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僕はヴォル! スキルは【回転】!  作者: 一狼
最終章 エピローグ
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097.僕たちの冒険はこれからだ!

 目の前に迫ってきたヴォーパルウルフの眉間に魔弾が穿ち、牙は僕には届かずその場に崩れ落ちる。


 反対から同時攻撃を迫ってきたもう1匹のヴォーパルウルフを下からの救い上げの斬撃で斬り飛ばし、返す剣で地面すれすれで這うように接近したヴォーパルウルフに突き刺し地面との串刺しにする。


「こいつら狼のくせしてヒトみたいな戦術を使ってくるな」


「伊達に致命(ヴォーパル)の名前は付いてないみたいだね」


「その一撃に全てを懸ける、ですか。モンスターながら天晴です」


 僕の隣では2本の大剣の魔剣を携え、同様に巧みな連携をして襲いかかってくるヴォーパルウルフを蹴散らすパトル。


 モコも如意金剛・千変万化を戦斧、槍、鞭と変化させながら、ヴォーパルウルフのその戦い方を称賛しつつ確実に屠っていく。


「それにしても……マジやべぇな。てっきり口だけかと思ったけど、ここまでの腕を持っているとは」


「口だけで為れるほどS級は甘くないのはパトルも良く分かっているでしょ」


「ぁん? なんだよ、ヴォルはあの女の味方なのかよ」


「あのね……、いい加減ロクウェル様――ロクウェルに突っかかるのは辞めなよ。僕が選んだのはパトルだよ。ちゃんと自信を持ちなよ。冒険者なら冒険者らしくちゃんと相手の実力を認めよう。ね?」


「お、おう……」


 相変わらずと言うか、なんと言うか、パトルはロクウェルが絡むと途端にポンコツになるからなぁ。


 そんな僕とパトルのやり取りを、モコはニマニマしながら見ていた。


 はいそこ、ニマニマ見ていないで助けてよ。


「うむ、吾輩の出番はないな……」


 少し後ろで援護をしようとしていたアリエスだが、ロクウェルの腕前が凄すぎてただ見ているだけの状態だった。


 そう、ロクウェルのパーティー加入のテストと言う訳じゃないけど、たった5年でS級になったその実力を見る為、シクスティーンの町から徒歩3日ほど離れた森で見かけたと言うS級モンスターのヴォーパルウルフの群れを退治しに来た訳だ。


 結論として言えば、ロクウェルはマジでS級と言わざるを得ない実力を得ていた。


 遠距離攻撃に関して言えば、僕たちを上回る腕前を披露してくれた。


 僕たちの援護は勿論の事、ヴォーパルウルフの急所をピンポイントで魔銃で射殺し、ここに来る途中のモンスターも魔弓で曲芸とも言える曲射で次々と仕留めていく。


 果てはその辺に落ちている石ころで空を飛んでいる鳥を無造作な投石で仕留めて食料へと貢献してくるまでだ。


「どうかしら? 私の腕前は。ヴォル様のパーティーへの加入を認めてくださる?」


「ああ、確かにその腕は認めてやるよ。だけどな、ヴォルはあたしのもんだ。お前にチャンスなんて一ミリたりともねぇよ」


「あら、それはどうかしら? 今のパトルさんの様子を見るに、それほどヴォル様との仲は進展していないと見受けるわ。それに5年前にも言いましたわよね? 私、諦めませんから。冒険者たるもの、最後まで諦めるべからず、ですわ」


