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途上のシャムロック  作者: 納戸
箱庭の黄昏
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四話 血染めの曙光

(保たないか……! くそ、紋陣を変えておけばよかった!)


 ヨクリの引具に搭載されている抗盾の一種、干渉図術を打ち消す”尖槍”は、突破力はあるが耐久力では他の盾に劣る。

 五、六発の”氷錐”を打ち消し、紋陣を”動”で叩き割ったような破砕音——耐久力の限界を知らせる音がヨクリの展開した”盾”から鳴ると、すかさず後方へ叫ぶ。


「アーシス!」


 即応したアーシスは、右の拳で”円盾”を展開、入れ替わるように前へ踊り出る。直後、ヨクリが創り出した光の槍が、先端から瞬く間に瓦解した。


 ヨクリはアーシス越しに敵の動向を見る。


 眼前の術者の列。四人が一様に、目深に外套を羽織る不気味な出で立ち。

 思考する暇もなく再び収束するエーテル光にまずいと思ったのもつかの間、等間隔の並びのあいだから現れたさらなる影は、低い態勢で草むらに潜み機をうかがっていた伏兵。


 ”重ね格子”と呼ばれる、シャニール戦争中に開発された陣形。術を発動する遠射手の時間を稼ぐために合間を縫って飛び出してくるのは近接手である。

 教書のなかの文字でしかない存在だった対人編成。現実の図術戦で隊列を組んだ具者を見たのも、それによる襲撃もヨクリははじめてだった。


 訓練の済んだ近接手三人と、遠射手四人。こちらの手勢は六人。彼我の戦力差の算出はヨクリのなかで一瞬よりもはやく行われた。——このままでは全員殺される。


「引け、引くんだ‼︎ 森へ‼︎」


 ほとんど恐慌状態に陥っていたほかの四人はその言葉をきいたとき、覚醒したように一斉に後方へ駆け出した。理屈ではなく直感による、危機から逃れる本能。水っぽい足音が、悲鳴の代わりのように鳴り渡る。


 一同の前に立つアーシスが”氷錐”を食い止めている内にヨクリ以外の四人は森の奥へと姿を消し、術者たちはそれを見るや否や、よく調練されたよどみのない動きで陣形を崩して左右に散開した。

 術者七人はその場に残るヨクリとアーシスの挙動を注意しながらにじりよる。ちょうど真横で挟む位置まで来ると右手の二人と左手の一人が駆け出し、集落方面へ向かった四人を追うために森へ侵入していった。


(これは……)


 この状況では身動きがとれなかった。タルシンらへの追撃を防ごうとすると、ヨクリとアーシスは最悪全員に囲まれるおそれがあったからだ。


 ヨクリとアーシスは二手に分かれた敵の集団に即応すべく背中合わせに武器を構えた。ヨクリの前方二人は湾刀を携えている。形状はヨクリの携える”刀”に近く、ここまで反りが深い剣が得物ならば、その流派はギレル式とは異なる。


「やべえな」

「……」


 アーシスのつぶやきに沈黙で答えたヨクリ。

 ”対応させられている”ことが、なによりもまずかった。草原に残る四人が取り囲む。


(逃げるにしたって、倍の人数差じゃ厳しい。でも彼らが追いつかれたら……)


 時間を浪費している状況ではなかった。ヨクリは腹をくくり、


「……やるしかない」

「おう」


 短いやり取りののち、ヨクリらは反発するように真逆へ駆け出した。全力で踏み出した一歩目の足場の感覚で、雨後のぬかるみを計算に入れた足運びへ移行する。


 背をアーシスに預け、正面に二人。ヨクリの動きに外套の具者たちは更に左右に別れ、挟み撃ちで迎え撃つ。ヨクリは右手の相手に照準を絞り、速度をあげた。鳴り響いた背後からの金属音が、ヨクリにアーシスが交戦したことを知らせてくる。

 目の前の具者はヨクリが間合いに侵入した瞬間に首筋めがけて剣を振るい、ヨクリが自身の引具を盾に防ぐ。その攻防を皮切りに両者は数合打ち合い、気取られぬようにヨクリはうまく位置を変えてちょうどアーシスの背中を視界にとらえた。だが。


「ヨクリ‼︎」


 目算でおよそ40歩のところ、アーシスは手甲で敵の一人の引具をいなしながら、肩越しにヨクリへ警告の声をあげている。——残りの一人は茶髪の男に目もくれず、ヨクリのほうへ猛進していた。

 相対する一人、背後に回りこんだのを”感知”で確認した一人、そしてアーシスを振り切ってヨクリへ攻撃を仕掛けてくる奥の一人。


 状況がはっきりと変わった瞬間に、刃を合わせていた具者はぱっと後方へ跳躍し、大きく右に移動した。開けた視界に奥の具者の姿と、起動を始めていた紋陣を目視で捉え、ヨクリは直感する。


(来る、”盾”は無理か!)


