第101話 シェリーの実力
お待たせ致しましたー
許せない。
ジェフを侮辱したことを。
私を横取りとか、馬鹿なことはどうだっていい。
大好きなジェフを……馬鹿にする方が許せなかった。
かつてはCランクを維持しながらも……『聖槍のジェフ』と謳われた……今はランクBのジェフ=リジェクター。
私の幼馴染みで……憧れの人で。
それ以上に愛している人を貶すだなんて。
今はランクDの私でも……許せなかった。
だから、街中でも魔法は扱えないから……ジェフの手を離し、素早く彼を見下ろしていた男を片手で軽々と持ち上げた。
「……お、お、おい!? なんだこりゃぁ!?」
「……ジェフを貶したことを、訂正して」
筋肉だけの塊程度なら……ランクが低くとも、『魔闘士』と異名が一応ある私だったら、大したことはなさそうだ。
「じ……ジェフ? ま、まさか……聖槍、の!?」
「私達、『シリウスの風』を侮辱したのも同じ。……私はあなた達のような人達に好き勝手されるつもりは毛頭ないわ!」
それだけ言い切って、後ずさっている他のお仲間のところへ放り投げると……本当に大したことがなかったのか、あの男をぶつけただけで簡単に伸びてしまった。
「何事だ!?」
衛兵がやって来たので、騒ぎはさらに大きくなる……と思ったら、手出ししてこなかったジェフが全部彼らに事情を説明してくれて……そこで、私は自分のしでかした事に我に返った!
(わ……私!? 実力は知ってもらってるけど……女の子らしくないとこ見られちゃった!!?)
ジェフならともかく、見た目は細腕の女が……柄の悪い人を投げ飛ばしたのは、事実だ。
観客のように集まっていた人達には、拍手されても。
その事実に……急に恥ずかしさと落胆が同時に込み上がってきて。
思わず、私はジェフから逃げてしまった!
「お、おい!? シェリー!!?」
ジェフが慌てて呼ぶ声にも振り返らず、宿屋に戻ることもせず……とにかく、人混みをかき分けて……走って走って!!
ジェフに見つかりたくなくて、どこかに隠れようとしたら……誰かに腕を掴まれてしまった!?
「はぁい? シェリーちゃん、どうしたのぉ?」
いつのまにか、市場からギルドの……しかも、冒険者ギルドの近くまで走ってきてしまったようで。
ギルドマスターのルゥさんに……腕を掴まれるまで息切れている事にも気づかなかった。
「ぎ……ギルマス!?」
「どうしたのー? そんな真っ青で」
「……わ、た……し」
ギルマスにそうわかってしまうくらい……酷い顔をしているのに、気づかなかった。
それで気が抜けてしまったのか。
私は思わず、ギルマスに抱きついて……大声を上げて泣いてしまったのだった。
次回はまた明日〜




