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ダンジョン発掘物語   作者: Y.A


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第二十九話

「第一回ダンジョン物産展へのご招待ねぇ……」


 国内や一部海外ダンジョンへの助っ人稼業も予定通りに進み、明日からはお休みなので家に戻ると、ポストに一枚のダイレクトメールが入っていた。


 読むと、何かイベントの招待状であるようだ。


「おおっ! ダンジョン物産展ではないか!」


「知っているんだ」


 空子なら、知っていても不思議は無い。

 見た目が若い身空で、誰よりもデパ地下や特別催事が。

 特に食べ物関連のイベントが誰よりも大好きな、色気よりも食い気の元キツネなのだから。


 百万年も生きているので、精神が基本おばさんなのであろう。


「あっ、ダンジョン物産展だね。昨日、テレビでやってたよ」


「ワシも見たぞ」


 俺は見なかったのだが、昨日の夕方のニュースで特集されていたらしい。

 ダンジョンで獲得可能な、肉、野菜、魚などの食材。


 全て魔物からドロップするのだが、ダンジョンによっては階層全てが湖だったり、海だったりする場所もあり。

 そこで水生生物に似た魔物を倒すと、海藻や魚介類などが。


 一面山野や畑の階層もあって、そこで野菜やキノコに似た魔物を倒すと野菜やキノコがドロップするのだ。


 大きくて、味が良くて、種類によっては疲労回復や状態異常回復などの効果もあり。

 何より、マナの影響で常温で半年以上も、冷蔵すると一年近くも品質が落ちなかった。


 当然、食品業界の目に留まり、各メーカーは競って新商品の開発を行い、料理人はダンジョン産食品を調理して出す店舗の経営に挑戦する。


 ダンジョンがある市町村では、それを生かして町興しを兼ねた特産品の売り出しなども行っているようだ。


 そうなる事は、誰にでも予想はし易い物だ。


 当然、大井山ダンジョンを擁する我が県においても、同様のイベントが開催されるようだ。


「魔物の肉を使った豪華焼肉弁当、六十三~六十五階層に広がる大井山湾で取れた海の幸を使った海鮮丼に、五十七階層でドロップする果物をふんだんに使ったオリジナルスウィーツも。ゲストプロデューサーでラーメン評論家の○○氏が考案したオリジナルラーメンもあるよ。何か、ベタなイベントだな」


 それでも、珍しくて美味しい食材ばかりなので、他の地域で催されたイベントは大盛況であったそうだ。

 ダンジョン産食品なので、値段の方は相当なのであったが。


 客数、客単価、利益率と。

 全てが優秀なので、参入する人や企業は恐ろしい勢いで増えているようだ。


「義信、支度をせい」


「って! やっぱり、行くのかよ!」


「行くに決まっておろうが! これに行かずして、デパ地下・催事女王たる我の威厳が保てるものか!」


「いや、お前はダンジョンの女神だから」


 一緒にパーティーを組むと劇的に、同時刻に同じダンジョンに居るだけでもレベルアップ効率やアイテムドロップ率が上昇するので、上位の知っている冒険者達からは空子は女神扱いされていた。