 電流のように、”抗盾”で迎撃しようとすると接近するもう一人の具者の引具が干渉し、破壊されてしまう可能性を予想する。


 その瞬間ヨクリも紋陣を展開するが、粘つくような感覚に術の起動が遅れる。”護印”されていない、向こう三人の支配領域の影響である。集団戦において、術者が最も警戒しなければならない要素。

 展開の完了は相手が先、ヨクリが後だった。加速した世界で、拍子一つ分ほどの差。更に、手前の一人が再び攻撃態勢を取って詰め寄った。


 同時攻撃が迫る。ヨクリは目を見開き、体を紋陣ではなく、すでに間合いへ侵入していた手前の具者に向けた。


「くっ……おおぉ‼︎」


 気合と共に振り抜いた刀は過たず紋陣を叩き割り、そして、紙一重で近接手の迎撃に間に合った。射出された”旋衝”は奥の”氷錐を相殺する。衝突の瞬間両者は一度エーテルの淡緑色に発光したのち、互いの接触面から硝子のように瓦解する。


 接近してきた具者と互いの引具で鍔迫り合いになったのはほんの僅かのあいだのことで、術を放った具者が追いついたところでヨクリの相手は後方へ跳躍、距離をとった。


 息つく間もなくヨクリを中心に緩やかに左へ円を描くように三人は揺らめいて、そしてヨクリの死角、後方の具者が標的目掛けて駆け出した。前に出した左足を軸に最小限の動きで体の向きを反転させたヨクリだが、その挙動に合わせて死角になった残りの二人も殺到する。


 一つの淀みもない連携。おそらく、三人、というよりはこの部隊の必殺の戦術。


「ヨクリぃぃ‼︎」


 茶髪の男の、二たび名を叫ぶ声が耳を強く打つ。アーシスの声音通り、ヨクリは危機に陥っていた。

 しかしそんな状況を、ヨクリはまるで空を飛ぶ鳥の視点から見るような心持ちで受け止めていた。図術によって加速した世界が、さらに加速する錯覚。

 レミン集落へ向かう道中”長耳”の集団を相手取ったときの、氷のごとく冷え切った冴えが再びヨクリを支配してゆく。

 ちょうどヨクリの方向転換に合わせて仕掛けた具者の剣を振りかぶる直前の手首の角度、呼応する衣服の皺、衣擦れの音。敵の情報が、つぶさにヨクリの頭を埋め尽くす。


(この感じだ)


 ヨクリには予備動作で止まったように見えた。相手の次の剣筋、移動先が、瞳に映っていないのに焼き付けられる。”感知”で把握した視界には映らない二人の動きまでも手に取るように予測できる。


 次の瞬間には、ヨクリはすでに相手の一太刀目、左手からの左薙を下に深く沈み込んで躱し、背後に回りこんでいた。身を返して体を起こし、目線を合わせずに小刻みに一閃。切断の手応えがあった。

 往復するように相手の脇をすり抜けると、二度目の交錯の際に斬り飛ばした敵の手首が握ったままの引具と共に地に落ちる。


 そうして元の位置へ戻っていたヨクリに、間髪入れずに左右二人の具者が同時に襲いかかる。この挟撃を捌ききるのは不可能であると判断した瞬間に脳裏に映像が浮かび上がる。


 燃える炎の中の暗殺者と、塔の上の緋色の女。


(まともに躱せないなら、これしかない)


 体を捻りつつ跳躍し、紋陣を展開。しかし、”ある手順を省き、紋陣の表と裏を逆にした”。


(距離があったとはいえ手心なしのものを、やつは、ミリアは食らっても生きていた。なら)


 蹴り出した力が頂点に達し、そして減速を始めた中空にあるヨクリの体。大地に引っ張られ、待ち構えているのは、白刃二つ。泥の多い沼のなかを進むように、ヨクリの視点からはゆっくりと感じられた。

 亀のように首をすぼめ、ヨクリは自身の背面へ右手いっぱいに刀を伸ばし、それでも届かずに最後は手首の動きだけで紋陣を割った。


 転瞬、壊れた人形が投げ出されたようにヨクリの体は放物線を描いて二人の具者の頭上を通り越し、地に落ちた。強烈な勢いにヨクリの視界は真っ白になり、肺は詰まって呼吸ができない。

 衝撃を殺すために、空いた左手で地面を無我夢中で爪を立てる。そうしてようやく勢いが緩まったところで全身の感覚が元に戻っていく。泥の音と、瞬く間に衣服へ染み込んでいく水の感覚を遠くに感じながらほとんど前宙するように身を起こし、振り返らずに左方向、森の方角へ全速力で駆け出した。