「あ“あ”んっ!? あ、あたしとヴォルの仲がなんだってっ!? ラ・ラブラブに決まっているじゃねぇか! ロクウェルの刺さる隙間なんて無いんだよ!」


「うふふ、その割にはかなり動揺してますよ、パトル?」


「ああ、もう。ロクウェルはパトルを挑発しない。パトルもいちいち真に受けるなよ。と言うか、モコもアリエスもいい加減止めてよ」


「あら、これはヴォルさんの役割です。他人の恋路に口を挟むなんてとてもとても……」


「うむ、これは汝ヴォルが責任をもって対処する案件だな。吾輩たちはこの件に関しては部外者故」


 なんだよー、僕たち仲間じゃないのかよー。


 とまぁ、じゃれ合いはこのくらいにして……


「またしてもS級モンスターだね。しかも群れ」


「です。明らかに人為的な作為を感じるです」


「とは言え、こうも狙ってS級を連れてこられるものなのか?」


 僕の態度が変わったことにより、モコとアリエスもこの前からのS級モンスターの件に真面目に対応する。


 パトルとロクウェルは放置。今は2人ともポンコツ中だから。


 八岐大蛇、ヴォーパルウルフの群れ、その前はリヴァイアサンとゴブリンアポカリプス。


 まるでS級モンスターのパレードだ。


「【召喚術師】ならありえなくはないですけど、流石にS級モンスターをこう何度も召喚出来る人はS級冒険者でもいないです」


 S級冒険者に【召喚術師】の『百鬼夜行』って人はいるけど、彼女は現在西大陸の最西端の町アキンドーに居るからこれはペケ。


「だけど、絶対居ないとは限らないよね? これまで世間から隠れていたり、ロクウェルみたいに急に台頭してきたりというパターンもあるね」


「うむ、だが問題は目的は何か、だな。シクスティーンの町を襲うのが目的なのか、それとも魔脈に関する事なのか。あるいは吾輩たちが目的、ということもあり得るぞ」


 そうなのだ。


 S級モンスターは僕たちが行く先や、その近くに現れているのだ。


「っ!?」


「誰、ですっ!?」


 さっきまで誰も居なかったはずの空間に人が現れた。


 僕とモコが直ぐに反応したことで、パトル達も直ぐに戦闘態勢に入っている。


「いやぁー、流石S級パーティーだね。オジイ様に言われてキミ達をと言うか、キミを連れてくるように言われてオトモダチを襲わせたけど、まるっきり相手にならないんだもん。そう言う訳で、直接交渉に来ました」


 現れたのは、15歳くらいの少女だった。


 茶髪をツインテールに纏め、人やや小柄な懐っこい表情をする美少女。


 まぁ、美少女と言ってもパトルには及ばないけどね!


 因みにおっぱいはCと見た。


「誰だ、お前? と言うか、ヴォルを連れてこい、だと……?」


「何処の誰か知りませんが、ヴォル様は渡しません」


 パトルとロクウェルは敵意を超えて殺気を飛ばすまでツインテ美少女を睨む。


 僕が絡むと変わりすぎでしょ、2人とも。


 とは言え、こういう時は頼もしくもあるけど。


「ああ、自己紹介が遅れたね。ボクはトオカ・テンスプレート。邪教教祖ジュウザ・テンスプレートの孫だよ! オジイ様は是非ともヴォル・ヴォイドを、キミを連れて来いってさ!」


 なるほどね。


 ジュウザは僕のLv999に目を付けたか。


「と言う事は、この一連のS級モンスターはお前の仕業か」


「そう言う事。けどオトモダチはお気に召さなかったみたいだね。まぁだからボクがこうして直接来たんだけど」


「召喚でしか戦えない人が前線に出て私たちに勝てるとでも?」


「やだなぁー、【召喚術師】だからって戦えないわけじゃないよ? じゃなきゃわざわざ姿なんか見せないよ」


 パトルとロクウェルは僕の前に出て守る様にしてくれるけど、それって普通は逆じゃない?


 2人の気持ちは嬉しいけど、狙いは僕だろうと僕は前に出る。


「それで、直接僕を捕まえに来たトウカはこの5人を相手にすると? 凄い自信だね」


「いやぁん、トウカって呼んでくれた! うん、最初は強硬手段に出るつもりだったけど、キミを見て気が変わっちゃった!」


 ……ん? 何か嫌な感じが……


「ボクね、キミが気に入っちゃったの! ねぇ、ボクの恋人になってよ! そうすればオジイ様にも言い訳が立つし、ボクもハッピー! ね、いい事尽くめでしょ?」


「ダメに決まっているだろっ!」

「駄目に決まっているでしょう!」


「ええー、ダメなのー? ボクこんなに気持ちがトキめいたのは初めてなんだよ。うーん、じゃあさ、ボクもキミたちの仲間に入れてくれないかな? そうすればボクもヴォルと一緒に居られるし!」


「ふざけんな!」

「巫山戯ないで下さい!」


「ねぇー、ヴォル、キミの仲間、ボクの事嫌いなのかな?」


「……いや、そこでどうして嫌われないと思うのか、そこが不思議だよ」


「そうかなー?」


 うーん、ジュウザの孫だから故か、常識がちょっと通じない。


 とは言え、トオカの言う事が真実ならば、実力行使は無いと見ていいのかも。


 ……ただし、更なる厄介事の予感がヒシヒシ感じるけど。


「これはまたモテモテですね、ヴォルさん」


「これがモテ期というものなのか。興味深い」


 モコとロクウェル、トオカが言い争いになり、完全に蚊帳の外に置かれたモコとアリエスは僕を揶揄い始めた。


 勿論、完全には警戒は解いていないけど。


「……っ、2人とも他人事だと思って暢気に言わないでよ」


「え? 他人事でしょ(だろ)?」


 くっ……、味方がどこにもいない!


