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ダンジョン発掘物語   作者: Y.A


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第九話

「そういえばだ」


「どうかしたの? 義信ちゃん」


 農業とダンジョン探索を、交互に行うようになってから二ヶ月。

 今日は、四十階をクリアーしたお祝いを三人でしていた。

 とは言っても、明日もまた朝から農作業なので家でご馳走を作って食べているわけだ。


 メニューは、田井中家と大塚家で取れた野菜類と、ダンジョンで獲れた謎肉類を使った料理となっている。

 米は、同じ村に作っている人がいるので、物々交換で手に入れるのが常であった。


「この肉って、食べて大丈夫なのかな?」


「そう言われると……」


 謎肉とは、所謂ドロップアイテムである。

 いくら農業に生きるようになった身とはいえ、俺に倒した魔物を解体するなどというスキルは期待しないで欲しい。

 というか、魔物は倒すと光の粒子になってその場から消えてしまうから肉や毛皮はとれない。


 では、なぜ肉が手に入るのかと言うと、その跡にアイテムとして残るからだ。

 その形は、ブロック状であったり、骨付きの漫画肉と呼ばれる形状であったりと。


 種類に関しては、ウサギの魔物を倒せばウサギ肉の仲間だと思うし、猪なら猪、熊なら熊だと思う。

 鑑定でも、そのように出ていたのだし。


 色とか、大きさは、今までに地球上では見かけない動物さん達であったが。

 

「大丈夫に決まっておろう。ドロップアイテムなのじゃから」


 ドロップアイテムだからという根拠が意味不明であったが、これらの肉類は、ダンジョン攻略を泊りがけで行えるようにと食料供給も兼ねて出るそうだ。


「嫌がらせなのか、妙に優しいのか良くわからん魔法だな」


「我に言うな。ダンジョンの成り立ちからして、この肉はマナから構築されておる。栄養満点、種類によってはポーションよりも回復効果もあるのじゃ」


 更に、普通の肉に比べると圧倒的に腐り難いらしい。


「まあ、食う分以外は義信が収納しているので、腐る心配は無いがな」


 収納の魔法で仕舞ってある肉類は、既に数十トンにも及ぶ。

 当然こんなに食えるはずもなく、かと言って売れる場所も無く。

 唯一の救いは、収納している限りは腐らないという点であろうか?


「お祖父ちゃんが、毎日お肉のお裾分けありがとうだって」


 食べきれないので、理沙が切り身にして持ち帰り、善三さんの食事にも使っていたのだ。


『猪か?』


『そう。義信ちゃん、最近罠を仕掛けるようになって』


『害獣駆除か。いや、でもこの肉は美味しいのぉ』


 最近では、美味しいお肉なので心待ちにしているらしい。


「朝起きると、体が軽いんだって」


「回復効果があるからの」


「肉はまだ良いんだよ。他のをどうする?」


 肉は食えば良い。

 だが、ドロップアイテムはまだ他にも沢山ある。

 深い階層に潜れば潜るほど、鉱石と魔石以外のアイテムのドロップ率は上がっていたのだから。


 ポーション以下の薬は、緊急時の予備回復用に備蓄してある。

 

「快癒薬って、病気を治す薬だよな?」


「魔物によっては、疫病を染す物がおるからの」


 次に、ナイフ、弓矢、剣、斧、槍などの武器と。

 鎧・兜・盾などの防具類であり。


「でも、鑑定すると普段使っているフォークの方が攻撃力が高い」


「金属製のフルプレートよりも、着続けている農作業用のツナギとヘルメットの方が防御力が高いなんて……」


「簡単な事じゃ。装備品も、お主達と一緒にレベルアップしているからの」


 どういう仕組みなのかはわからなかったが、一度小型のトカゲに火を噴かれたのに全く熱くなかった事があったのだ。

 空子によると、レベルップで俺と防具の魔法防御力が上がっているらしい。


「農作業用ツナギ+6とか、五刃フォーク+7って、意味がわからないよね」


「その+は、獲得した武器や防具にエンチャットされていた魔力が移転しておるのじゃ」


 レベルアップを続ける使用者から漏れた魔力が、時間をかけて徐々に纏わり付いて強力な武器と防具に成長する。

 更に、獲得した武器と防具に魔力が付与されていると、その魔力が愛用している武器に移動するのだと言う。


「だから、土起こしをした時に洗っても傷一つ無いんだ」


「義信ちゃん、もう一本買いなさいよ……」


「その綺麗な剣や鎧は、魔力を取られた残骸とも言えるの。元から高性能な武具だし、芸術性も高いから売れるとは思うんじゃが……」


 防具はともかく、武器は銃刀法違反になってしまうかもしれない。

 今は、保留する事にある。


「あとは、魔物の毛皮とか牙とか骨とか。何に使うんだろう?」


「仕舞っておけば。あとで、使い道もあるかもしれないし」


 残りは、純粋なお宝の類であった。

 ようやく、三十階を越えた頃から手に入るようになったのだ。


「金製のカップとか、お皿とか。宝石が使われているアクセサリーとかか」


 鑑定を使っても、魔力が付与されていたりとか、特別な効果などはないようだ。


「それは、純粋に換金アイテムじゃからの」


 ダンジョンに潜る冒険者が日常生活を営むため、資金源となる物なのだそうだ。


「この金製品なら、売って金にしても大丈夫か」


「まあ、どこにでもありそうな古い舶来品にしか見えないからの。というわけで、我にデパ地下グルメを!」


「義信ちゃん。空子ちゃんって、あまり服とか持っていないんだよ」


 あまりというか、俺は巫女服姿しか見た事が無いような気がする。

 理沙が服を融通しようにも、身長からして大分違うので兼用は不可能であった。


「じゃあ、明後日の休みは買い物にでも行くか」


 そんなわけで、俺達は久しぶりに買い物に出かける事を決めたのであった。

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