イースサイド15
う、うーん。
大分朝早くに目覚めてしまった。
あ、何かチャットが来てる。
えーっと、
チャット
「おい、イース、起きてるか?」
「おーい」
.
.
.
「世界樹さんが死んだ」
「詳しい事は後で説明する」
「とりあえず帰って来い」
そう、書かれていた。
え?
世界樹さんが死んだ?
僕の頭の中にはその言葉が渦巻き、他の事なんて殆ど考えられ無くなった。
どういう事かは分からないけどとりあえずあの国へ帰ろう。
それだけ考え、僕は早朝にこの国を出た。
………………
…………
…
この国に着くまでの事は覚えて無い。
かなり思考も朧気だったし。
だけどこの国に着き、世界樹さんの状態を見た瞬間察した。
世界樹さんは根本からぽっきりと折れてしまっている状態がここから見えた。
ああ、本当に居なくなってしまったんだと。
そう改めて現実を突き付けられた。
………………
…………
…
「あ、イースさん」
そう門番の人は言った。
だが、僕は返事をせずにそのまま中に入った。
中には沢山の人達がその大樹の前に立って居た。
中央にはミルとナイトが立っており、僕もその場所へとぼとぼと歩いて行った。
「イース、来たか」
「うん、それで、何があったの?」
「ああ、それがな……………」
ナイトから事情を聞いた。
そしてそれを聞くたびに自分のせいだと卑下してしまう。
襲って来たのは赤い眼をした集団。
サイルに聞いていた人達だ。
あの時、その情報を詳しく聞けば、とそう思ってしまう。
そしてその人達が襲って来た時間は僕が寝た数十分後。
しかもかなり惜しい所まで攻めていたみたいで僕が居れば世界樹さんが死ぬ事も無かったかもしれない。
更にその首謀者があの時にソロプレイヤーと名乗ってやって来た人だと聞くじゃ無いか。
ナイトが淡々とその時の内容を話す程、僕のせいだという事が裏付けられていく。
「さて、あの時起こった事はこんな感じだ。それじゃあ最後に世界樹さんの残したメッセージを聞こう」
「メッセージ?」
「ああ、メッセージだ」
「ああ、世界樹さんの残留思念がどんなものか見てみようと思ったらそれが思念になっていてな」
「せっかくだしイースも含めた全員で聞こうと皆待っていたんだ」
「そうなんだ………」
皆…………。
「じゃあ言うぞ」
「さて、このメッセージを見ていると言う事はわしはもう死んでいるのじゃろう」
「じゃが、別にお主達が責任を感じる必要は無いぞ」
「わしはこの森を守りたいという欲の為に自分を犠牲にした。すなわちわしの自分勝手なのじゃ」
「じゃからわしの死を気にする事は無いぞ」
世界樹さん…………
「さて、最後にわしからのプレゼントと頼みがある」
プレゼントと………頼み?
「まずプレゼントじゃが、まだ人化していない者が居たよな?」
人化していない人?
えーっと、
「とりあえずあの鹿さん来てくれますか?」
するとプレイヤーの団体から一匹の鹿がやって来た。
「わしの切り株に立ってみておくれ」
そしてその鹿はその切り株に立った。
その瞬間!
その鹿はみるみる内に人へと姿を変えたでは無いか。
って!
「えーっと服服!」
しかし、鹿の状態で人化したのだ。
服を着ている筈が無い。
すなわち裸だ。
とりあえず僕は服を創り出し、その人に着させようとした。
すると、その人は泣いていた。
「もう私、元の身体に戻れないって、うう………」
僕はそっと近くに服を置いて離れた。
「そして最後になったのじゃが頼みとしてはわしの子供を植えて欲しいのじゃ」
子供!?
え、世界樹さん子供居たの?
「わしの樹の中に種があるから植えてくれ」
「さて、それでわしの言う事は終わりじゃ、わしはもう面倒を見る事は出来ないのじゃが立派に育つのじゃぞ」
そして世界樹さんの最期の言葉は終わった。
その後はとりあえず各自家に帰って気持ちの整理を付ける事にした。
僕も家に帰ってベッドに飛び込んみ、そこで僕は世界樹さんの死への衝撃の我慢が出来無くなり、後悔の嗚咽を漏らした。
「う、うう、あの時あの人を僕が歓迎すれば良かったのかな?」
「そうすれば世界樹さんは死なないで済んだのかな?」
「ううん、そもそも人間プレイヤーと敵対するのが間違いだったのかもしれない」
「もし敵対しなかったらあの時あの人を殺す必要も無かったし………」
「でも今更そんな事言ったら絶対内部分裂するし………これから僕は何をすれば良いの?」
「教えてよ、世界樹さん………居なくならないでよ………一人でこの国を支えて行く自信なんて無いよ………」
そしてそんな事を呟いている外では、
「ごめんな、翠」
そう呟くナイトが居た。




