第175話 神らも忘年会
お待たせ致しましたー
「…………自覚無し、か」
『あの者ですからね』
我は……水鏡越しに、今日もあちらを覗き見ていた。
ケントらは……今日は宴会を楽しんでいるようだった。
地球での『忘年会』に近い……ビンゴゲームとやらも実に面白そうだった。
しかし……宴会も終わった後に、あのエルフが面白い事をケントに聞いていたのだ。
赤髪の少女の事を……ケントが必要以上に好ましく思っているのではないかと。
「…………鈍感過ぎやしないか?」
ほぼそのままで転生させたとは言え……ケントの顔立ちは、我ら神には劣るが……なかなかに愛らしいものだ。このまま年を重ねれば、それなりのものになるだろうに……あれは、まったく自覚がない。
ラティストを見慣れ過ぎたせいで、余計に自覚がないのだろう。
今はエルフのルゥに鏡を出してもらっても……首を捻っているだけだった。
【……普通ですよね?】
【君は自覚を持て!? それか、女装似合うとか言われなかったか!?】
【なんでお師匠さんわかるんですか!?】
【女装が似合う顔をしているからだ!? だったら、顔が良いと言う事だ!!】
【えぇ?】
コントのようで面白いが……ケントがさらに首を傾げるだけだ。彼らに……自覚していなかった自分の恋心を暴かれても、あの少女……エリザベスに興味を持たれていないと思うだろうな?
それが、実は相思相愛だと分かったら……どんな反応をするか面白そうではあるが。
『……神よ。縁繋ぎを面白いと思わないでください』
「……何故バレた」
『顔に出ているからです』
シロトには……何もかもがバレバレのようだ。
我の御使ゆえに……長く時を共有しているから仕方がないだろう。
とは言え……せっかくの縁繋ぎをこのままにしておくのも良くない。
「ここで与えても良いが……シロト、ひとつ頼みたい」
『はい』
「年明け営業の時に、ポーションパンを買いに行く名目で……加護をケントに与えて欲しい」
『……前者が目的では?』
「……そう言うでない」
加護がついでと言うのもバレてしまったか。
しかし……ここで与えても、すぐに役立てるとは限らないのは本当だ。
とりあえず、シロトにも頷いてもらえたので……我らは、まだ保管していたポーションパンの残りで、二人だけの忘年会をすることにしたのだった。
数個程度だったが……あっという間に無くなってしまったのは物悲しい!!
早く……次のパンも食べたい!!
回復薬の流通事情も……あの国王らが動いているお陰で、少しずつだが改善の兆しが出ている!
周囲を影響させていくのだ! ケント!!
次回はまた明日〜