 もう完全に諦めモードに突入していた僕の気を引き締めるかのように、更なる事態の変化が訪れる。


 僕たちの目の前に5mもの巨大な扉が現れたのだ。


 ええい、次から次へと。今度何なんだよ。


「おい、これお前の仕業かよ」


「え? 違うよ。ボクじゃないよ?」


「本当にですか?」


「うん、ボクのオトモダチ召喚は魔法陣だもん」


 真っ先に疑われたトオカだったけど、どうやら違うみたい。


 そんな僕たちを余所に、扉が開き中から2人の男が現れた。


 1人は中肉中背の赤髪が逆立った男。


 もう1人は鍛え上げられた体を持つ偉丈夫。


 腰までの黒髪の長髪でその鋭い眼差しはかなりのイケメンに見える。


「お、ここがG4y世界か。っと、丁度いいところに原始人の原住民が居たぜ。ビャクさん、こいつらを締め上げてもいいッスよね?」


「構わん、隙にしろ」


 誰が原始人だよ。


 と言うか、明らかに喧嘩を売ってるよね?


「と言う訳だ原始人ども。知っていること答えれば命だけは助けてやるよ。あ、女どもだけな。男は要らん」


 逆立った髪の男が不遜な態度で言い放つ。


 偉丈夫の男――ビャクは手を出さないみたいだ。


「素直にはいそうですかと答えると思うのか? だとしたら余程脳みそがお花畑だな」


「パトルさんに同意ですわ。女性を誘う礼儀がなってません。ヴォル様を見直して出直してきてください」


「うん、ボクもキミたち嫌い。なんか生理的に受け付けないよ。オトモダチ以下だね!」


 あー、挑発するのは良いけど、まだこちらは相手の情報がほとんど入っていない状態だと言う事を忘れないでね?


 もしかしたら僕たちが敵わない相手なのかもしれないんだから。


 と言うか、しれっと僕たち陣営に加わって口撃しているね、トオカ。まぁいいけど。


 おそらくだけど……ここがG4y世界とか言ってたから、別の世界――異世界の人間と予想できる。


 女神Alice様の話だと、僕たちの世界の他にも幾つもの世界を創っていたと言うから、彼らはその異世界から来たと。


 で、僕たちを原始人と見下していることから、向こうの技術はかなり進んでいる可能性もある。


 ……これって実はかなりピンチ、なのでは?


「……ほぉ、よっぽど酷い目に合いたいらしいな。だったら望み通りにしてやるぜ。このレン様を相手に馬鹿にしたことを後悔させてやる! ヒィヒィ言わせてやるぜ、このレン様の肉棒でな!」


「「「うわ、下品」」」


「どっちが原始人だっての」


「思考が下半身と直結してますね。猿ですか?」


「それはお猿さんに失礼だよ」


 容赦ないなー、3人とも。


「こ、このくそアマ共が……!」


「悪いけど、明らかに敵対行動を見せているから、反撃されても文句は言わないでよ?」


「はっ! 原始人共が俺たちに敵うとでも言うのか? 滑稽だな!」


「それはやって見なければ分からないと思うよ」


「……何か嬉しそうだな、ヴォル」


「そう? そうなのかも」


 そう、ピンチのはずなのに、僕は結構ワクワクしていた。


 突然来訪した異世界人。


 向こうの世界は未知に溢れている。


 その異世界との交流は何をもたらすのか。


 S級冒険者となって僕たちはこの世界では安定してしまった。


 ドキドキワクワクが失われて久しい。


 だけど、ここで新たな冒険が幕を開けた。


「そう言えば自己紹介がまだだったね。僕はヴォル。スキルは【回転】!」











ヴォル:因みに、レンとビャクの2人はフルボッコにされて異世界へ追い返されました。

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― 新着の感想 ―
[一言] 祝、100話。 そして最終回、完結お疲れ様でした。今回も楽しませて頂きました。 Sランク連戦を裏で操っていたジュウザの孫トウカさん(C)、ヴォル争奪戦に参加。 異世界から下半身と思…
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