「アーシス‼︎」


 呼びかけると、茶髪の男はすでに相手を打ち倒しヨクリへ駆け寄るところであった。二人は合流し、残りの手勢を相手取るよりも皆を追う相談を無言のうちに交わす。


 疾駆するヨクリらだったが、その最中にもヨクリは見過ごせば死に繋がる違和感を正確に把握していた。背に受ける圧力の少なさとは裏腹の、今にも身を貫きそうな鋭利な殺気。森へ近づくにつれて両者は対照的に増減していく。その差がおよそ最大になった瞬間に、ヨクリは図術を起動、後方を見ずに自身の背面へ展開し、軽やかに跳躍しながら左に一回転しつつ刀で紋陣を叩き割った。


 図術同士が打ち消され、ヨクリらを背後から狙っていた攻撃は届かない。金髪の暗殺者、赤髪の貴族との戦いで用いた”拡散”の効果的な運用をヨクリは完全に掴んでいた。


 地面の様子を表す、水たまりに飛び込むような激しい着地音のあと、なりふり構わず全速力で二人は森林へ入り、なお速度を緩めなかった。視界に枝や倒木が映るたび、反射的に避けながら進んでいく。


「むちゃくちゃしやがるな」

「でも、なんとか凌げた」


 出し抜けにアーシスが言い、ヨクリも返す。


「殺ったか」

「いや、斬り損じた。手強すぎる」


 挟み撃ちを強引に突破したとき、左上腕を深く裂かれ、拳まで血が滴っていた。あの刹那、手心を加えていたらヨクリは斬られていたかもしれない。

 事前の打ち合わせで、のちの影響を考えてもしも戦闘になった際にはなるべく相手を殺すべきではない、というような意見も出たが、実際に打ち合った瞬間にはそんな予防線を張るような思考は消し飛んでいた。


 ——そこでようやく、ヨクリの体は正常に悲鳴をあげた。


 ヨクリは無意識に速度をゆるやかに落とし、途中でアーシスが気づき振り返ったところで倒れこむように地に伏し、吐瀉した。

 幾度かの吐瀉音を、アーシスは呆然と見ていた。そして、嘔吐がやんだところではたと我に返り、ヨクリに駆け寄った。


「……おい! てめえ背中見せろ!」


 うずくまったままのヨクリの返答を待たぬまま、強引に腰の革帯をずり下げて外套ごと上衣をまくりあげ、アーシスは息をのんだ。


 変色した痣が、背中全体に広がっていたからである。


 ヨクリの霞んだ視界に、左手の人差し指から薬指までの爪がほとんど剥がれ落ちて流血しているさまが映り、その負傷にやっと気づいた。

 しばしののち、荒かった息が徐々に整うと、左手でアーシスを制してえずきを振り払い、ヨクリはやおら顔をあげた。


「……大丈夫か」

「……吐いたら楽になった。行こう」


 体のうちの激しい痛みと嫌な冷や汗は止まらなかったが、ヨクリは強がった。どのみち、このままここにとどまっていても殺されるだけだということは茶髪の男にもわかっていた。物言いたげな表情をおさめたアーシスは、小さく頷き、そこで動きを止めた。


 服を整えていたヨクリに、アーシスは顎をしゃくる。その方向には一本の樹木があり、注視すると少し遅れてヨクリもその”うろ”に気がついた。自然にできた傷ではなく、人為的な印。まだ新しい。


「二手にわかれたみてえだな」


 森で別行動をとった場合のいくつかの取り決めのうちの一つ。思考の海に沈んでいる暇はない。


「俺は西に」

「なら、オレは南だ」


 素早く意見をまとめ、再び全速力で駆け出す。





 戦況を、木陰に紛れて遠巻きに観察する集団があった。数は多くない。夜闇に沈む木々を思わせる深緑色の外套に身を包む十数人と、それらを従える存在。


 彫り深く浅黒い肌に、往来ですれ違う人は首を持ち上げるほどの長身。猛禽のように鋭い眼光と、ほとんど色素のない金髪。左に重心を傾け、可笑しそうに眺める。


「自分に術ぶっ放すたぁ、なかなかイかれてやがる」


 その男こそジェラルド・ジェールであった。無骨な胸鎧の下、風にはためく僧衣の裾から、さらに下に着込む鎖帷子が見える。抜き身の刃に革帯を巻きつけただけの粗雑な装いとは裏腹の、美麗な彫金が施された腰の剣を左手で弄びながら、冷静に戦の中心を品定めする。


