ気が早いよ」
付き合って、数ヶ月も経ってないんだから……いきなり結婚は飛躍し過ぎだ。いやじゃないんだけどね?
とりあえず……まだ感動しているマーベラスさんに授与石を渡して。
あとは出来上がるまで待つだけかと思いきや。
「ここで作ったるわ!!」
「へ?」
工房じゃないのに、鍛治仕事ってどこでも出来るものなの!?
びっくりしていると……マーベラスさんは、亜空間収納から何故か指揮棒を取り出したんだよね?
楽器も何もないのに、どうするんだろう??
次回はまた明日〜




