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スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜  作者: 櫛田こころ


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第216話 始まりの場所で

お待たせ致しましたー

 リオーネの外。


 だいぶ久しぶりだけど……門の外に出たら、本当に何もない。


 露店もだけど……建物とかも一切ない。のどかな田舎道っ感じかな?


 春先だから、少し肌寒いけど寒過ぎることはない。


 エリーちゃんに置いて行かれないように、付いて行くと……どんどん街道から奥へと進んで行くんだ。



「エリーちゃん、どこに行くの?」


「ちょっと奥だけど……あ、そうね? ケントには懐かしい場所かもしれないわ」


「僕?」



 どこだろう? と考えながら歩いてみたけど……なかなか思い出せない。


 僕がこの世界に来て……リオーネの街の外以外に行ったことがある場所って言えば。



「着いたわよ?」


「あ」



 エリーちゃんに言われて、思い出せた。


 僕とカウルが……オープンキッチンを使って、初めてポーションパンを作った場所。


 真っ青で大きな湖の前だったんだ!



「懐かしいでしょ?」


「うん! あの時以来だよ!」



 とりあえず、ここでピクニックにしようということになり……ピクニックシート代わりの大きい布を広げて、エリーちゃんととりあえず座ることにした。


 距離が空くのはしょうがない。……僕自身がヘタレで、まだこの子とは恋人でもなんでもないから。



「……あたし、依頼こなすついでだけど。ここには時々来てたの」



 エリーちゃんがそう言ったんだけど……ちょっと寂しそう?


 僕、あの時は助けられたんだって嬉しかったのに……エリーちゃんは違うのかな?


 でも、今の僕があるんだから、エリーちゃんは僕の恩人でもあるのに。



「……どうして?」



 だから、何か役に立てるのであれば聞きたい。



「……弁当忘れたって言ったでしょ? ちょっとのミスで情けないもんケントに見せたし。けど……君は、全然笑わずにポーションパンを食べさせてくれた。その後のこともあったけど、君はずっと変わらない。だから……自分を見つめ直すために、反省しながらここに来るの」



 振り返ってくれたけど、笑顔でも苦笑いだった。



「……エリーちゃんが言ってくれたから、今の僕らがあるんだよ?」


「……きっかけはね? でも、店をあそこまで切り盛り出来ているのは君らの実力」


「……そうだとしても、僕にとってエリーちゃんは恩人だよ」



 大切で、大好きなエリーちゃん。


 今ここで、告白して僕の恋人になってもらうのは簡単かもしれないけど。


 それは……違うと思う。


 お互いの心を交わしたことで、恋って成就するんじゃないかな?


 前世でも、まともに恋をしたことはないけど……恋って、素敵だと思った瞬間が大事だと思うんだ。


 僕の心を……エリーちゃんに伝えたい。


 けど、無理矢理は良くない。


 ここでの思い出を……反省じゃなくて、『嬉しい』に変えたいから。


 僕は、収納魔法から……紅茶の水筒だけじゃなく、ポーションパンも出したんだ。

次回はまた明日〜

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