「あの”姓無し”、強えわ強えな。イストを思い出しちまうぜ」


 どこか楽しげに呟いて、


「……状況から見てあの”姓無し”しかありえねえと思っていたが、ゲルミスを出し抜いたっつーのはあながち眉唾の噂ってわけでもなさそうだ」


 得心したように言葉を終えてから、男は側に控える一人に声をかけた。


「スイ」


 名を呼ばれた者は目深に被る外套で顔を見せないが、僅かに声のほうへ顔を上げた。

 ジェラルドと頭一つほどの身長差があり、それは周囲の配下よりも小柄で、少年か少女のように見受けられる。


「奴とオレの奴隷どもの違いがわかるか」

「……技術の差でありますか」


 声音は高く、その者が歳若い少女であると聞くもの全員に悟らせる。 


「惜しいが、間違いだな」


 ジェラルドは勿体つけるように切って、口角を上げる。


「実のところ、奴らは大差ねえ技術の中でやりあってんだぜ。確かに奴は今の時期ちと見ねえぐらい巧いが、そいつは初動が、切っ先が、術の展開が、ほんの少し早いか遅いか、っつー程度の差でしかねえ」


 続けて、


「埋めようのねえ才能の違いがあんだよ」


 スイはジェラルドのほうを向いたまま黙していた。ジェラルドはそれを見て更に重ねる。


「……殺しの才能だ。奴の剣は相手が”獣”か人かなんてまるで関知しねえ。その鋭さは天性のもんだ。簡単に調練でどうこうなるもんじゃねえのよ」


 スイはわずかに思案するそぶりをみせたあと、


「残酷、ということですか」


 ジェラルドは返答に目を細めて否定する。


「ちげえな。そいつが敵をバラしたあとで心をさいなむかどうかは、別の話だ」


 そこでジェラルドは弄んでいた左手で柄を握りしめる。会話の終わりを敏感に感じ取ったスイはわずかに抜いていた気を引き締めるかのように姿勢を正した。


「やつの真贋見定めてこい。もし殺れりゃ”札”出してやる。死ぬなよ」


 しゃくった顎の先は森である。奥へ消えた黒髪の青年を指しているのは明白だった。ジェラルドはそいつの真贋を見極めることを命令した。


「御意に」


 恭しく発せられた声を置き去りに、スイはたちまち森中へ消える。

 そして、ジェラルドは森とは反対、どこまでも続く平野の方角へ振り返った。


「来たか」


 始めは、地平線に煌めく小さな光であった。次第にそれは近づいてゆき、その鮮明な輪郭をあらわにする。


 激しい雨に打たれたあとの瑞々しい若草、ずしりと空を覆う雲、湿り気を帯びた冷たい風。その自然の中に浮かび上がってくるのは強大な異物感である。極めて人工的な物体。直線と精密な弧で姿を成し、青銀一色の外観。周辺には幾人かを伴い、かすかに聞こえてくるのは足音と、断続的に響いてくる紙を裂いたような、耳障りで強烈な音。


 それらは真っ直ぐ向かってきて、しばしののちにジェラルドのもとへ到着する。


 大型の図術装置だった。馬車一台分ほどの長さ。大きさの異なる円盤を積み重ねたような中心に、四隅に円柱が取り付けられている。とりわけ目を引くのは頂上の長大な筒である。

 車輪にあたるものはなく、周囲に控える具者のもと、真下に展開している紋陣でもってその装置はわずかに浮遊していた。


 装置周辺の具者の中から一人、ジェラルドへ声をかけるものがいた。その者だけが外套を羽織っておらず、粗野な風体であった。骨ばった輪郭に、無精髭。三十代半ば頃。簡素な革鎧に、右手には魔獣の血のこびりついた戦斧。

 装置と、それを操作する具者の護衛である。


「旦那、首尾はどうでした?」


 所作の端々にみられる慇懃さを、ジェラルドは咎めることなくその男に答える。


「誤算はあったが、概ね予定通りだ」

「ってーと?」

「逃げられたんだよ。全員まとめてぶっ殺せてりゃぁこいつを使うこともなかったんだがな」


 無機質で巨大な図術装置を横目で見て、


「ま、それはそれで構わねえさ」


 肩をすくめて言うジェラルドに、男は眉を吊り上げて感情をあらわにする。


「あのクソ姓無しですかい……」


 低く唸る男にジェラルドは興味深そうに声をあげる。


「ほう?」

「気にいらねぇ……」

「あまり入れ込みすぎるなよ」

「……わかってやす」


 その様子に釘を刺したジェラルドに返答する男。


「てめえは久しぶりの拾い物だからな。期待してるぜ、レナール」

「へい」


 レナールと呼ばれた男は短く返答して一歩下がった。


「さてと」


 そう呟くと、待機していた具者たちが、一斉に引具を構える。装置を囲むように紋陣が次々と現れ、耳障りな駆動音がより苛烈になった。そして、雲間から差し込む朝日よりも強いエーテルの光が、装置の下の陣から発生する。

 ジェラルドは再び森のほうへ顔を向けて、


「それじゃやるとするか」


 始まりを告げる様々な音が、平野に響き渡った。

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