 普段の言動を見るに、ダンジョン内だけの補正と思われるのだが、実際にダンジョン外ではこんな物であった。

 とにかく良く食べ、それでもなぜか太らないのだ。

 何でも、魔法を使うとカロリー消費が増えるからなのだそうだ。


 そういえば、柔道を止めた直後から体重管理に気を使っていた俺であったが、今ではそんなに苦労する事なく学生時代の体型を維持できていた。


「とにかく、連れてけ! 連れてけ! 連れてけ!」


「五月蝿いなぁ……」


 まるで子供のように駄々を捏ねる空子に、俺は思わず溜息が出てしまう。


「私も行きたいし、連れて行ってあげようよ」


「せっかくの休みだしな」


 せっかくの休みなので、家でボーっとしているのも何だし。

 暇潰しに出かけるのも悪くないであろう。


「ワシも行くぞ」


「善三さんは、ダンジョン産食品で作ったお酒が目的ですね。わかります」


 あとは、酒のツマミになる物がメインだと思われる。


「瞳子さんは、東京にデートに戻った。今泉は、家で泣いていると」


 今まで執拗に瞳子さんにアプローチをかけていた今泉であったが、彼の野望は成就しなかった。

 その欠片も感じられなかったという外野の意見は置いていくとして、瞳子さんには結婚を前提として付き合っている恋人が居るのだそうだ。


 あまりに今泉が空気を読めないので、瞳子さんは最終カードを切ってきたのであろう。


 その今泉は、失恋のショックで家で泣いていると思われる。

 というか、モテないわけでもないのだから、早く次の恋を探せば良いのにと思ってしまう。


 空子は、『失恋のショックを治すポーションは無いのぉ。恐慌や萎縮を治す魔法も効果が無いであろうし』と言っていたのだが。


「じゃあ、明日は四人で物産展に」


 そんなわけで、翌日俺達はダンジョン物産展の会場に来ていた。


 会場は、県庁所在地の郊外にある文化会館であった。

 ご他聞に漏れず、税金から多額の予算を投じて建設はされたが、稼働率と維持費に問題があって市民団体から批判の対象にされていた施設だ。


 まさか、ダンジョンのせいで日の目を見るとは、市民団体の連中も予想外であったと思うが。


「無駄な箱物の極地じゃの」


「だが、その箱物が無ければ物産展は開かれなかったと思うが」


「無ければ、他の場所を借りるであろう」


「正論だな」


 会場内に入ると、数百にも及ぶブースと多くの客で賑わっていた。

 個人商店や飲食店での参加に、大小様々な企業も新商品を投入し、来た客に試食を進めて購入を促す。

 

 商品は飛ぶように売れ、会場は活気に満ち溢れていた。


「おい、空子」


「全部買おう」


「取り敢えず、落ち着け」


 ダンジョン産の食材を使った多くの種類の弁当に、加工食品、和洋のお菓子に、ケーキやパフェなどのスウィーツ。

 お酒や、ダンジョン産の素材で作ったアクセサリーや服まで売られているようだ。


「なあ、これも買おう」


「五月蝿いなぁ……。一通り見てからでも遅くはないだろうに……」


 試食や、店員さんからの呼びかけの度に止まる空子を引き摺りながら、俺達は地元の中小企業が出店をしているスペースに到着する。


「そうだよね。こういうスペースを贔屓にしないと」


 これ以上うちの村の過疎化が進んでも困るので、ここは地産地消に協力すべきであろう。

 さすがは、俺の嫁である。

 良い事を言うと俺は思っていた。


「なあ、これも買おう」


「……」


 空子の方は、相変わらずであったが。

 まあ、地元企業のスペースが気に入ったのは良しとしてだ。


「ドラゴン肉のステーキ弁当か」


 そして、そのスペースの中で一番高い商品を売っているのがここであった。

 高価なドラゴンの肉を焼いて、御飯の上に乗せた弁当を販売しているようだ。


「でも、コスト的に大変そうだな」


 ドラゴンの肉はとても高価なので、値段は高くても利益率はそうでもないはず。

 売れ残れば損失になるので、大変であろうと俺は思っていた。


「そうなんですよ。でも、ここでドラゴンステーキ弁当なら増山商店だと名を売るためにも」


 俺の独り言に反応して、そのスペースを管理している責任者が話しかけてくる。

 

