第116話 貴族のお嬢さん②
お待たせ致しましたー
「…………」
買うことになってくれた、お貴族のご令嬢だと思う女の子。
以前来た時とは違う、見たことがないポーションパンを見て……しっかりと何を買うか、トングとトレーを持ちながら棚と睨めっこしている。
こんなにも真剣に選んでくれるから、僕は少し離れたところで待機している。ラティストとかは、今裏で計量をしてくれているはず。
まだこね上げとかは『オープンキッチン』を持ってる僕の許可がないと、機材は扱えない。メインの機材に変身出来るカウルは、出番が来るまでお昼寝中だ。
「……店長さん」
二人のことを考えていたら、女の子が僕に声をかけてきた。トレーの上はまだひとつもパンが乗っていない。
「はい?」
「効能はわかりましたが……どのような味のパンか、教えていただいても?」
「いいですよ」
たしかに……効能以外は具材と甘いかしょっぱい程度のポップしか書いていない。
食べ慣れている人ならともかく、滅多に来れない人は無理ないもん。
女の子は、まだ残っていたプレーンのフレンチトーストからお願いしてきた。
「キラキラしていて、綺麗なのですが」
「少し特殊なシロップ……樹液を加工したものを仕上げに塗っています。蜂蜜よりは香ばしい風味ですね?」
「……味はそのシロップのみ?」
「いいえ? パン自体にも、卵、牛乳や砂糖、生クリームを混ぜたもので味付けしてますので……ふわふわとろっとしています。焼きたてではないんで、ちょっともっちりしてますね?」
「……それが、フレンチトーストと言うものですか?」
「はい。他にもいちご味があるんですが、今は売り切れていますね」
逆に、フランスパンで作ったオレンジジュース味はあったので、似た調理法で作ったのは伝えた。
「なるほど。カレーパン……と言うのは?」
ちょうど一個だけ残っていたので、これも説明しますとも!
「香辛料をたっぷり使ったパンですね! 中に、お肉や野菜、香辛料を使った具材が入っていて……外側は揚げてあります」
「あげる?」
「……揚げ物、食べたことがないのですか?」
「あいにくと」
お貴族さんだと、揚げ物って食べないのかな?
ディルック様は……普通に買ってくれたけど。
「熱した油の中で、しっかりと火を通した料理のことです。サクサクしてたりするのでおすすめですよ」
「……じゃあ、このパンも?」
「効能はメモ通りですが、味は保証します」
「では、買わせてください」
などとやり取りを繰り返し……結構な量になったので、さすがにラティストにも来てもらってお会計したんだけど。
女の子は、ラティストが来たら……とっても可愛くほっぺをピンク色に染めた。
(……ラティスト目当て?)
けど、ナンパのお姉さんとかみたいに自己主張しないし……可愛い恋する女の子みたい。
とは言っても……ラティストはほとんど視線をスルーしているし、以前から恋愛には興味ないって言ってたからなあ?
女の子が帰って行っても、普通の接客対応しかしなかった。
(……頑張れー)
また来てくれるかはわからないけど、良い子だったからちょっと応援したくなったんだよね?
次回はまた明日〜




