第174話 弟子の恋事情
お待たせ致しましたー
(…………ほんとーに、自覚がなかったようだな)
前世が同じ世界の出身者であり。
今では……私が便宜上の師ではあるが、能力的にはケントの方がはるかに上だ。
液体と言う薬品でしか……製造が可能となっていなかった、『ポーション』を。
食べ物……しかも、日本の『パン』で製造を可能にした奇跡の青年。
スライムのカウル、創始の大精霊であるラティストがいることで……ただでさえ素晴らしい『ポーションパン』を一流のポーションにしていくのに。
控えめ……と言うか、謙遜しがちな態度が目立つケント自身。
どうやら……『恋』については、人一倍以上に鈍感なところがあるらしい。その相手であるエリーは……既に自覚していたらしいが、こちらは全然だったようだ。
ルゥが、茶化すまで……全くと言っていいくらい、自分の気持ちにも自覚すらしていないときた。
今は、ルゥにほっぺをつんつんされながらも……あわあわと慌てふためいていた。
「ぼ、ぼ、ぼ、僕が……え、エリーちゃんを!?」
「あんらぁ? あんなに仲良しじゃなぁい?」
「そ、そ、それは……と、友達……ですから」
「けーどー? アタシも居るからって、あーんな素敵な手袋も作るんでしょー?」
「…………に、似合うかと」
「実際似合っていたけどぉ? エリーちゃんの色でしょん」
「…………うぅ」
ルゥが、いい感じに引き出しているな?
私が口を挟まずとも……やはり、エルフでババアだが恋バナが好きなことは、女ゆえに仕方がない。
とは言え……弟子があのように慌てるのは、出会って数ヶ月程度だが見ていていくらか面白い。
「ケント。エリーは嫌なのか?」
「言ってません!」
「……答えは出ているじゃないか」
「あ」
私が横槍を入れれば、面白いくらいに肯定の発言をした。
本当に……世話の焼ける弟子だよ。
「ほーらほらぁ? 好きな子だったんなら……さっさと告白しちゃえば? 今日はもうあの子寝ちゃっているけどー」
「で、で、でも……僕なんかみたいな……童顔で平凡な男じゃ」
「どこがだ!?」
身なりを整えた……私と匹敵するくらいの可愛い寄りの顔ではあるが。
もう少し成長したら……イケメンともてはやされるくらいの逸材だ。床で寝転けている、美貌の精霊であるラティストを見慣れ過ぎているせいで自信がないのだろうが。
私がツッコミを入れると、ケントはぽかんと口を開けてしまったが。
「……え? 違うんですか?」
「ちゃんと鏡を見てよく自覚するんだ!!」
私は完全に生まれ落ちてからの転生なので……顔が選べなかったが。
あの異常にイケメンの神が……わざわざ同個体で転生させた理由は、ポーションパンのためだとは言え。
ラノベお決まりのような、無自覚で自信のないケントには……もう少し補正をかけて欲しかった!!
次回はまた明日〜




