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ダンジョン発掘物語   作者: Y.A


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第十三話

「はあはあ……」


「やっぱり、ドラゴンは強いね」


「それは、魔物の王とも呼ぶべき存在じゃからの」


「うちのパーティーで倒せるかの? 撤退も、視野に入れないといかんだろうに」


 遂に到着した、通称空子のダンジョンの百階層。

 そのエリアは、今までのどのエリアよりも広く天井も高かった。

 更にそこを徘徊する、小型竜ワイバーンを始めとする強力な魔物達の姿。 

 苦労して倒すと、今までにとは比べ物にならない金額で売れそうな金や宝石を含んだ鉱石に、下手なポーションなど比べ物にならない回復効果を持つ竜の肉に、高価な素材である血や骨や牙や皮に鱗。

 アイテムも、ちぎれて無くなった体の一部すら復元するする効果があるレアポーションに、どんな状態からでも魔力も含めて全てを回復するエリクサーなどと。


 その危険に相応しい報酬が得られる階層となっていた。

 さすがに、この百階層の探索には数日を費やし、いよいよその奥で待ち構える全長二十メートルほどのドラゴンと戦う時が訪れる。


 その恐ろしいまでの咆哮に、一撃で体がバラバラになりそうな尻尾による一撃。

 更には、体の原子一つ残さずに消滅させられそうなブレスと。


 その脅威に、俺達は七ヶ月ほどかけてレベルを上げた身体能力と魔法で対抗する。

 五刃フォークがドラゴンの体の各所を貫いて出血し、己の体を傷付けた侵入者に激怒したドラゴンはブレスを連射する。


 しかしそれは、パーティーで一番の年寄りのバリア魔法によって防がれる。

 更に、女性二人による上級魔法によって、更にその身を切り裂かれ、体の一部を凍らせていた。


 次第にダメージが蓄積し、怒りに我を忘れそうになるドラゴン。

 しかし、彼は最後の理性である事実に気が付く。

 それは、もう一人の侵入者の動向がわからなくなっていたという点をだ。


 次第に焦りを覚えるドラゴン。

 そして遂に、その人物の動向を己の身で知る事となる。


 彼は、飛翔の魔法によってドラゴンの上空にいた。


「ドタマ刺されて死ねや!」

 

 その男からの、五刃フォークによる渾身の一撃がドラゴンの脳に致命的なダメージを与え、遂にドラゴンは最後の断末魔と共に息絶える。

 そしてこのダンジョンのルールに従い、あとは光の粒子となって消えていく。


 その跡には、人間の大きさほどの鉱石に、直径一メートルほどの紫色の魔石。

 更に、甕に入った血、大量の皮に鱗、骨、肉などが残されていた。


「おっ! 来た来た!」


 レベルアップも、さすがはドラゴン。

 一度の戦闘で、三つもレベルが上がる。


 続けてアナライズで調べると、ステータスに二つの称号が加えられていた。


『最初にダンジョンを攻略せし者』


 全能力値にプラス10%。

 他のダンジョンにおいても、レアアイテムのドロップ率が大幅に上昇。


『ドラゴンスレイヤー』


 全能力値プラス30%。

 竜が使う威圧無効、咆哮による萎縮無効。


「だってさ」


「いやいや、もうドラゴンとか嫌」


「全面的に合意する」


 他の魔物など比べ物にならないほど強く、理沙の言う通りに二度と戦いたくなかった。

 得られる物は多かったが、その分危険も大きかったからだ。


「この空子のダンジョンは無事にクリアーされた。これで、自由に好きな階層に行けるし、帰還の魔法が使えなくても自由に戻れもする。ドラゴンも復活はするが、ここに来なければ戦う必要もない」


「それって、クリアーした利点とかあるのか?」


「欲しい物を取りに行く階層がわかる」


「なんじゃそれ」


 しかしながら思うに、何となく始めたダンジョン探索であったが、クリアーするとふと思ってしまうのだ。

 これから何をすれば良いのかと。


「レベルアップかな?」


「終った○ラクエで、レベルを上げているようだな」


 この八ヶ月で得た物も多い。

 だが正直、売るのに困る品ばかりではあった。

 現在、世界中でダンジョンの攻略は進んでいたが、その成果は各国の政府に買い取られていて、未だに民間には出回っていない。


 鉱石なども、政府から企業が落札する仕組みになっていたのだ。


「チマチマと金でも売っていれば、生活は可能じゃの」


 善三さんの言う通りで、他にも農業もあるのだ。 

 目立たないように、家族でささやかに暮らす。


 こういう人生もアリなのであろう。


「とにかく、もう家に戻るとしようかの」


「賛成」


 ようやく百階までをクリアーする事に成功したのだが、実はここに大きな罠が潜んでいた事を俺達は後になってから知る事となる。

 

 日本政府が、自衛隊を使って世界で最初に富士山麓のダンジョンを攻略した直後から。  

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