「冒険者から買い取るにしても、ドラゴンの肉は安くないだろうし」


「お客さん、冒険者なんですか」


「ああ、一応って!」


 その責任者と顔を合わせると、その人物には見覚えがあった。

 身長はニメートル近く、年齢は俺よりも二歳ほど若い。

 顔は目が円らで可愛いのだが、体が着ているTシャツの上からわかるほどマッチョであった。


「あれ? 大塚先輩ですか?」


「お前、増山か。全然、変わらないなぁ」


「知り合いなの?」


「ああ、高校時代の後輩でな」


 増山清輝は、俺と同じ高校の二学年下の後輩であった。

 同じく柔道部に所属し、成績が微妙な俺とは違ってインターハイや全国大会でも活躍し、オリンピックの強化選手にも選ばれていた逸材であった。


「ほう、義信よりも遙かに凄い選手であったと」


「うっさい、自覚はしているから黙れ」


 空子の言う通りで、俺は微妙な柔道選手であったのだ。


「あの……。大塚先輩は、後輩の面倒見が良い優しい先輩だったんですよ」


 増山から優しいフォローが入るが、こいつは強い選手に良くいる傲慢な部分が無くて、みんなに人気があったのを思い出す。

 

 だが、そんな彼をある不幸が襲う。


 高校三年生の時に、父親が脳溢血で急死してしまったのだ。


 彼の実家は小規模の弁当屋で、しかも長男で跡を継ぐ事を期待されていた。


 父親が生きてさえいれば、彼がもう少し柔道で活躍する事も可能であったはず。

 実際にその才能もあったのだが、彼は推薦で入学が決まっていた大学進学すら蹴って、弁当屋増山商店を継いだというわけだ。


「なるほど、二代目はダンジョン産食品に目を付けたと」


「はい。普通に弁当を作って売っても、うちのような零細は……」


 あまり見た目は変わっていなかったが、やはり二代目社長としては苦労の連続であるらしい。

 彼の表情には、少し苦悩の色が浮かんでいた。


「大塚先輩、もしお昼がまだならうちの試作品でもいかがですか?」


「良いのか?」


「我も、食べるぞ! 試作品を早く!」


 そして、やっぱりこういう時にも空気が読めないのが空子という女なのであった。





「おおっ! どれもこれも美味しいのぉ」


「お前、良く食べるよなぁ」


 数年ぶりに物産展で再会した後輩が試作品を食べさせてくれるというので、俺達は参加企業用のスタッフ専用ブースでお昼をご馳走になっていた。


「でも、本当に美味しいよね」


「ふむ、これなどは年寄り向けに脂っこさが抑えてあって良いの」


 理沙や善三さんにも、増山商店の試作弁当などは好評なようであった。

 だが、ただ美味しければ商売なるほど、この世界は甘くは無いのだ。


「なあ、増山。この材料と調理方法と予定売価で利益は採れるのか?」


「正直、利益率は低いです……」


 増山の表情は暗い。

 ダンジョン産食材を使った商売は、売り上げを増やすチャンスではある。

 だが皆が同じ事を考えるし、どうしても大企業の方が有利に商売を進めてしまう。


 増山商店のように、零細企業には厳しい側面もあるのだ。


「何とかして利益率を上げないと」


「それについて、大塚先輩に相談があるのです」


「相談?」


「はい、私をダンジョンで鍛えて欲しいのです」


 ダンジョン産食品は、基本的にそれを得た冒険者が買い取り所に卸すか、裏技で食材は自分で直接に売っても構わない事になっていた。


 なので大企業は、半ば専属の食材専用冒険者を揃えて仕入れ価格の節約を図っている。

 冒険者側も、買い取り価格が落ちるわけでもないので得意先である大企業に売却するのだ。

 買い取り所を通さないと税金の計算が面倒なのだが、それも企業側がサービスでやってくれるらしい。


「買い取り所の中間マージンが減りますけど、大企業が儲かれば税金を払うという名目で、国は何も言わないんですよね」


「その辺は、大企業が有利なのか」


 ただ、別に個人経営のレストランなどでも懇意の冒険者から食材を買ったりするので、一概に不利との言えないのが現実であった。


