第114話 令嬢の一喜一憂
お待たせ致しましたー
なんてことですの!?
(へ……陛下、御自ら!!?)
わたくしが憧れてやまない……ラティスト様がいらっしゃる、リオーネの街名物となりつつある『ポーションパン屋・スバル』。
そちらに……新たな情報が入りましたわ。
『エディ』と言う腕の立つ冒険者のような男が……荒くれ者を退けたと。
わたくしは気になり、影の者に確認を取らせたところ……あの『魔眼のレイザー』が親しく話をされていたとわかり。
おそらく……魔法で姿を軽く変えているが、我が国の若き賢王『エリシオン』様であることだと。
「……何故ですの」
考えられることはひとつ。
わたくしは言いたいことを胸に収め、お父様のところへ向かいました。
お父様は休憩をなされていたのか、執務室でのんびりと紅茶を飲んでいらっしゃったわ。
お茶菓子には……魔法鞄などで保管していたらしい、スバルのポーションパンの一つを召し上がっていらっしゃったが!
「おや? ルカリア」
「おや? じゃありませんわ!!」
この様子ですと、わたくしの怒りの理由もきっとわかっておいででしょうね!!
「うん?」
「お父様……陛下へお伝えなさいましたの!?」
「うん?」
「とぼけないでくださいまし! 『エディ』と名乗る男が、あのパン屋の店主ととても仲良しになられたと!!」
影からの情報ですもの。
ほぼ間違いありませんわ!!
『エディ』と名乗れるのも……この国では、なかなかいないはず。
王族の愛称を、気軽に臣下の家の者でも名乗れない風習があるからですわ。
「うーん。そうだね……私がパンを持って行ったら、異常に興味を持たれてしまってね?」
「そこまではわかりますわ! ですが……また単身でお忍びを?」
「あの方の得意分野だからね?」
「……はぁ」
わたくしと然程お歳が離れていらっしゃらない陛下。
まだまだお若いので、あちこちお出かけなさりたいのもわからなくありませんが。
何故……わたくしがあまり行くことが出来ない、あのパン屋へ行かれますの!?
お父様の指示で、わたくしもラティスト様にお会い出来ていませんのに!!
陛下御用達となれば……他の貴族もですけど、わたくしも行きにくいですわ!!
ラティスト様にお会いもしたいですけれど……あのパン達も美味ですもの。
あと少ししか、わたくしの亜空間収納にも残っていませんわ。
「陛下は今色々とお忙しいだろうから……しばらくは行かれないと思うよ?」
「……まあ」
落胆していると、お父様がそのようにおっしゃった。
となれば……ですわ!!
(『お掃除』に熱心な陛下が今行かれないと言うことは!!)
わたくしが行って良いということですのね!!
そうと決まれば、急ぎますわよ!!
次回はまた明日〜




