第28話 いきなりお客様①
お待たせ致しましたー
カウルはめちゃくちゃ苦戦したけど、衛生手袋をつけ直したエリーちゃんとラティストと三人で、ハンバーグをこねこねした。
ミンチは手作りしようとしたけど……オープンキッチンに何でか、ミンチ用の機材があったから遠慮なく使えばあっという間。
前世では、たまーにひとり暮らしの部屋では買いに行くのが面倒で細切れ肉をミンチしたからなあ?
その手間が省けて、非常に助かるけど。
「う……う。あっしはお役に立てないでやんすぅ」
「こらこら、泣かない。メインのパンはカウルがいなきゃ焼けなかったんだから」
「そうね?」
「そうだな」
「皆さん!」
カウルの落ち込みを治すのは、褒め言葉が一番。
今までが、役立たずって言われ続けてたみたいだし……簡単に自信を持てるのは難しいかも。
せっかくなので、ハンバーグも分厚いものにして……カウルのオーブンで低温でじっくり焼き。
出来上がったら……ここはひとつ。
「皆……出来立て、食べたくない?」
「「「食べたい!!」」」
「だよね!?」
このいい匂いを前に、冷ますのだなんて酷だ!!
けど、全部食べてはダメだから……一個だけを切り分けて。切り分けた間から……大量の肉汁がお皿に広がっていく!!
パン粉を入れたレシピで作ったけど、包丁越しにもふんわりとした感触が伝わってきた!!
「こう言うのは何もつけないで食べよう!!」
「ええ!!」
「違いない!!」
「食べやしょう!!」
と、フォークをスタンバイしようとした時。
ぐぎゅるぅううううう……。
って、僕らではないお腹の音が、ハンバーグへの突撃を遮ったんだ。
「「「「ん??」」」」
振り返れば、いつ来たのか……身なりがぼろぼろの、子供が立っていた。髪が短いから性別が分かりにくい。その子は、僕らが気づくと……ビクッと体を揺らした。
「ご……ごめん、なさい!!」
声の感じから、声変わり前の男の子だとわかった。ひどくビクビクしていたので……僕はフォークを置いてから、その子の前にしゃがんで目線を合わせた。
「謝らなくていいよ? いい匂いしたから、入ってきちゃった?」
「……は、はい!」
「立ち入り禁止の看板あったよね?」
「……僕、字が読めな……くて。けど……お腹、空いて。いい匂い……したんで」
「そっか」
多分だけど……異世界でもある『スラム街』にいる子供かもしれない。識字率はあんまりないようだけど……レイスがいなくなったのに、美味しい匂いがしたら誘われてしまうのも無理ないかも。
「……あっしのあげるでやんすよ」
すると、カウルが自分のハンバーグのお皿を持って、こっちに来たのだ。
「ひゃ!?」
「大丈夫。この子は僕の獣魔だよ?」
「お……兄さん、の?」
「うん。カウルがどうぞって言っているんだ。食べていいよ?」
「!」
僕が受け取って差し出してあげると……まだ熱いはずのハンバーグを手にして、男の子は勢いよくかぶりついたのだった。
「おい……ひい!!」
そしてここでなんと。
昨日の……ラティストのように、男の子の体が強く光って……緑色の光に包まれたと思ったら、すぐに綺麗な服装の男の子に大変身したんだ!!
次回は元旦‼️
今年も一年ありがとうございました‼️