「もしかして、増山君が自分で食材をゲットするつもりなの?」


「はい。うちのような零細企業が生き残るには、他の人とは違う事をしないといけないんです」


 増山は、理沙の問いに己の覚悟を語っていた。


「ダンジョン産食材の確保で一次産業、加工の二次産業、販売の三次産業で。究極の六次産業を目指します!」


「増山なら大丈夫だと思うけど、万が一の事もあるからな」


 従業員の生活に責任がある社長が、死の危険もあるダンジョンに潜る。

 俺からすると、少し手を貸すのに躊躇してしまうのだ。


「大塚先輩。正直なところ、うちの経営はあまり良くないので時間が無いんです。このまま座して滅ぶよりは……」


「増山がそこまで覚悟をしているのなら」


 思えば、彼の父親が死んだ時に葬式に顔を出したくらいで、俺は彼に何もしてやれていなかった。

 自分の事で精一杯だったからなのだが、多少の罪悪感が無かったわけでもないのだ。


「喜んで協力はさせて貰うけど」


「増山君や。冒険者は、複数でパーティーを組むのが基本じゃぞ」


 善三さんの言う通りで、いくら増山自体のキャパが優れていても、一人でダンジョン探索など不可能であった。


「メンバーについては、高校の同級生に心当たりがあります」


 というか、みんな増山のように父親が急逝したとかではないが、零細商店や企業の跡取りで危機感を抱いている連中ばかりなのだそうだ。


「じゃあ、三日後の朝七時に大井山ダンジョン前に集合な」


「大塚先輩、ありがとうございます」


「のう、増山とやら、この味噌ダレマッドオーク焼肉丼のお替りを」


「あの、大塚先輩……」


「こんなのでも、ダンジョン内では役に立つから……」


 増山は、こちらの話に一切加わらずに試作品の弁当を食べ続けていた空子を見て、俺に心から不安そうな表情を向けるのであった。





「大塚先輩!」


 ダンジョン物産展が終わってから三日後、俺達は先日約束した増山達に冒険者としての基礎を教えるために、大井山ダンジョン前で待ち合わせをしていた。


「よしよし、言われた通りに装備を整えて来たな」


 自分が経営する零細弁当屋に、格安でダンジョン産食材を仕入れるため。

 彼は、自分が冒険者となる決意をしていた。


 危険な気もするが、これも大手企業などと対等に渡り合っていくためだと、増山は決意したのだそうだ。

 

「政府指定の、強化プロテクトか」


 日本は、お上が強い国である。

 冒険者という職業が認められつつある今、官僚は天下り先を確保するため。


 じゃなく、冒険者がなるべく安全にダンジョンに潜れるために、安全基準のような物を設けていた。

 こんな装備をすると安全で、初心者は最低これだけは準備した方が良いですよとか。


 いつの間にか、ダンジョン安全協会なる外郭団体が誕生していて、そこがテレビでCMを打つ。

 明らかにアレな組織なのだが、CM料を貰っているテレビはなぜか天下り批判をしなくなった。


 警察が、公営ギャンブルやパチンコ屋に飼われてる理屈と同じなのであった。


 推薦装備に関しても、多分○ズノなどは天下りを受け入れるようになったのであろう。


 まあ、日本とはそういう国なのであるが。


 なお、ダンジョン安全協会は厚生労働省の管轄にある。

 加えて、類似した組織に冒険者安全協会なる外郭団体も存在していた。


 ここは、経済産業省の管轄にあった。


 他にも、総務省の管轄にあるダンジョン労働安全衛生局とか、防衛省の管轄にある冒険者管理登録協会とか。


 あと、最近では冒険者を資格制にしたり、初心者教育を義務化してはどうかという議論も出ている。

 それなりの数の死者が出ているので理論的には正しく、多分近い内にそうなるのではないと言う話になっていた。


 どこの官庁で仕切るのかで、水面下で壮絶な死闘が展開されているらしいのだが。

 多分、似たような名前の資格が複数誕生するのであろう。

 

 そして、資格受験費用や初心者講習受講料、登録料に更新料に年会費などで、また外郭団体と天下り先と増えるわけだ。


 ビバ! 官僚天国日本!


