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王太子の婚約者


そうして、12歳の頃。レオニス王太子殿下の婚約者になった。

父の執務室に呼ばれ、そのことを告げられた時、私は言葉を失った。自分の努力が大きく実を結んだことに感無量だった。こみ上げてくるものを抑えながら、涙が滲む瞳を隠すために少し俯いた。私を前に立たせたまま、執務机に座っている父は、自分に感謝しろといった。


「お前くらいの令嬢などいくらもいる。我が公爵家の令嬢だからお前が選ばれたに過ぎない。家門の恥とならぬよう、しっかり努めよ」

「承知いたしました」


私は顔を伏せたまま小さく礼をとり、逃げるように父の執務室を後にした。これ以上、何もききたくなかった。「王太子の婚約者」となっても、父は私を認めない。でも、時が至れば王太子妃、やがては王妃となる。「公爵家の後継ぎ」どころか、「公爵家の当主」よりも立場は上だ。妹だって周辺国の王太子に嫁がない限り、私より格下になる。「後継ぎのスペア」にも「愛娘」にもなれなかった「公爵家の長女」はもうおしまい。いずれ王太子妃、王妃という名の蝶へと羽化していくサナギになったのだ。努力は報われた。その時の私は、そう思っていた。


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