「駄目ですか?」


「いや、普通にそのプロテクトは優れているから」


 俺達はファーマー装備であったが、初心者ならばそのプロテクトが一番なのだから。

 何しろ、あの石刃さん推薦の装備であったし。


「ねえ、増山君。お友達を連れて来るって聞いたけど」


「はい」


 理沙は、増山とパーティーを組む友人達に興味津々のようだ。


「大塚先輩も、顔くらいは知っているかと」


 高校時代のクラスメートなのだそうだ。

 みんな、高校や大学を出た後に親の仕事を継ぎ、業種は食品関係で、地元零細で経営環境はあまり宜しくない。


 よって、自力でダンジョン産食材を確保し、利益を増やそうと言う事のようだ。


「紹介しますね」


 増山は、少し離れた場所に居た三人の同年代くらいの男達を紹介する。


「井川仁志っす。高校時代は、ラグビー部にいました。実家は、ケーキ屋っす」


 一人目は、増山よりも背が高く、体型もガッチリしている。

 坊主頭の青年であった。


「確か、ラグビー部のエースだったよな?」


「はい」


 進学して活躍する事を期待されていたが、ケーキ屋をしていた父親が病気で無理が出来ないらしく、高校卒業後にケーキ屋で働き始めたそうだ。


「ダンジョン産の果物や、魔物の生乳をゲットしてオリジナルスゥィーツを作るっす」


 二人目は、俺とそれほど身長は変わらないが、体重は百二十キロ以上はありそうであった。

 体型を見るに、多分相撲経験者であると思われる。


 というか、彼も有名人であった。


 うちの高校には相撲部があり、彼は成績優秀で相撲部屋からスカウトも来ていたと聞いていたからだ。


「確か、宇多だったよな?」


「はい、元相撲部の宇多大樹です。実家の総菜屋を継いでいます」


 高校の近くにある商店街にある、総菜屋の三代目なのだそうだ。

 だがご他聞に漏れず、その商店街はシャッター商店街になりつつある。

 そこで、新しいお客さんを呼ぶために、ダンジョン産食材で新しい惣菜を作ろうと参加を決意したのだそうだ。


「みんな、孝行息子だね。ええと、君は?」


 理沙は、若いのに苦労している後輩達にえらく感心しているようだ。 

 そして、三人目だが。


 身長は、増山よりも少し大きく二メートルは超えているであろう。

 引き締まった鍛えられた体に、鋭い目付きと。

 なかなかに、隙の無い身構えをしている男であった。 

 

「江頭純也です。寿司屋の四代目です」


 江頭は、歴史は古いが経営が傾いている寿司屋が実家なのだそうだ。

 

「もしかして、六十三~六十五階層にある大井山湾か?」


「はい、寿司屋は競争が激しいんです。ここは、ダンジョン産海産物を握って勝負しようかと」


 確かに、最近良くテレビで紹介している、回転寿司屋のような店舗と高級店の狭間にあるような江頭の実家が生き残るのは、大変に難しくなっている。


 何か、お客さんを呼べる特徴をという事なのであろう。


「そうか、良く考えているんだな」


「増山達が声をかけてくれたんです。持つべき物は友達ですね」


 少し見た目は怖いが、江頭はとても良い奴のようだ。

 でなければ、増山達も友達付き合いはしていないであろうし。


「ところで、良い体をしているな。細目だから陸上部だったとか?」


 随分と目立つ男なのに、俺は彼をグラウンドや体育館で見た記憶がなかったのだ。

 そこで、彼に元の所属部を聞いてみる事にする。


「はい、自分は天文学部で」


「えっ? 天文学部?」


 まさか、最後のオチで天文学部がくるとは思わなかった俺達であった。

 というか、どう見ても天文学部には見えないのだが。


「星空の撮影で、山奥とか入るんで」


「そうなんだ……。そろそろ入ろうか?」


 こうして俺達は、食材専門冒険者パーティーの育成に関わる事になるのであった。


「なあ、義信」


「何だよ? 空子」


「あの連中、何か暑苦しい」


 相変わらず、空子は空気が読めていないようであったが。

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